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#129 -雨降りの夕方に無性に聞きたくなるNick Drakeの音楽

Nick Drakeという英国出身のアーティストをご存じでしょうか?

活動期間は短かったものの、彼の作り出した作品の数々は音楽史の中にしっかりと刻み込まれています。

ジャンルに分けるとするならおそらくフォークになるんだろうけど、
彼の音楽は無ジャンル。いや、Nick Drakeがジャンルそのものだ。と言っても過言でないくらいに独特の世界感があります。

ギターの演奏技術・高度なピッキング奏法なども達者なようですが、ボクはどちらかと言えば彼の詩に惹かれて彼の音楽にのめり込んでいった。

歌詞

というよりは

に近いものが多く、歌を聞いた後も、歌の詩が胸の奥に残り、

あれ?これはそういうことだったのか?

フト、それを確かめるためにもう一度聞き直したりすることもあった。

ネット上でも彼のビデオ・インタビューなどを発見することはできない。デビュー当時は無名に近いほどで、お世辞にも「音楽で成功した人間」と言えるミュージシャンではないことは確か。

60年代70年代のロックシーンの全盛期の中、大衆受けすることの少ないフォークの道を歩んだNick。彼の作り出す音楽のクオリティの高さや詩的な面は彼の死後数年たってから徐々に世界に知られるようになってきた。もしかするとNickのやっていたことを理解できる人がその時代にはいなかっただけなのかもしれない。

生前は評価されず、死後に評価されたアーティストは多い。画家などにもたくさん例はある。ソーシャルメディアなども存在しなかった時代はメインストリームに軌上しなければ国外はおろか、国内にすら広がることはなかった。

そんな低迷したキャリアはNickを苦しめた。もともと繊細で内気な性格のNickは今でいう所のHSPなのかもしれない。

彼の音楽はできれば原語の英語で聞いて欲しい。

訳で大まかな意図は理解できるのだけど、
歌詞の韻を踏んだ詩的な要素、
単語の持つ独特な音がつくりだすリズム、
などは日本語に訳す時に失われてしまう。

Lost in translation とは正にこのこと。

1. Day is done

Norah Jonesがカバーしているこの曲はNick Drakeを知らない人でも聞いたことあるかもしれません。

お腹から声を出し、高音ノートをヒットさせる歌い方とは真逆で、静かに話しかけるように謳うのがNick Drakeのスタイル。これが癖になったら中毒的なくらいに聴き入ってしまいます。

When the party's through
Seems so very sad for you
Didn't do the things you meant to do
Now there's no time to start anew
Now the party's through

が特に好きなところ。

2. Saturday Sun

とても温かい気持ちにしてくれる曲です。

ブルース/ジャズ/バラードなこの曲は彼のデビューアルバム、Five leaves leftからの作品。

day is doneも同アルバムに収録されていて、このアルバムは今では彼の傑作集とも評価されているくらいいい曲が多いです。


3. Time of no reply

またまた好きな歌詞を抜粋

The trees on the hill had nothing to say
They would keep their dreams till another day
So they stood and thought and wondered why
For this was the time of no reply

Time of no reply。これをどう訳す?

詩的な内容のものって直訳にすべきなのか、多少の意訳は含めるべきなのか悩みどころ。

直訳すれば、「返事のない時間」となると思うのですが、
意味合いとしては、「独り言」「自身に問いかける」というような要素が強い気がします。または「こういうことは誰かからの返答を求めるものでもない」という考え方もあるかもしれません。

またTimeというのは短い一日の中での時間。というよりも、
ひとつの時期、期間としても捉えることができると思います。

うーん、やっぱり奥が深い。


4.Riverman

まるで童話・民族民話のストーリーのような内容の歌詞。

歌詞もすごく興味深いので、気になる人はググってみてください。

すごいいい曲とは思うんですが、まぁ、これは大衆受けはしないだろーなとも理解できる曲です。


5.Northern Sky

Nick Drakeの中でも一番好きなうちの曲です。

悲しみや孤独を歌った歌が多い中、この曲はすごく純粋にキレイで聞くだけで元気になれます。

いぜんの記事で書いたToots & Maytalsの音楽とはまた違った元気をもらえます。

ココロの中から抑えられない感情が出てきてそれを具現化したのがこの歌。

そんな言葉がピッタリなこの曲。

やはりアウトプットって無理やりするものではなく、自然とでてくるものなのでしょうね。。



どうでした?こういった音楽をあまり聞かない人にとってはとっつきにくかもしれませんが、彼の音楽は一度クセになると抜けられなくなります。


彼が自ら命を絶つまでのあまりにも短い期間の活動にも拘わらず、現在では世界に多くのファンをもつNick Drake。 ある一定の成功を収められなかったこと自体が彼を死へと追い詰めた原因のひとつであることを考えると、今の彼のカルト的な人気はなんとも言えない気持ちになります。


もしあの時代に成功できていたら・・・



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