「枯れ葉」
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の新作映画。
枯れ葉はいつの間にか庭の芝生の上や、コンクリートの道路の上に落ちているものだけど、あるゆったりとした朝に「カサッ」という微かな音がしたので庭の木を見上げたら、ちょうど枯れ葉が地面に向かって落下する瞬間を目にしたことがあります。
映画「枯れ葉」はそんな一瞬を丁寧に切り取った作品だと感じました。
フィンランドの街中のだだっ広いスーパーマーケットで働く女性。
慎ましやかなアパートに帰宅後、レンジに今日の夕食であろう惣菜のトレーを入れる。
窓辺の古いラジオをつけると、ウクライナとロシアの戦況を伝えるニュースが流れてくる。
この場面で、観客はこの物語が過去の物語ではなく、現在進行形の今の物語であることがわかります。
カウリスマキ監督が、映画に「永遠」のものとして、ニュースを意図的に記録したと知ったのは、観賞後にいそいそと購入したパンフレットを読んでからでした。
(パンフレットの装丁も中身も「枯れ葉」の世界観をイメージされたもので、見応え読み応えがあります。)
物語は淡々と、進んでいき、そこに余白を感じられるから、観客はいろいろな想像をしながら楽しんだり、次はどうなるのかなと静かにわくわくすることができます。
そして、映画を彩るバンド演奏からカラオケまで、音楽も素敵です。
映画の背景と衣装や小道具とのコントラストも楽しめます。
観終わったあと、世界がほんの少しだけきれいに見える、ささやかな日常を大事にしたいと思えるそんな映画でした。
そして、時間制約があるなかで、アウトプットばかりを仕事で求められ、脳がパンクしそうになっていた私に、大事な「余白」を思い出させてくれた映画でした。
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