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えるえつマガジン

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えるえつりょうが書いたコラムとエッセイの一覧です。ジャンルは、哲学・心理学・社会学・創作技能(noteの使い方、音楽理論)などです。
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#ナラトロジー

二千の顔を持つ竜、と賢者【物語元型論】

二千の顔を持つ竜、と賢者【物語元型論】

このコラムでは、物語において典型的な敵と味方のタイプについて解説します。英雄は、形を変えて様々な作品に登場します。それは英雄と対峙する竜、彼を手助けする賢者も同様です。

竜とは?英雄譚における「敵」の代表は「竜」です。竜は、自然のマイナス面(災害や飢饉など)をキャラクター化した存在で、特に川などの「水」に関連が深いです。英雄は、自然をコントロールして掌握する必要があり、それを「竜との戦い」という

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豊穣神話のまとめと行為者モデル【物語元型論】

豊穣神話のまとめと行為者モデル【物語元型論】

ここまで3回に渡って、英雄譚の片割れである豊穣神話についての解説をしてきました。なので、この辺りで一旦まとめをしておきましょう。まとめをするにあたり、説明にちょうどいいモデルを見つけたので、まずはそこから説明していきます。

行為者モデルとは行為者モデルとは物語の役割を6つに分けて、それぞれを関連づけたものです。典型的な英雄譚、つまり「村を旅立った英雄が竜を倒してお姫様と結婚する」物語なら、このモ

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豊穣物語、聖婚と王座を巡る決闘【物語元型論】

豊穣物語、聖婚と王座を巡る決闘【物語元型論】

前回は、英雄の誕生について解説しました。英雄は文明の創始者です。彼の誕生により、時代は狩猟採集社会から農耕牧畜社会へと移行します。今回は、その農耕牧畜社会における豊穣神話を解説します。季節の循環を表わすこの神話には、2つの重要なイベントがあるのです。

脇役となった女神と聖婚
英雄の誕生によって、豊穣神話の主役は地母神ではなくなりました。それどころか地母神すらいなくなりました。なぜなら、彼女は分か

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文明開化と英雄の誕生【物語元型論】

文明開化と英雄の誕生【物語元型論】

前回は最初期の豊饒神話について説明しました。これは狩猟採集社会における季節の循環を表わす物語です。
今回は一旦、豊饒神話からわき道に逸れて、英雄の誕生について解説します。

タブー破りと呪的逃走
永遠の少年は地母神に依存しきっています。それ対して、英雄は地母神から自立し、離れようとする存在です。

しかし、この自立は女神に対する挑戦や反逆、つまりタブー破りです。禁忌を侵す者に、地母は恐ろしい面を向

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豊饒神話と永遠の少年【物語元型論】

豊饒神話と永遠の少年【物語元型論】

英雄譚は、成長物語と豊穣神話から成り立っています。前回は、豊穣神話の主役である地母神(グレートマザー)について解説しました。
今回は、新たな登場人物を加え、最古の豊穣神話について解説していきます。

大人になれない少年神豊饒神話は、季節の変化と循環についての物語です。 主役である地母神は、大地の化身で、自然を象徴するキャラクターであることは、前回説明した通りです。

この物語には彼女の他にもう

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最強最古のツンデレ・グレートマザー【物語元型論】

最強最古のツンデレ・グレートマザー【物語元型論】

このコラムでは、物語元型論と題して古典的な英雄譚がどのような系譜から成り立っていったかについて解説します。

英雄譚とは英雄譚とは、サクセスストーリーの王道です。たとえば「村から旅に出た主人公が、賢者の手助けを得て、洞窟に潜む悪い竜を退治し、囚われていたお姫さまを救い、彼女と結婚しました」という物語です。これは神話の時代から脈々と受け継がれた物語の典型なのです。

英雄譚は2つの核となる物語から成

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物語元型論・もくじ

物語元型論・もくじ

このコラム群では、アニメやマンガの考察、物語の創作活動のために、ストーリーに登場する「元型」について解説します。

物語論(ナラトロジー)の名著「千の顔を持つ英雄」には元ネタがあり、それがユング心理学の「元型(アーキタイプ)」です。ユング心理学の創始者カール・グスタフ・ユングは、古今東西の神話に共通した部分を見出し、これを元型と呼びました。元型とは、有体にいうと「お決まりのキャラクターや役割」のこ

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