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楽しみなお葬式

こんにちは。Natsuです。
近頃は紙の日記にばかり文章を書きつけていてnoteはご無沙汰でした。

今日は、最近読んだ本と、それに触発されて考えた「楽しみなお葬式」の話をします。

最近読んだ本というのはこちら。

小川糸の「ツバキ文具店」です。
文房具が大好きだし、存在はずーっと知っていたけど、なんとなく未読だった1冊。

夏あたりから仕事関連の本を読むことが多く(趣味と仕事が近いところにあるから余計なのですが)、ちょっと疲れたので全然関係ない、でもわたしをがっかりさせない本が読みたい!ということで選びました。
小川糸の作品はエッセイ中心に小説もよく読んでおります。「誰かを好き」な気持ちは主軸に置かれど、それがいわゆるロマンティックなアレソレとは直結しないところが好きです。

作品の中で、主人公のポッポちゃんにはお店の仕事をきっかけにたくさんのお友達ができます。年齢も仕事もバラバラな、一緒に七福神参りをしたりお花見をしたりするような楽しいお友達。

特に、ポッポちゃんのお隣に住んでいるファビュラスなマダム、「バーバラ婦人」は一番の仲良しといって良いでしょう。
昔の少女漫画のように窓から「おはよう」を交わし、一緒に季節の移ろいを愛でながらおしゃべりしたりお茶したりするのです。

流れていく時の中で、バーバラ婦人もだんだん老いていきます。そんな婦人の姿を見て、ポッポちゃんも「この人は自分より先に死んじゃうのかな」なんてことをぼんやりと考えるようになる。

本の話はここまでで、ここからはわたしの話。

わたしにも年の離れた(という必要も別にないのだけれど)お友達がいます。
向こうのほうが年齢が上だからって「かわいがってもらっている」なんて表現したら恥ずかしいくらい、わたしはわたしなりの方法でお友達のことをかわいがっているつもり、そんな関係です。

今は遠くに住んでいるので簡単には会えませんが、何かちょっとあるとすぐメッセージを取り交わし、キャッキャしたり、自分が手一杯の時はスルーしたり、それをなんとなく察しあったりしています。

ツバキ文具店のポッポちゃんとバーバラ婦人の関係を自分とお友達たちの関係になぞらえてとても好ましく思ったし、「年上ってことは自分より先に死ぬ可能性が高いのか」という気づきにも共感しました。

読み終わってすぐは、「そうかー、あの人も、あの人も、わたしより先に死んじゃって、なかよし3人組のなかでわたしだけ何十年も一人なのかな…」と寂しい気持ちになりました。
その状況は、そんなにすぐは来ないだろうけど、先取りして孤独を味わってしまいました。

幼い頃によく見たような、お悔やみの席を案内する二つ折りのカード(ユリの花の絵つき)が家に届いて、いつになくフォーマルな感じで旦那さんが喪主として名前を綴られたりするのかしら…と、お通夜やお葬式まで想像してしまう始末。

そんなことを考えてたら、
楽しくなってきてしまいました。

(わたしはお葬式がスキなのです。)

ただのリクルートスーツじゃないシックな喪服を用意して、北海道だろうが山形だろうがバチバチっとキメて参列しよう。
香典袋には、いつも手紙の宛名を書くときとは別の、書道の修行の成果を出した字で名前を書く。弔事用の筆ペンじゃなく、涙で滲む薄墨をすって小筆を浸そう。

棺の中にいる友達の、親族やほかの友達たちは、わたしを見てどう思うだろう、なんて想像するだけでニヤニヤしちゃう。
「お子さんの友達かな?」「東京に住んでる親戚かしら?」「きっと教え子じゃない?」
その度にわたしは心の中で「ざんねん、ただの超仲良い友達でした〜」とほくそ笑むのであります。

人生何があるかわからないから、むしろわたしが先に友達に見送られたりするのかもしれないけど、その場合はきっと件の友達を家族が葬式に呼んでくれるはず。こうやって「この人の葬式にわたしは絶対呼ばれる」と確信できる間柄が既に美味しい。

わたしが友達の葬儀に参列するのは20年後だろうか、それとも30年後だろうか。
その時わたしはどこにいて何をしてるんだろう。

「楽しそうでよかったねえ」

と呆れるように目を細められるくらいのことをしていたいな。

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