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旅とアート:ヴァンスのロザリオ礼拝堂2  修道院からの眺めと、遺言の金魚

ショヴォー修道士が、「礼拝堂の外観を撮影するなら、とっておきの場所がありますよ」と提案してくださったのが、礼拝堂の隣にある修道院の塔。修道院の中に入れていただけるとは思っていなかったので、いいの?マジで?と少し遠慮がちな態度をとると(本当は行けるところならどこにでも行きたいわけですが)、「マジマジ、行こうよ大丈夫」と軽い感じで案内してくださり、ワクワクしながら最上階まで階段を昇りました。塔の窓から見た礼拝堂の姿が、上と下の写真です。2種類の青と白の瓦を組み合わせた屋根や、壁の《聖母子像》がよく見えます。

修道院の塔から見た礼拝堂。Photo by Yuji ONO

さすがに修道院内を撮影することは憚られたので1枚も写真がないのですが、ちょうど昼食前の時間帯だったこともあってふわーっと煮炊きの匂いが漂い、どちらかというと、生活のあるふつうのおうちという感じ。ここで、パンデミック前は7名、取材時は3名の修道女のかたがたが暮らしているとのことでした。お話をしてくださったのは、修道院長のシスター・ベルナデット。

シスター・ベルナデット。Photo by Yuji ONO

さまざまな質問にお答えいただいたあと、最後にどうしても聞きたかったことをお伺いしました。内容は、日本での事前取材で耳にしたマティスの遺言について。

「”礼拝堂の池で必ず金魚を飼うこと”というマティスの遺言は本当にあったのですか? そして今も池で金魚を飼っているのですか?」

シスター・ベルナデットは「ええ、ありましたよ。今も金魚はいると思うけど……鳥が来て食べちゃうのよー」と苦笑しながら答えてくれました。

金魚といえば、さまざまな作品で繰り返し描かれているマティス作品の重要なモチーフ。頭に浮かぶのは「独自:マティス遺言の金魚発見」という新聞的な見出し。ここはひとつ、スクープ写真撮っちゃってください!とフォトグラファーさんにお願いしましたが、鳥よけのために厳重に金網が張ってあり、水が濁っていたため、金魚がいるかどうかが確認できなかったのでした。残念。

金魚がいるかどうか定かではない庭の池。Photo by Yuji ONO

それにしても、この池は礼拝堂のデザインにフィットしないなーと思ってショヴォー修道士に伺うと、この池は礼拝堂が建設されるよりも前からあったものだとのことでした。ロザリオ礼拝堂、まだまだ続きます。次回はやっと中に入ります。

「マティス 自由なフォルム」 @国立新美術館 2/14〜5/27
行く前、行った後にぜひ1冊どうぞ。ミュージアムショップでも販売しています!
『マティスを旅する』(世界文化社) 写真/小野祐次 文/安藤菜穂子


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