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2/10/24(土) 初一 新年快樂!

 今日は農曆新年こと旧正月。新年快樂!

 大晦日の夜は、台湾では家族みんな集まって豪華なご飯を食べる年夜飯。日本のおせちみたいにいろいろメニューがあるのだが、漢民族の風習なのでタイヤルの我々には詳しいことがよくわからない。

 よくわからないけど、好きなやつはある。超巨大からし菜を、切らずに、長く裂いたたけのこと一緒に煮たやつ。超巨大からし菜がどれだけ巨大かというと、日本で冬になると出てくるどデカい白菜1球、あれくらいか、あれより大きいくらいある。これを食べるのが好きなんだけど、なんという名前の食べものなのかわからない上に、漢人といってもどの系統の漢人の食べものなのかもわからない。閩南人、客家人、他にも四季タイヤルでテヘルと呼ぶ外省人系、それぞれ食文化が異なる。たぶん、うちの家族の誰かがどこか外で食べてきて、おいしかったから私の母にも伝えたのだろう。竹はタイヤルにとっても馴染みのある植物で、食材としても親しみあるし。

除夕に母とベランダで拜拜。
地基主、おじいちゃんおばあちゃん、父、の順番で、紙のお金を燃やす。
食料品店のおばさんが、ちゃんと袋を分けて順番を書いてくれた。

 0時になって、爆竹や花火の音が聞こえる。なんとなく起きていたかったので、年内最後のゴミ捨てから帰ってきて、遅くまでピアノを練習していると、11時を過ぎる頃から「新年快樂!」と、家族友人かメッセージが届き始める。そろそろみんな、年夜飯の家族の集まりにちょっとずつ疲れてきた頃なのかな。今年、私たちは母と二人と愛之助だけの静かな過年だ。こんな年が子どもの頃にも一度だけあったというのを、爆竹の音を聞いて思い出した。今は台北では昔みたいに爆竹はやらないよ、とみんな言うけど、確かに昔ほどではないが、やっぱりやっている。爆竹の音はうれしい。すぐにベランダの窓を開けに行った。愛之助はすでに窓枠ギリギリにスタンバっていて、窓を開けるとさっそく飛び出し、ベランダの柵の上に飛び乗って下をのぞきこむ。うちは7階で、こんな危なっかしいところで首をせり出してるなんて、猫が今にも落っこちそうだ。あわてて引っ剥がそうとするけど、愛之助も太い前足でぎゅっと柵をつかんで離さず、ますます首を伸ばして下をのぞきこむ。まるで戦争みたいだ。連続する爆発音、曇りだからか、破裂音と一緒に空がチカチカと光るのだけが見える。向かいのマンションの屋上やベランダにも人が出ていて、「新年快樂!」と言い合っている。

 爆竹にも環境と騒音対策がとられるようになって、最近は環保炮ことエコ爆竹が主流になり、煙や光、音、有害物質が少ないものになった。子どもの頃、こうやって爆竹の音がすると外に出て、このベランダから、愛之助みたいに、首を出して下の道をのぞいた。あの頃はうちの前の通りの端から端まで、通りの長さと同じ長さの長い爆竹を派手派手しく鳴らした。爆竹に火をつける男の人が二人いて、かっこいい大人に見えた。

 いつも旧正月は母と台北に住む親戚たちと一緒に四季に帰っていたが、あの一度だけ、母とこの家で二人だけで過年した時も、私はちょうどこのへんにいた。今ちょうどピアノが置いてある、このリビングの隅っこあたりで、春節に着ましょうねと母が買ってくれた、ツルツルの赤地に金の糸で梅の花の刺繍が入った旗袍を着て、白いタイツを履いて、髪は下ろして上の方だけ結んだところに赤いポンポンをつけてもらって、こんな隅っこでひとりで何して遊んでいたんだっけ。何かが待ち遠しかった。今の私の体と、あの小さな私の体は、同じひとつの体だろうか。あの時からほとんど全ての細胞が生まれ変わって、それでも同じ私。

 初一と呼ばれる農曆新年一月一日。今日の午前中のうちに、今度は果物やお菓子を、地基主、おじいちゃんおばあちゃん、死んだ父に、拜拜する。


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