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短編小説【ゲーム理論】

本日も短編小説ストック分UP

3113年。量子コンピューターと進化型AIの発想によって科学的大発見が起こった。​
この発見によってこれまで解明できなかったとても多くのことが明らかになった。​
そして世の中は大混乱に陥った。当時の発見を素人でもわかりやすくオンラインにまとめたものがあるのでそこから抜粋しよう。​

『すでに明らかにされたように、そして驚くべきことにこの世界の全てはゲームだった。神という高次の存在がプログラミングして作ったゲーム世界だ』​
『人々を驚愕させた発見はだいたいこんな感じだと思う』​​

・私たちがふと背中に誰かの気配、見られているという感覚を持つとき。それはゲームプレーヤーである神が見ているときだ​
・同じような理由で神は天(上)にいると人類の共通認識があるのは、実際にゲームプレーヤーが鳥瞰視点でゲームをしているからだ​
・私たちの脳は何かをしようと意識する0.5秒前に「すでに行動に移っている」・・・つまり意識よりも早く体が動いているという謎は、ゲームプレーヤーの操作の方が早いからだ​
・私たちは自分で何かを決めて動いているように思っているが、実際には毎日のほとんどを無意識で行動している。これがゲームプログラミングだ​
・脳科学も新しく明らかにされた。脳が複雑な構造をしているのは、人間の体を動かしたり理解するためではない。プレーヤーの操作を実行するためだった​

自分たちのことだけではなく、この世界のしくみもわかってきた。​

・宇宙科学では宇宙の94%を占めるダークマターとダークエネルギーの存在が謎とされてきた。しかし今では宇宙はゲームプログラミングの外のことで特に設定はない​
・この宇宙に別の生命体はあるのか?ということも明らかにされた。正確には生命体ではなく別のゲームがあるかだが、別のゲームはいくらでもある​
・人類がなぜずっと戦争をしてきたのか。その謎も解けた。神の間では争うゲームが人気なのだ。新しく発売すればやはり売れる​
・歴史とは。人気ゲームの記録だ​
・上の「次元」から下の次元はよく見えるが、下から上は見えないというのは、まさにゲームプレーヤー(神)とゲーム内キャラクター(人)の関係を表している​
・奇跡とは主人公設定のイベントだ​
・パラレルワールドとは同じゲームをする別のプレイヤーのことだ。理論上パラレルワールドの数は売れたゲーム本数だと決まっている​

神のこと​

・人間がゲームを作り出すのは神の真似事だ​
・文化や風俗、時代が違っても人間が神や霊的な存在をイメージするのはそのように組み込まれているからだ​
・一神教とはあるゲームのゲームプログラマーを崇拝することであり、多神教とは複数のゲームを楽しむことだ​
・天啓恩寵とは、チート能力のことだ。そういうプログラミング設定をしている​
・転生ストーリーはあるゲームの登場人物が、別のゲームに登場することだ​
・少し難しいことだが「堕天」というのは、人間には理解不可能な神の技術によって、ゲームプレーヤーである神がゲームの登場人物に生まれ変わることだ。一度堕天すると元の世界には戻れない​

3114年以降、誰にとっても人生とは気楽なものになった。​
ただしこの気楽さに絶望する者や自暴自棄になる者も少なくなかった。​
ある意味で人間は必要以上に頑張ることをやめた。だが人間はまた頑張るようになるだろう。なぜなら人間の意図しないところで頑張るような設定が次々と生まれてくるからだ。​
でなければゲームは面白くない。次の面白いゲームを神は開発し続けるのだ。​
人間社会は発展しても(神はその方が楽しめる)人間個々人がいつまでも愚かなのは、その方がプログラミングが楽でもあり、ゲームの進行が簡単だからだ。​
神の技術は人間に比べると凄まじいらしく、量子コンピューターとAIの演算処理でも解明できない。このペースで解明し続けるなら少なくとも3000万年はかかるらしい。​

「ブッダの手のひらの上」とは真実を最もよく表している。​
私たちはこれからもゲームの善き登場人物として天寿を全うしようと思う。​
言い忘れていたが、死とは登場人物の設定として役割を終えるということだ。私たちは未来のことを知ることはできないが、未来はあらかじめ決まっているのだ。


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