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ジブリ、CT、年の瀬(日記)

あっという間に年末。おもしろかったコンテンツ、買ってよかったもの、創作してきたものなどなど、この一年について振り返りたいトピックもいくつかあるけれど、まずは今月あった出来事の記録から。

ジブリ美術館へ行ってきた

12月17日、学生時代の先輩で音楽家のヨダさんにお誘いいただいて、初めて三鷹の森ジブリ美術館へ行ってきました。いずれ行きたいなと思っていながら、ずっと機会がなかった。ご存じのとおり完全事前予約制なのですが、とはいえ普通にローソンチケットなので、その気になればいつでも予約できるのだ。しかも大人1,000円と存外に安い。

美術館は井の頭公園の外れのようなところにあって、吉祥寺駅から徒歩でも行ける。外壁がカラフルに塗り分けられた、曲線多めの形容しがたいポップな建物なのでした。

クリスマス仕様のエントランス

企画展として、最新作の「君たちはどう生きるか」展の第一期展示が11月から始まっていて、来年の5月まで続く予定のとのこと。奇しくも、この日の前日のNHK番組「プロフェッショナル」でちょうど宮崎駿特集がオンエアされたばかりで、もちろんわたしも観て、相当に昂ったテンションで展示を見ることとなりました。本当に偶然。

ちなみにその「プロフェッショナル」は、特に凝った編集で、宮崎さんから高畑勲さんへのいわゆるクソデカ感情に過剰にフォーカスした切り取りかたになっており、ファンの間でも賛否分かれたようでした。わたしはどちらかというと内容に肯定的なほうで、そもそも人物ドキュメンタリーにフラットな視点なんてあり得ないのだし、あの距離感で長期間密着した人の視点にはそれなりの説得力を感じました。

にしても、それが完全に映画の「答え合わせ」として提示された点には驚きがありましたね。本人が言ってるんだもんな…みたいな有無を言わせなさがある。

美術館の内部は撮影禁止なので外観だけ

さて、中はどうなっているかというと、設計や展示を通して宮崎駿さんの一貫した思想みたいなものを強く感じました。それはまずひとつに、どれもこれもが子供のために作られているということ。狭い螺旋階段や謎の通路といった「遊び」のある迷路のような構造、あらゆる展示物が子供の目線の高さにあり、子供だけが楽しめるネコバスルームがあり、推薦児童図書で埋め尽くされた図書室がある。これは配布されるパンフに描かれた宮崎さん直筆の設計図そのもので、これ自体が妥協のない職人的な映画作りに通じるものがあった。

もちろん、ジブリ映画を観て育った大人の視点から見て楽しい展示もたくさんある。アニメーションがどのようにして作られるのかを、その歴史的経緯から懇切丁寧に解説してくれる部屋があり、あるいは、特にセル画全盛期のアニメ制作がいかなる職人たちの分業によるものかがよく分かる部屋がある。手描きの絵コンテや原画が、壁一面にまるで無秩序にびっしり貼り出されていて、いちいち足を止めていたらいくらでも見ていられるようなもの。

絵コンテルームでは、「君たち~」のAパートから最終Eパートまでの絵コンテすべてが閲覧できる状態になっていました。予約制であることもあって、一般的な美術館の人気の企画展のときのような、追い立てられるような混みかたもない。後ろの人を気にせずじっくり見ることができる。

それにしても、絵が上手すぎる! 80歳そこそこでこれだけ描くんだから、これはもう超人としか言えませんね。「プロフェッショナル」の中で、原画修正に悩んで手が止まってしまった宮崎さんが「描けなくなったんじゃなくて元から描けなかったような気がしてきた」というようなことを仰っていて、このレベルの人でもこの悩みがあるのか…と思ったものですが、直筆画を見ると改めてちょっと我々とは次元の違うお話。

「君たち~」の企画展エリアも見ごたえがありました。各種設定画から、企画段階のスケッチ、印象的だったあれこれのカットなど。まあ、これに関してはかなりの物量を網羅した公式設定本に、既にあらかた載っている内容のようではあるのですが、それにしても手描きの筆致よ。「プロフェッショナル」においても苦悩の象徴として描かれたEパートの大叔父の最終稿に至るまでのデザイン過程は、まさに苦悩そのものとして表れていました。

あるエリアの屋上では、このようにして「ラピュタ」の実物大のロボット兵が佇んでいて、ここでだけ記念撮影ができる。

また、館内のミニシアターでは、限定公開のオリジナル短編アニメ映画を、一定期間の交代制で上映しています。この日の作品は「パン種とタマゴ姫」(2010年)。わたしはもちろん初見でしたが、もう冒頭からヌルッヌル動く婆さんが割りたての卵をがっつがつ食べてるのを見て嬉しくなってしまいました。初めて観るのに、完全に知ってる味のやつ。

