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警察官の息子(前編)

父親は警察官、母親は専業主婦の家庭に生また自分は、警察官の息子として育ちました。警察官といわれて、皆さんが想像するイメージは、殺人事件を捜査するカッコいい刑事さん、それとも、交番で通学路を歩く子供たちを見守る町のおまわりさんでしょうか。自分の父親は、駐在所のおまわりさんでした。

駐在所が身近でない人に向けてちょっと説明すると、駐在所というのは、いわゆる、交番とは別物です。一般に各地域には、大きな警察署がありますが、それを本店だとすれば、交番は支店のようなものです。交番には、ご自宅(寮や官舎も含む)から通勤してくる警察官が出勤して、交代で日々のお仕事にあたるわけです。では、駐在所はどうかといえば、警察官(とその家族が)駐在所に住んでいるというスタイルでした。最寄りの警察署が遠く、交番を設置しても、そこに通う警察官の方の負担が大きいような地域(つまり概ね田舎)では、駐在所を設置して、交番+警察官家族の住居を兼ねるという駐在所は、昔は珍しくなかったと記憶しています。

その地域に住んでいる訳ですから、必然、ローカルコミュニティに強く関わることになります。警察官である父親は「駐在さん」、母親は「駐在の奥さん」等と呼ばれていました。田舎では、お医者さんや、行政の長等が、いわゆる名士として、持ち上げられることが多かったようですが、いざとなったときに自分たちを守ってくれる「駐在さん」も、ある種の尊敬の念をもって扱われることもあったようで、父親は、好んで駐在所勤務を勤めていたようです。

駐在所勤務に限らず、一般人の有しない捜査や逮捕等の権限をもつ警察官ですから、癒着などのあらぬ疑いをもたれないよう、数年に一度のサイクルで転勤(今でいえばジョブローテーション)があるのが一般的でした。父は、率先して駐在所勤務を希望したようで、我が家はドサまわりのサーカスのように、駐在所から駐在所に転勤を繰り返していました。ちなみに、一般的に警察官は地方公務員ですから、転勤の範囲は所属する県警がある都道府県の中に限られます。

同じ都道府県内とは言え、当時子供だった自分は、家庭の事情で不定期に転勤(転校)を強いられる生活だったわけです。毎年、年の瀬あたりになると「転勤きまったから」(多分、この時点では内示)と、さりげなく母親が告げてくると、「あぁ、またか、、、」と酷く落ち込んだのも一度ではありませんでした。

ちょっと長くなったので続きます。

後編はこちら。
https://note.com/etherdiver/n/ne35a529a5fe7


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