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【読書日記74】『SFのSは、ステキのS』

多分、Twitterで見かけたのだと思うのですが、なんとなく表紙のサイバー感に惹かれて、思わずポチりしたのがコチラ。

■『SFのSは、ステキのS』
■池澤春奈
■早川書房
■2016年5月(もう6年以上前!)
■1500円+tax

先日更新した記事で、「文芸やエンタメジャンルが手薄」という読書癖を持つことを告白しました。実は、そのなかでもいちばん手薄なのが、今回タイトルにもなっている【SF】なんです。

活字中毒沼に自ら沈み始めた頃、あれこれ手あたり次第に読んでいました。が、なぜかSFだけは手を出さず。だから、本書に出てくるSFタイトルはほぼ未読、というか、分からず(滝汗)。「なのに、なぜこの本を読もうと思った?」という疑問が大量のはてなマークと共に浮かぶのですが。

結論から言いますと、この本、読んで大正解!
めちゃくちゃおもしろかったです。

■好きだと言って何が悪い

本書は、人気声優・池澤春菜さんの日常に溢れ散らかるSF愛をつづったエッセイ集。全てSFマガジンに連載されていたものです。

帯で、御父上である池澤夏樹さんが
「こんな風に育てたつもりはないが、SF界の彼方にワープして去った娘の後ろ姿を電波望遠鏡で見る今日このごろ。」と評されています。これほど的確に本書を言い表すことばもないだろうと。

・ ・ ・

先にも書いたように、私自身はSFにはほぼ馴染まないまま過ごしていますので、出てくる書名や著者名にはまったく反応できません。でも、そこから迸り出てくる「SFがめちゃくちゃ好きなんです‼」という感情は、すっごくすっごく理解できるんです。

好きが高じて、あらぬ方向に飛んでいってしまったり。好きとかそういう問題でもなく、春菜さんご自身がぶっ飛んでて、ものっそい明後日な方面へロケットダッシュをぶちかましていたり。時々、立ち止まって途方に暮れたり。

春菜さんもですし、私もなんですが。

好きなモノ、というか、全身全霊で推すモノ(人)には、全力以上の気合で、お金も時間も気持ちも体力もぶっこみます。端から見ると、それは不器用にしか見えない生き方です。

「その幾分かでも、人生の他の部分に振り分けてたら、きっと違う人生だったと思うよ」

そんなこと、わざわざ言われなくたって、自分がいちばんよく分かっています。でもね。その「好き」があるから、生きてこられた部分って絶対にあるんです。それに何より、その「好き」が「今ここにいる私」の成分の大部分を占めてるし、むしろ、その「好き」が私の証だったりもするんです。

「好きだと言って何が悪い」

これ、私の信条なんですが。
一度きりの人生で、せっかく出合った「好きなモノ(人)」なんだから、胸を張って、正々堂々不意を打ちつつ、「好きだ」と言い切りたい。ううん。言い切る。そんな自分を誇ってる。

そんな生き方もOKだよね、って、この本からほんのりした勇気と元気をもらえるのでした。

■ヲタク道を究める

この本を読んでいると、「SF界の彼方にワープして去った」春菜さんを其処此処に感じます(笑)端的に言い表せば、「ヲタク道を究めようとひた走ってる」となりましょうか。でも、その方向性が面白くて。

春菜さんのなかに【SF】という一点がポチりとあるんです。で、そこからビッグバンもびっくりな爆速で、興味関心と行動が爆散して、ひっちゃかめっちゃかに拡散していくんです。

「お~い」って呼んでみると、彼方から、めっちゃ元気に「いぇ~い」って返事は返って来るけど、姿は見えずみたいなイメージ。しかも、それ、身に覚えがあり過ぎて…つらい…(笑)

でもね。

「好き」ってそうやって世界をにょんにょん広げてくれるんですよね。で、広がった先でも「好き」を見つけて。その元になった「好き」は「大好き」になって。私の世界がHAPPY&PEACEで溢れてくるんです。

そこにもう一つ大切なのは、「リスペクト」かなと思います。

春菜さんの文章を読んでいると、SFについてはもちろん、そこに関わるモノや人に対して、全方向的に「リスペクト」のあることを強く感じるんです。

でね。

好きなモノ(人)、推しへの「リスペクト」があると、うまく言えませんが、十全な「好き」で過ごせる気がするんです。「好き」っていうだけでニコニコできるし、卑屈さとか劣等感さえも糧にできるというか。なんか、そんな感じ。うん。

■まとめ

『SFのSは、ステキのS』は、著者・池澤春菜さんのSFへの愛とリスペクトが爆速で炸裂するエッセイ集です。「好き」に満ち溢れた世界は、きらきらとステキで。自分の「好き」とか「推し」への愛の温度も、つられて少し上がっちゃいます。

SF大好きな人はもちろん、それに馴染みが薄い方にとっても、問題なく楽しい本です。人の「好き」を語ることばに触れるのって、すっごく楽しくて幸せ。そんな時間を、この本と一緒にぜひ。

って、このリンクを探していたら、2巻が出てるのを発見!今度買います!そして、また感想書きます!

んじゃ、また。

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