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【お茶の科学】水出しお茶は衛生的に安全なのか?

みなさんはお茶を作るとき、お湯出し派でしょうか、それとも水出し派でしょうか?

私はお湯出し派なんですが、水出し派の方も多いかと思います。

水出しお茶は渋み成分であるタンニンの抽出が少なく、逆にうま味成分であるアミノ酸が抽出されやすいという特徴があります。そのため水出しでは、甘くておいしいお茶を作ることも可能です。

一方で、水出しで作ると煮沸していないから危ないんじゃないか?という考えがあります。

そうはいっても、自分で菌の繁殖実験をするわけにもいきません。ということで、今回は論文から水出しのお茶の安全性について紹介していこうと思います。

茶葉による違い

まず、研究グループは水出しお茶における茶葉の違いと菌の発生数について調べました。詳細は参考文献を読んでもらえばと思いますが、結論だけを紹介すると、どうやら茶葉によっても菌の繁殖が大きく異なる様子がわかりました。

緑茶、烏龍茶、紅茶のどの種類の茶葉からも細菌が発生しましたが、麦茶からは菌が見つかりませんでした。

これは麦の焙煎過程で200℃以上の処理を行うため、細菌が死滅したと考えられています。

一方、最も多くの菌が見つかったのは紅茶にフルーツや花びらを加えたフレーバーティーでした。これは、果実の皮や花びらの表面についていた菌が繁殖したと考えられています。

現実世界において無菌というのは実現が難しい、というか普段私たちが生活する環境にはあちこちに常在菌が存在します。それが、長時間隔離された空間で繁殖してしまうと問題です。

水出しお茶を作る際には、茶葉の種類にも気を付けた方が良いのかもしれませんね。

水出しお茶とお湯だしお茶

さて、一番気になるのは水出しとお湯出しの違いです。この比較結果は非常に顕著に出ています。

水出しお茶を20℃及び35℃の環境で長時間保存した結果、6時間過ぎたあたりから急激に細菌数が増えました。

参考文献より引用

つまり、夏場に水出しお茶を夜のうちに仕込んで、冷蔵庫に入れるのを忘れて居ると菌が順調に繁殖してしまいます。そして、翌日1日かけてその水出しお茶を飲んでいると、おそらく体調が悪くなるでしょう。

もちろん、茶葉自体に付着している最初の菌にもよるので、一概に危険だとは言えませんが、安心を取るなら、水出しお茶の常温放置はやめた方が良さそうですね。

逆にお湯出しお茶の場合は茶葉によらず、20℃で保存しても、35℃で保存しても24時間後まで菌の繁殖は見られませんでした。

最後に

普段、私はお湯出しでお茶を作って、夏場は必ず冷蔵庫で保存、24時間で廃棄していましたが、実はそこまで厳重に管理しなくても良かったんだなと思いました。

科学を知ると、自分の行いが理論的な安全策なのか、たんなる安心なのかが明確になります。とはいえ、初発菌の数によっても状況は大きく変わるので、私は安心を取っていこうと思います。

ただ、日本の製造業は科学をないがしろにして安心を取りに行きがちです。きちんとコストとリスクを考えて適切な安全を設計していく必要があるんじゃないかなと思いますね。

参考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha/2016/122/2016_21/_pdf/-char/ja


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