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テクノ新譜試聴メモ:2018-11

YouTube Musicが始まって、レーベル公式音源の動画が気兼ねなく貼れるようになりました。他のジャンルではよくわかりませんが、テクノに限っては充実したラインナップのようで、出たばかりの新譜も検索するとけっこう出てくる。権利関係がクリアなのは引用する側としてもありがたい!

11月の新譜チェックです。

SHXCXCHCXSH - FFUFFUFU [Rösten 6]

今月はもうこの1曲に尽きる。ヤバイ! 変態覆面デュオSHXCXCHCXSHの2年ぶりのフルアルバムが、自身のレーベルRöstenから出た。

Having concentrated in recent years on music for more experimental scenes, SHXCXCHCXSH wanted to create music for the club, but not with the usual 4/4 approach. ''the main focus being our relationship with the dancers' minds and how we do our best to fuck with them'.

上記のリリースコメントによると、実験よりもフロア向けにフォーカスしながらも4つ打ちからの脱却を目指したとのことで、どの曲も全体的に付点のリズムを多用した、つんのめるような奇妙なグルーヴに基づいている。なんだけど、アルバムを通して聴くと目論見が成功していると思える曲はそんなに多くはなくて、なかでも上の"FFUFFUFU"だけがずば抜けて良い。

独特のダーティーで退廃的な雰囲気と、互いに呼応するエコーのようなフレーズの反復のなかで、予想以上にダイナミックに変化していくサウンドスケープにハマる。この質感というか手触りというか、やっぱ非凡なものがあるなあと感じる。そしてこの曲が本領を発揮するのは、おそらくDJで4つ打ちの曲とミックスしたときですね。一見クセが強いように感じるこれ以外のアルバム収録曲も、DJのなかで聴くと意外に光るのかもしれない。

それにしても、今回もタイトルやジャケットを含めたアートディレクションが秀逸。かっこいいわー。

Mike Parker - Metamora [Float 32]

オールタイムフェイバリットのひとり、Mike Parkerの何か月ぶりかの新曲がオランダのFloatから。お馴染みのトリッピーで有機的に変化するミニマル。いつものマイクパーカー。ず~っと聴けてしまう。

Insolate - Lovers (Truncate Remix v1) [Coincidence 100]

ベルギーのCoincidence Recordsの100番目のリリースに、リミキサーとしてロウ・テクノの雄Truncateが登場。普段のスタイルとは少し違う、ぎゅっと詰まった感じのドライブしているハードミニマルで使いやすそう。16分で刻む暗いベースラインを軸にじわじわとビルドアップしていくさまが気持ちいい。あともう、シンプルに「ッチッ・ッチッ」っていう裏打ちハイハットのゲートタイムが伸びたり縮んだりするやつ…大好きなんですよね。

Keikari - Logica [Binary Cells 5]

暗めの硬いテクノとしてはUnam Zetineb、Remco Beekwilder、Marla Singer、MTDなど人選が渋いフランスの新興レーベルBinary Cellsから、フランス人DJのKeikariがデビュー。初期Downwardsを思わせる歪んだパーカッションのシーケンスを基調に、きびきびと小気味よく展開するツールトラック。裏で鳴っているノイジーなアンビエンスも瞑想的でいい。Keikariはまだ少ないけど他にも個人的に気になるトラックがいくつかあって、今後が楽しみなアーティストのひとり。

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「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。

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