3113年。量子コンピューターと進化型AIの発想によって科学的大発見が起こった。
この発見によってこれまで解明できなかったとても多くのことが明らかになった。
そして世の中は大混乱に陥った。当時の発見を素人でもわかりやすくオンラインにまとめたものがあるのでそこから抜粋しよう。
『すでに明らかにされたように、そして驚くべきことにこの世界の全てはゲームだった。神という高次の存在がプログラミングして作ったゲーム世界だ』
『人々を驚愕させた発見はだいたいこんな感じだと思う』
自分たちのことだけではなく、この世界のしくみもわかってきた。
神のこと
3114年以降、誰にとっても人生とは気楽なものになった。
ただしこの気楽さに絶望する者や自暴自棄になる者も少なくなかった。
ある意味で人間は必要以上に頑張ることをやめた。だが人間はまた頑張るようになるだろう。なぜなら人間の意図しないところで頑張るような設定が次々と生まれてくるからだ。
でなければゲームは面白くない。次の面白いゲームを神は開発し続けるのだ。
人間社会は発展しても(神はその方が楽しめる)人間個々人がいつまでも愚かなのは、その方がプログラミングが楽でもあり、ゲームの進行が簡単だからだ。
神の技術は人間に比べると凄まじいらしく、量子コンピューターとAIの演算処理でも解明できない。このペースで解明し続けるなら少なくとも3000万年はかかるらしい。
「ブッダの手のひらの上」とは真実を最もよく表している。
私たちはこれからもゲームの善き登場人物として天寿を全うしようと思う。
言い忘れていたが、死とは登場人物の設定として役割を終えるということだ。私たちは未来のことを知ることはできないが、未来はあらかじめ決まっているのだ。