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テクノ新譜試聴メモ:2022-10

ウクライナの電子音楽家、Heinariが今年4月から行っている配信ライブ"Live from a Bomb Shelter in Ukraine"の音源がBandcampで出ています。このライブについてはわたしも視聴して、当マガジンの記事のなかで書きました(テクノ新譜試聴メモ:2022-03|R-9|note)。実際にリヴィウの防空壕のなかにシンセサイザーをセットアップして、YouTubeでネット中継している。

Heinariはバロック時代のポリフォニーを参考に、モジュラーシンセを使ったシーケンサーによる対位法の自動生成(generative counterpoint)を独自に研究しているアーティスト。売上はドネーションに充てられるとのこと。

10月はJoachim Spiethのアルバム"Terrain"も出ました。

2020年の"Tides"、2021年の"Ousia"に続くノンビートのアルバムで、このシリーズ、個人的にはアンビエントというよりもシンセサイザーや電子音響による弦楽協奏曲のようなつもりで聴いています。流し聞きするのではなく、じっくり腰を据えてアルバムとして楽しみたいタイプの作品。しばらく忙しくて聴けなかったから、これから通して聴くのが楽しみです。

以下、10月の新譜から。

Umek - Benozal (Regal 22 Rework) [Involve]

なんとUmekの黄金期2001年の作品、Primateから出たConsumer Recreation EPのB1のRegalによるリワークが出た。オリジナルのリマスターも入っていて隙がない。こうして聴くと原曲もかなりサイケトランス調でレイヴィーだし、この時代のハードテクノとしても異色のノリだったんだなと思う(Gatexとかも同じ年の作品)。同じ盤に収録されたD.O.M. "Acid War"も同じく94年のクラシックだそうで、明らかに時代がひと回りふた回りしているのを感じる。

I Am Bam - Wo Das Licht Endet [Arts]

I Am BamのArtsからの新譜。いつもながらの重心の低いビートに、ここではエモーショナルなパッドが重ねられて、タイトル("Where the light ends")もあいまって劇的に表現されている。ほかの曲も全部良くて、やっぱこの人のテクノのトータル的な質感、手触りというか世界観が好きだなと思う。

Esteban Miranda - Introspective Reaction [Hivemind]

今年の7月にもピックアップしたレーベルHivemindからコロンビアのEsteban Mirandaの作品で、有機的に変調を繰り返すヒプノティックなミニマル。既にあるサウンドの再生産といえばそうなんだけど、単純にツールトラック(として作られているはず)なのでいくらあっても困らないのも事実。

NØRBAK - Codigo de Conduta EP [PoleGroup]

うわー、最近のPoleGroupのジャケめちゃくちゃかっこいいんだね。ポルトガルのNørbakによる現在進行形のハードミニマル。A2の無慈悲な縦ノリ、16分のハイハットの刻みかたがどうしてもツボ。

Hemissi - Arms Open [Arkham Audio]

先月も取り上げたHemissiの新譜。音数少ないものの、ブリープ音の応答を中心としたキレのあるグルーヴで気持ちいい。

Mike Parker - Tripartite [Token]

いつものMike Parker節の深海グルーヴ。

今月取り上げたトラックはSpotifyのプレイリストにまとめてあります。

「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。

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