窖蔵銭で歴史を学び直し!『中国の埋められた銭貨』
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(1)旅先での出会い
旅先で、思いがけない出会いが待っていたことはないだろうか。
長野県・善光寺の門前町を散策していた時、変わった形の時計を見かけた。よく見ると、昭和初期に活躍した丸善のタイムカードレコーダーだった。
人事労務で働く私にとって、タイムカードとレコーダーは仕事仲間。
その大先輩に会えるなんて、嬉しかった。
在宅勤務に対応できないなどの理由から、昨今では邪険にされがちなタイムカードも、昭和の人事にとっては勤怠管理を楽にする大発明であっただろう。誰かの発明に感謝することもなく使っていたことに気づき、反省した。
(2)中国で発見!「寛永通寶」
『中国の埋められた銭貨』も、旅先での出会いから始まる。
筆者の三宅先生は、中国・江蘇省の揚州を旅行中、たまたま立ち寄った骨董品屋で「寛永通寳(かんえいつうほう)」を見つける。
寛永通寶は、江戸時代に鋳造された日本の銭貨だ。それがなんと、隣の店でも、また隣の店でも売られていた。仕入れ先はわからなかったものの、値段からして中国では珍しい古銭ではないようだった。
揚州での発見から数か月後、この奇妙な考えは確信に変わる。1500kmほど離れた内蒙古(モンゴル)自治区の鄂爾多斯(オルドス)博物館で、数十枚の「寛永通寶」の展示に遭遇したのだ。
(3)なぜ?中国で「永楽通寶」が見あたらない理由
三宅先生はさらに、揚州の骨董品屋で明時代の古銭が見あたらなかったことに注目。中国で永楽通寶が出土した事例は1例しか見つからず、当時ほとんど流通していなかったことがわかった。日本では徴税の基準となるほど流通していたにもかかわらず、中国で流通しなかったのはなぜか。
(4)窖蔵銭が教えてくれる銭貨の歴史
その謎を解くため、三宅先生は中国各地の窖蔵銭(こうぞうせん)の事例を集め、分析していく。その成果をまとめたのがこの本だ。
(5)感想
私は日本史も世界史も苦手だった。歴史に触れる機会は大河ドラマくらいで、考古学は未知の世界だ。
購入したものの、「理解できるかな…」と心配しながら読み始めた。
ところが、前述の引用ですっかり心を掴まれ、あっという間に読んでしまった。
途中、知識不足なところもあったけど、最後まで楽しく読めた。
読み終わって拍手喝采。考古学ってすごい。研究者ってすごい。
私はすっかり歴史が好きになっていた。
この本は、考古学の専門書だ。けれど、一般人にも考古学のおもしろさを教えてくれる本だ。
高校生の頃にこの本に出会っていたら、きっと歴史の授業が好きになっていただろう。
10年以上前に出版された本なので、今では変わったところもあるだろう。
それでも、考古学の世界を知りたい人、歴史の授業を好きになりたい人にぜひおすすめしたい。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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