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【11】主人公に、原稿上で「追加取材」

前回の「仲本ウガンダ本」執筆プロセスはこちら(↓)。

原稿をベースに、ディテールを再取材

ダメ出しの悪魔(詳しくはこちら)に足をとられつつも、ざっくり直して大きな粗をつぶしたり、全体のトーンや構成がだいたい定まってきたところで、本書の主人公である仲本千津さんに原稿を共有することにしました。

読者が知らず知らずのうちに読み進められるような臨場感を出すためには、できるだけビビッドな情景や会話を再現したい。

とはいえ、書く前の取材で人生の全エピソードの詳細を聞けるわけではありませんから、ある程度書いて、書くべきエピソードが絞り込めてきたこの段階で「取材の続き」をしようと考えたのです。

「仲本さんはこの場面で何といいましたか? 要旨ではなくて実際に口にした通りに教えてください」とか「人生の転機となった東日本大震災のとき、どんなところにいて、何が視界に入って、どういう行動をとったかできるだけ細かく教えてください」といったディテールを尋ねます。

原稿を見せながらその場で語っていただいたり、後で原稿に書き足していただいたりしているうちに、各エピソードに少しずつ厚みが加わってきました。うん、よしよし。

原稿ゆるゆるなのにご本人に原稿を渡せた理由

実は、ふつうの段取りだと、なんならこのまま本にしてもいいぐらいまで完成度を上げてから「明らかな間違い」に焦点を絞って確認していただくものなんです。

ゆるゆる状態で関係者と共有すると、訂正必須な箇所の指摘と、「こう書かれていたらいいのにな」という要望が混然一体となっていくらでも出てきて、この本として目指すところが見えなくなりがちなので。

でもわたしはまだちょっとゆるゆるなところが残っている状態で、仲本さんにお見せすることにしました。仲本さんの"客観力"(「こうあってほしい」という気持ちを口にするだけじゃなくて、一段のぼって俯瞰して、相手とゴールを共有する力)をいたく信頼していたからです。

10日後、仲本さんがフィードバックを書き込んで戻してくれた原稿を見ると――果たしてわたしの予想通り、ファクトや時系列はしっかりと確認したうえで、そのほかは「こういう風に書かれていないと困ります」と相手の選択肢を限定する指摘ではなく、「こんな材料もあるよ」と、相手の選択肢を広げる指摘がなされています。

仲本さんからしたら、自分の半生が書かれているわけだから、「こう書かれていてほしい」を言い出したらいくらでもあるはず。でも、そこを「相手本意」で考えられるのが仲本さんの器の大きさなんだよなあ…見習いたい。

フィードバックをもとに、さらなる推敲プロセスに入ります。次回はちょっと具体的に、わたしなりの推敲のやり方をシェアします。お楽しみに~


(おまけ)
原稿を人に渡すのは緊張するもの(にも書きましたけど)。しつけのなっていない自分の子を誰かに預けるような心もとない気持ちになります。

今回も不安でしたが、仲本さんはお渡しした原稿をその日のうちに読み終え、すぐさま「ときに泣いたり笑ったりしながら、あっという間に読み終えました!」とメッセージをくれました。そして翌日、ご自身のインスタライブでも絶賛してくれました。よかった……

「海外旅行に出かけた不肖のうちの子、ステイ先に温かく受け入れてもらえたみたい!」と胸をなでおろした親のような気分。

(【11】終わり)


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