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〜世界の頂点とも戦える。それでも遠い距離〜 22/5/7 《プレミアリーグ21-22 第36節》 リヴァプール vs トッテナム レビュー

こんにちは。えつしです。


今回は、プレミアリーグ21-22第36節、リヴァプールトッテナムの試合をレビュー。


カラバオ杯では決勝でマンチェスター・シティを破って見事優勝し、プレミアリーグ、FA杯、CLと未だに3つのコンペティションを戦い、4冠を懸けて負けられないリヴァプール
対するは、3シーズンぶりのCL出場に向けてこれまたもう一つも負けられないという状況のスパーズ
それぞれに大きな目標に向かって勝ち点3がほしい一戦。果たしてどのようなゲームとなったのでしょうか。


1. スタメン

スタメン

・リヴァプール
アリソン
アレクサンダー=アーノルド-コナテ-ファン・ダイク-ロバートソン
ヘンダーソン-ファビーニョ-チアゴ
サラー-マネ-ルイス・ディアス

64’ ロバートソン⇄ツィミカス
65’ ヘンダーソン⇄ジョタ
88’ ファビーニョ⇄ケイタ

直近のミッドウィーク、ビジャレアル戦からケイタジョタに代えてヘンダーソンルイス・ディアスを起用した〔4-3-3〕


・スパーズ
ロリス
ロメロ-ダイアー-デイビス
エメルソン-ベンタンクール-ホイビィア-セセニョン
クルゼフスキ-ソン
ケイン

78’ セセニョン⇄サンチェス
85’ クルゼフスキ⇄ウィンクス
90’+1 ソン⇄ベルフワイン

直近のレスター戦からモウラに代えてクルゼフスキを起用した〔3-4-2-1〕

前節はクルゼフスキではなくモウラをスタメンに据えたコンテだったが、この大一番、スターティングイレブンあったのはクルゼフスキの名前だった。妥当な決断だろう。


2. 1st half

2-1. スパーズの〔5-4-1〕とリヴァプールのポジショニング

いよいよ迎えた大一番。スパーズが選んだ戦い方は予想通り〔5-4-1〕での撤退守備からのロングカウンター。エティハドで勝利を収めたシティ戦と同じような形だが、ロドリと比べてファビーニョが割と動き回るからか、〔4-3-3〕アンカーに対するケインのマークは今回の方が甘め。


スパーズ〔5-4-1〕ブロックに対してリヴァプールは2CBが大きく開いてケインの脇を運ぶのではなく、低い位置を取るアーノルドや、ファビーニョの脇に降りて2ボランチのようになるチアゴを使い、スパーズのブロック前のスペースを活用することが多かった。

左サイドはロバートソンルイス・ディアスがどちらも幅を取ることが多く、右はアーノルドが低い位置、サラーが大外でヘンダーソンがライン間で内側に入ることもあれば、ヘンダーソンアーノルドの位置を入れ替えることも。
左右ともに、リヴァプールSBとWGが縦関係になることにより、大外に張るリヴァプールのWGに対応していたスパーズのWBからすると、自分の内側に相手がいない状況なので迷いなく相手に前を向かせない守備が実行できていた。
前回対戦時に書いた通り、右サイドのユニットの位置関係にはやや疑問が残り、ヘンダーソンが下がってアーノルドが幅取り役のときはアーノルドがもう少し高い位置で受けてソンのプレスバックが間に合わず、エメルソンを釣り出した方がいいのではないかと思ったし、アーノルドが低い位置を取るときはもう少し内側でソンベンタンクールの間の門からライン間へのパスを狙った方がスパーズとしては苦しかったのではないかなと思った。

↑前回対戦時のレビュー


WGが前を向いてスパーズのWBと対峙する状況がなかなか作れない中、リヴァプールの保持時に違いを見せていたのはチアゴファン・ダイクからロバートソンへのパスでサイドへクルゼフスキを釣り出し、近い位置でチアゴがサポート。ルイス・ディアスの外から内に入ってエメルソンのマークを外す動きを見逃さずにアウトサイドで狭いパスコースを通す。
チアゴが降りたときにはベンタンクールがブロックから出てアプローチにいくことが多かったが、そういった寄せに対する抑止力としてプレスにいってもどうせ取れないだろうというキープ力が彼にはある。潤滑油となってスパーズの陣形をすばやく左右に揺さぶり、完全に押し込んだときには正確なインカーブの浮き球でDFライン裏を強襲していた。


2-2. スパーズのボール保持時の狙い

次はスパーズがボールを持ったときの振る舞いについて。


基本的にスパーズはボールを奪ったらまずは速く相手ゴールに向かうことを意識していたので、決してボールを持つ時間が多いわけではなく、実際前半の保持率は36%とかなり低い数字。
そんな中で再現性高くビルドアップからボールを前進させることができていたのがロメロからクルゼフスキに一気につけるルート。


ゴールキックではロメロとダイアーでロリスを挟むように立ち、4バック+GKの形でビルドアップするスパーズ
ロメロルイス・ディアス外切りでプレスをかけ、2ボランチは2IHが捕まえる形で嵌めに来るリヴァプールに対し、チアゴがベンタンクールにベタ付きでマークしてくることを逆手に取って寄せてくるルイス・ディアスとチアゴの間を通すパスロメロからシャドーのクルゼフスキへ届ける。
トラップのしづらい浮いた速いパスでもファーストコントロールで自分の思ったところに置くことができるクルゼフスキ。ボールが入ったときに迫ってくるのはあのファビーニョなのだが、臆することなく前を向き、裏に走ったソンに彼が直接出せていればあわや決定機という場面もあった。


