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日記 【年金という博打】

こんにちは。

アメリカの年金制度

先週と昨日、FRONTLINE PBSという大手メディア会社による、アメリカの年金制度のドキュメンタリーを観た。2013年に公開された『The Retirement Gamble』と、2018年に公開された続編、『The Pension Gamble』だ。

アメリカには、日本の様に公的年金もあって、それはソーシャル・セキュリティと呼ばれている。日本と同じで、それだけで暮らしていくのは無理な支給額だ。

公的年金の他に、個人で運用する、401KとIRAがある。IRAはIndividual Retirement Accountsの略で、Traditional IRA, ROTH IRA, 後は高額所得者の為のNon-Didactable IRAと3種類あるらしい。

401Kは会社が用意した運用会社に口座を作らされて、所得税が計算される前にお給料の額面から積立額が引き落とされて、多くの場合は同額を会社がマッチングする。会社が用意した運用会社の、限られた投資商品の中から投資先を選ぶ。59歳半になるまで引き出す事は出来ない。日本の企業確定拠出年金と良く似ている。

IRAは企業は関係無くその名が示す通り、個人で管理する年金だ。401Kと違って、投資先対象は幅広い。

Traditional IRAは所得税を支払う前のお給料の額面から引き落とされて積み立て出来て、引き落とす時に元金にも運用益にも課税される。401Kと同じ様に、59歳半になるまで引き出す事が出来ない。

ROTH IRAは手取り金額から引き落として積み立てなので所得税控除にはならないが、引き落とす時に元金、運用益とも無税になるそうだ。ただ、いつでもお金を引き出す事が出来る。

Non-Didactable IRAは所得税控除にもならないし引き落とす時にも課税されるが、運用益に対する課税が引き落とし時だけになるという。

日本とはちょっと違うシステムだが、所得税を払った後のお金から積み立てて、いつでもお金を引き出せる点で、この中ではROTH IRAがNISAと積み立てNISAに似ていると思った。

アメリカの年金制度の変化

アメリカも戦後1980年くらいまでは終身雇用で1つの会社に働き、退職しても会社から年金が死ぬまで払われた時代があったそうだ。ところが、平和と医療の進歩で人々の寿命は延び、高度成長期が終わって投資のリターンに対するリスクは上がり、会社にかかるコストも株主から問題視される様になった。

そんな時、70年代後半から80年代初め、年金管理を雇う会社の責任から個人の責任に移す401Kというシステムが開発された。元々はお給料が高い人だけを対象とした制度だったそうだ。しかし、投資銀行やブローカー、投資信託、保険会社は年金商品販売と運用の手数料で儲け、年金管理の責任を個人に移す事で会社のリスクもコストも下がり、401Kはその後高所得者だけで無い、普通の会社員にも実行される様になった。

ドキュメンタリーの中では、年金に対する責任が個人に移ったことで、個人は3つのリスクを抱える事になったと説明している。1つ目のリスクは、いくら貯めればいいのか、2つ目は、どの商品に投資したらいいのか、3つ目は、いつ引き出せばいいのか。

市場にバブルが起きている時は、どんな投資でも一定のリターンを儲ける事が出来る。そうで無い時に、金融リテラシーの有無がこれらのリスクを上手く管理出来るかどうかの明暗をわける。年金管理の責任を負わされた殆どの人が、金融リテラシーが低すぎるのだ。

日本でもアメリカでも悩みは同じ

ドキュメンタリーでは、老後暮らしていくお金が足りないからリタイア出来ないと心配するアメリカ人達が出てくる。どれだけ生きるかわからないからどれだけ貯めればわからない。これは万国共通の悩みなのかもしれない。

最初のドキュメンタリーに登場する50代のカップルは、今のままだと年金が十分で無いから70代半ばまで働く必要があると言う。レポーターのMartinは、ドキュメンタリーを撮った時点65歳で、貯金は殆どを子供の学費に使い、離婚と市場の暴落もあってお金を失い、生きている限り働き続けるしかないと言っている。30代の男女は、自分達がリタイアする年代には年金制度は崩壊しているのでは無いか、とおどけるが老後に備える予備計画は無いと言う。

福利で拡大する年金商品の手数料

ここで取り上げられるのが、投資銀行やブローカー、投資信託、保険会社の手数料の高さだ。ある401Kの投資商品には、手数料が運用費だけでなく、書類保管費など含めて細かく13種類もあったという。投資系YouTuberの高橋ダンさんも仰っているように、1%は20年、30年、と年月が長くなるほど福利で膨大な金額になる。1%が利益ならいいが、手数料ならその膨大な金額を誰かに渡すと言うことだ。おまけに、手数料を取る会社は0%のリスクでこの報酬がもらえ、投資に対するリスクは100%自分が取るのだ。

この投資商品手数料の1%は、利益から1%を取るのでは無い。あなたが預けたお金と儲けたお金全部から福利で1%を取る。50代のカップルは、手数料に支払った額が自分達が受け取ったお金より多い事を知って愕然とする。

ドキュメンタリーには、あの手数料が安いETFの販売で有名な、バンガードの創立者、John Bogleが出てくる。2019年に90歳で亡くなられたそうだが、2013年のドキュメンタリー時点では85歳くらいだろうか?その年齢とは思えない頭脳明晰、キレキレの話ぶりで、手数料の福利は横暴だと言い切っている。インデックスに最低の手数料で投資するのが「mathmatical reality and certainty」、数学的現実で確実性、のある良い投資だと言っている。

結論

2つ目のドキュメンタリーは、先生や消防士さんや警察など、アメリカの公務員のペンションファンドの破城についてだ。ペンションファンドは州政府が管理しているものだが、雇用主に年金運用の責任を任してもこうなのだ。年金を博打にしないために一番大事なのは、やはり一人一人の金融リテラシーを上げる事だと思った。 

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