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日本語学校新入生入国時の事務の流れ


日本語学校の卒業式が遠い昔のように、4月に入ってあっという間に8日。桜も気づけば葉桜が見えてきました。例年、こちらの計画通りには入国してくれず、いましばらくバタバタとする事務局です。

留学生が日本に入国してからまずしなければいけない手続き

  • 寮への案内、電気・ガス・水道等の開栓

  • 在留カード記載氏名と、学生名簿の照合

  • 写真撮影(for学生証、出席確認リスト)

  • 市役所・区役所で転入手続き(在留カードの住所裏書き)

  • 郵便局への入居届け(転居届け様式の流用)

  • ゆうちょ銀行の口座開設

  • 携帯電話契約

  • 自転車購入

ざっくり書き出してもゲップが出そうです。まあ、例年のことなので一つ一つやるしかないのですが、去年よりもさらに効率的にやりたいと思うのが私のサガ。業務をしっかりと定義していけば、改善策が見えてくるので、システムへの追加機能実装と合わせながら吟味していきましょう。

寮への案内、電気・ガス・水道等の開栓

基本的に私の勤務校では全員寮に入ります。といっても、大きなビルを持っているわけではないので、いくつかの物件に分散して住んでもらいます。1部屋最大3名のルームシェアです。中国からの学生は最初からいい部屋に住みたいってんで、うちのグループ宅建業で仲介しますんで、入国時は重要事項説明と契約事務も含めて渋滞となります。サポートスタッフがフル稼働で電気・ガス・水道の使用開始手続きをします。布団がないと初日寝られないので、これも準備して待ちます。

在留カード記載氏名と、学生名簿の照合

新入生が初めて学校に来た時にやることは、在留カードとパスポートのコピーです。当然といえば当然なのですが、入国早々パスポートを失くしてしまった学生がいて、たまたまコピーをまだ取っていなかったために再発行手続きに時間がかかりまくったという苦い経験があります。また、願書と紹介業者からの情報で申請をしていたにもかかわらず、在留カードを実際に見てみると姓名の順がこちらの想定と違った、なんてこともあります。こちらも入管も気づかなかったというやつです。これからの手続きはなにがなんでも在留カードの表記通りの氏名でおこなわなければならないので、入学後であってもチェックが重要です。在留カードは両面、パスポートはメインのページ、査証のページ、シールのページ、外観と4パターン。しかし、在留カードは住所を裏書きしたら再度スキャンを取ります。二度手間ですが、いち早くチェックしたいので、この二度手間はやむなきと受け入れています。

写真撮影

学生証、先生方が顔と名前を一致させるためのカードやリストをつくるために写真を撮ります。新入生が国で撮った写真は十中八九質が悪いです。入国時のビザ申請書に貼付した写真のイメージでいざ迎え入れてみると、全く印象が違ったりします。学生証をこの写真で作ると、たいてい「センセイ、フォトチェンジ、フォトチェンジ」となって、超二度手間。押し切ればいいのですが、写真変えてほしいって言った学生はスリランカで、お坊さんの格好をした写真だったので、普通の服のにしてほしいという事情がありました。そういうことを想定して、入国時は全員写真を撮ることにしています。撮った写真は600px×800pxにして保存。JLPTのWeb出願は480px以上を求められます。国によってはグリーンカードなど、500px×500px以上の正方形を求められるので、なるだけ.jpgだけでなく.psdも保存しておいて、加工の余地を残します。.psdはフォトショップですから、すこしだけお肌も滑らかに、顔も明るくします。このサービスは我ながら評判がいいんです。

市役所・区役所で転入手続き等

市役所に行って転入手続きをします。パスポートと在留カードが必須ですが、あらかじめ「ふりがな」を決めておかなければなりません。中国人の場合、例えば「王」さんは「おう」さんですが、在留カード表記はWANGなので、「ワン」としてくれと市役所が言います。市役所でのふりがな設定は後に大した影響は出ないのですが、ゆうちょ銀行の口座名は重要なので、どの国からの学生であっても慎重にふりがな名を確認します。ネパールのThapaさんが、英語のサンキュー的に「サパさん?」と聞いた先生がいました。ところがどっこい、hの音は脱落する。サパじゃなくてタパ、Manishaはマニシャでなくてマニサ、みたいなことが数ヶ月後に発覚します。学籍番号を主キーとして管理していますが、それでもニックネームが変わると出席簿などに影響するので、最初が肝心ということになります。
転入手続きのためには、「住民異動届」を提出します。これをいちいち書かせることはできません。システムにレイアウトを作っていますので、名前と住所が確定したら、印刷して市役所に持たせます。この様式は市役所からダウンロードできますが、国民健康保険加入手続きで求められる「収入の申告書」は、ダウンロードできません。これも100枚近くになると大変な作業になるのですが、当地の市役所は親切でして、事前にまとまった部数を郵送してくれます。こちらは手書きですが先に書く分、窓口の時間は削減されます。

