星を見上げるとき

星空はたぶん、一度として同じものはないと思う。

サハラ砂漠でのある夜。ガイドのOmarが月明かりの下に連れ出してくれた。月が眩しいほどに輝くんだ、ということを実感したのは、このときだった。一面が光って静かな砂漠でもちっとも怖くなかった。

砂の丘をのぼり、てっぺんに寝っ転がって星空を見上げながら、Omarはこんな話をした;

「昔、おじいちゃんが明け方にひとの形をした星が見えたら、願いが叶うと教えてくれたんだ。だから、早起きするんだよ。でも、なかなか見えない。毎日毎日。

でもそれはさ、おじいちゃんのつくり話だったんだよ!朝早くから仕事があたくさんある彼の手伝いをさせようとしたからなんだ。慣れると無意識に起きるだろう?あたまがいいんだな」

このときの星空はただ一度きりのもので、もう二度と来ない。
だからこそなんだか儚くきれいなんだと思う。


eri

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