ジブリ映画、最新作こそ観たけれど、大人になってからはほとんどの作品を追っていない。ポニョもハウルも風立ちぬも観ていない。そんな自分でもトトロやラピュタの影響は大きく、20代のころとある面接でイラスト作品を見せたときに、一発でジブリっぽさを看破された程度には遺伝子に組み込まれている。

わたしの考えでは、ジブリ作品は本質的に属人的要素が強すぎて、その意味で宮崎さんを継ぐ人間はなく、宮崎駿後にジブリ作品は永遠に生まれないのだろうけれども、しかし多くの創作者のなにか決定的な美意識に、ミームとなって受け継がれる。芸術、ひいては情報遺伝子の継承ってそのような形でいいのだろうと思う。

おかげさまでとても充実した鑑賞体験で、別の企画展やシアター上映作品を見るためにも、また気軽に何度も行きたいと思える美術館でした。

生まれて初めてCTを撮った

12月初旬、どうも右わき腹に普段感じたことのない痛みを感じて、かかりつけの消化器内科へ相談に行きました。秋口くらいから時々現れていた、肋骨のすぐ下あたりの鈍い痛みで、就寝時などにも態勢を変えたときに痛いな、となる。超音波検査もやって、念のためCTも撮ってみますかということで、別の日に予約を取って別の機関でCTを受けることになった。MRIは頭部と膝で2回ほどやったけれど、CTは初めて。

検査にあたり、点滴で血管に造影剤を入れるというので、この薬にリスクがあることを承諾する旨のサインをさせられる。バンジージャンプとかスカイダイビングのときに一筆書くやつね。いざ説明されても、今更断るわけにもいかないし、そんなこと言われてもな…という感じです。

検査着に着替えて部屋に通される。MRIの巨大マシーンとは幾分違う小ぶりなもので、寝台が円形の機械の間を火の輪くぐりのようにして行ったり来たりする仕組み。そして点滴で生理食塩水を注入され、次いで撮影の直前になってなぜか人肌に温めた造影剤が入ってくるのですが、この体験がすごかった。血管内に直接、熱を持った液体が入ってくる感覚!「えっ熱ッ!?」みたいに思う間もなく腕から下腹部、そして全身へと回っていく実感があり、毒ってこうやって回っていくんだな…というリアルな怖さがあった。

CT撮影は、それこそMRIのような大きい音もなく、機械のアナウンスのままに息を吸ったり止めたりしているうちに、何往復かして終わりました。その後すぐ点滴を抜き、造影剤の排出を促すために水を飲まされて検査は終了。

検査の結果、おかげさまで何も異常はなく、結局何だろうねということに。その後数日して痛みもなくなり、今となってはまあ、季節の変わり目の不調だったのかな…みたいな感じです。運動不足だし、年齢もそこそこだし、ストレスもないとは言えないし、思い当たる節がありすぎる。手間も検査費用もかかったけれど、健康診断は年に一度の特定健診のみで、人間ドックのCTなどは受けたことがなかったため、結果的に良い機会だったなと思います。

CT撮影データはCD-Rでもらうことができた。開いてみるとDICOM形式の連番ファイルが入っており、付属のビューワーでもPhotoshopでも開くことができました。いわゆる輪切りのやつと、縦の断面図のやつ。自分の断面図、なんだか感慨深いものです。胃カメラとかもそうだったけど、何でも知っているはずの自分のことなのに初めて見るなあ…というような謎の感慨。

9年ぶりに音楽作品を発表した

既に別の記事で書いたのですが、ちまちま作っていた曲作りの成果の一部を久しぶりにまとめて発表することができました。

あれこれ研究して手ごたえが得られたから、よし来年から頑張ろうと思っていたところ、いやよく考えたら別にいま時間あるし年内にできるじゃん、となって、作ってみたらできた。もう本当に、近ごろ何をするにも腰が重くなってしまって、今やらなくてもいいか…で一生やらないみたいなことが多いの良くないなと思って。これに関してはすぐ動けて良かったです。

他のことも同じで、来年から頑張ろうとか来月からやるぞみたいに思っていることはけっこうあるのだけど、別に何でターン制バトルみたいにカレンダーに従って行動開始を年初なり月初まで待たなくてはいけないんだということがある。自分はありがち。というか年齢を重ねて特にそうなりがち。

2023年もあと数日だけど、こんな時期だからこそ、敢えて前のめりにいろいろ手をつけ始めたい、そんな年の瀬です。

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