郵便局への「入居届」をポストに

「転居届」という方が一般的な呼称です。留学生は海外からの入国、転入なので、郵便局でもらった転居届の旧住所欄にバツをして、「4月◯日入国」とします。昔はハガキ一枚でOKでしたが、最近は身分証明書のコピーの貼付が必要になりました。ここで在留カードの両面のコピーを貼付しますが、一番最初にとったコピーではまだ裏書きが無い状態なので、市役所から帰ったら再度スキャンをとっておかなければなりません。コピーでなくスキャンというのがミソですが、実践テクニック編はまた次回になるでしょう。

ゆうちょ銀行口座開設

さあ、一番の難関がこれです。メガバンク、都市銀行は入国したての留学生の銀行口座はつくってくれません。すくなくとも半年は経過しないとダメです。ある銀行に聞くと「他行は存じませんが、当行ではそうです。」なんて、キリっと言われるので、あの銀行さんはこう言いましたが、おたくはどうですか?と、近所の全ての銀行に電話して確認したものです。結局、留学生に口座を作ってくれるのはゆうちょ銀行のみ。ゆうちょ銀行は郵便局に事務を委託していて、コスト削減のためにとにかく手間を省こうとしているらしいです。「手続きアプリで郵便局に行かなくても口座開設申請ができます。」とは言うものの、スマホを契約するために口座がいるっていう順序逆転の上に、日本語であれこれ入力しないといけない手間を考えると、本来ゆうちょ窓口でやっていただくのが筋の手間を日本語学校の人件費につけ回しているだけのような気がして腹立たしいわけです。Xでぼやきまくったら、ゆうちょ・郵便局で働く方々から様々なアドバイスをいただいてお互いの立場をわかりあったわけですが、金融機関の上の方の考えることは現実に即していないのであきれるばかりです。留学生も生活のために週28時間以内の規制でアルバイトをします。それをあてにした地域企業の社長さん方が列をなして待っている。ゆうちょ銀行が作ってくれなくなったら、地域の経済も停滞してしまいますよねって話です。

携帯電話の契約

これは仲良くしている代理店の業者さんに学校まで来ていただきます。iPhoneでもAndoroidでもOK。最初はいいのですが、寮の住所に届くはずの請求書が届かなくて、料金を払わず利用停止、解約なんてことがしょっちゅう起こります。割賦販売の支払いが遅れると金融クレジットに影響するから気をつけてくれって指導しているのですが、郵便物をちゃんと受け取らない、見ないということが大きく影響してきます。だからこそ、「入居届」が重要になるんですね。

自転車購入

私の勤務校の周辺は、都市部にもかかわらず工場が多い地域です。日本語がまだ上手じゃないうちは工場勤務、次第にホテルの清掃、そしてコンビニというのが王道ですね。時給も1000円代から、夜勤の1400円代まで伸びが出てきます。外国人がアルバイトしているが当たり前の世の中になりましたが、誰でも簡単に働けるわけではくて、それぞれ苦労しながら一歩ずつステップアップしているようですね。アルバイト先へはもちろん自転車。電車賃など使いたくないというのが入国直後の本音です。1時間くらいは余裕だと。アメリカの青春映画では男は何の車に乗っているかが全て、みたいな描写がありますが、留学生にとっては自転車がステータス。手持ちのお金でいきなり3万円くらいのいい自転車かって、最初の月末にお腹が空いて死にそうなんて学生を何人も見ました。そして事故や盗難が多いです。防犯登録や、保険加入は必須。自転車一つとっても、奥が深いです。

各論は次回以降のお楽しみ

縷縷述べてまいりましたが、これが最近の私がやっている事務の一端です。次回以降、このような流れの各段階において、どのような業務効率化のための工夫をしているかについて整理していきたいと思います。日本語学校の事務を担当している先生方と苦労を共感したり、うちはこうやっているというような自慢話をシェアをしていければいいですね。乱筆で恐れ入りますが、今回はここまででです。

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