2-3. 1st halfまとめ

スパーズは、〔5-4-1〕の守備ブロックでリヴァプールのビルドアップを外回りにさせ、特にセセニョンの左サイドでサラールイス・ディアスといったWGを、WBのタイトな守備で自由にさせなかった。
ソリッドな守備から狙うはロングカウンターでの一発なのだが、ここはリヴァプールもさすがのカウンタープレスですぐにボールを奪い返してくる。この即時奪回にはビビった。
まずボールを奪ってもボール奪取した選手がディフェンスラインの高いリヴァプールの背後のスペースにパスを送ることを許してもらえない。あまりに寄せが早く、さらにホルダーを囲むように複数人で奪いにくるため、リヴァプールの中盤ラインを越える前に自ら運んでしまうと一瞬にして四面楚歌の状況に。


スパーズが彼らのゲーゲンプレスを掻い潜れていたのは、即時奪回された後、さらに自分たちがボールを奪い返したとき
リヴァプールはカウンタープレスでボールを奪った後もボールを下げることなく速くゴールに向かおうとする。ホイビィアがさすがの読みとボール奪取力でリヴァプールに奪い返されたボールを再び奪い、トランジションを3回繰り返したところからリヴァプールゴールに迫る場面を作ることができていた。
また、ポジティブトランジションの局面では、決してソンのように足が速いわけではないものの、クルゼフスキの相手や味方を見て、出てくる逆を取ったりタメを作ったりできる能力が存分に活かされていた。


スパーズからするとリヴァプール相手によく守り、うまく戦うことができていたと言っていい前半。
しかし、もちろんリヴァプールも完全に封じ込まれていたわけではない。
急いで戻ってスパーズのカウンターを凌いだ後にすぐ前に出ていくカウンター、アーノルドロバートソンからのキックで得たコーナーキックからのファン・ダイクなど、持ち前の切り替えと飛び道具でゴールを狙う。


前半にスパーズ側の課題として一つ気になったのは、リヴァプールのWG→SBのバックパスでミドルプレスを発動させたとき。
リヴァプールのSBシャドーが出るため、CBにはケイン逆サイドのシャドーが出ることに。そうなったときに余るリヴァプールの逆サイドのSBにはWBが縦スライドしなくてはいけないと思うのだが、サラーマネルイス・ディアスのスピードが怖いのか、後ろが同数になることを恐れてエメルソンセセニョンが前に出れずにSBを使われてしまうことが何度か見られた。
これに関しては、プレスにいくのなら勇気を持ってWBも前に出るべきだし、それが無理ならばケインリヴァプールのCBまで追うべきではないと思った。


スコアとしては0-0で終わった前半。この試合に準備をしてきたことに関してはしっかりと表現ができたスパーズ。果たして後半はどのような展開となったのか。


3. 2nd half

後半、なおもスパーズが耐えてリヴァプールがなんとかこじ開けようとする展開は続く。前半あったスパーズの中途半端なプレスはなくなり、ひたすらに我慢である。


そして55分、コーナーキックの流れで左サイドにいたエメルソンロリスからのキックが届く。うまくリヴァプールのプレスをひっくり返し、エメルソンから右サイドのケインへの弾道の高いボールが届く。ケインアーノルドの逆を取ってドリブルで中に持ち込み、ソンロバートソンコナテを引っ張って空いた左サイドへ。そしてセセニョンのダイレクトクロスをソンがフリーで蹴り込んで55分53秒にゴール。アンフィールドでスパーズが先制点を手にする。


その後、スパーズロリスの成長を感じるロブパスからフリーのエメルソンを使うビルドアップで右サイド深く侵入まで侵入し、エメルソンのクロスまでいく決定機を作り、リヴァプールチアゴコナテに出るベンタンクールホイビィアの裏でマネが受ける動きを前半より増やしてPA付近でファールを獲得していく。


そして6465分ロバートソンヘンダーソンに代えてツィミカスジョタを投入し、システムを〔4-4-2〕に変更して先程のライン間で受けるマネの動きが得意なジョタを中央に据える形に。
スパーズのビルドアップ時に関しても、ファビーニョチアゴのダブルボランチにすることでファビーニョの脇をクルゼフスキに使われるのを防ぐことができていた。


元からボールを持つ時間は少なかったものの、リヴァプールのシステム変更でビルドアップを規制されたスパーズ。それでも耐え続けていた中、とうとう73分20秒ルイス・ディアスのカットインからシュートを打たれ、ベンタンクールにディフレクトしたボールがゴールマウスに吸い込まれてリヴァプールに同点弾が生まれてしまう。


終盤のオープンな展開に備えてか、コンテ78分セセニョンに代えてサンチェスを投入し、85分にはクルゼフスキに代えてウィンクスを入れて〔3-5-2〕に。


サポーターたちはこの展開の中、前節軽い守備対応によってイヘアナチョのシュートを許したばかりのウィンクスを入れるのかと思う気持ちが強かったと思うが、93分ウィンクスのロブパスでエメルソンに展開したところから、ルイス・ディアスに奪われたボールをウィンクスがパスカットして再び高い位置でマイボールに。エメルソンのクロスからはシュートまでいけなかったものの、もう一度やり直して今度はエメルソンの落としをウィンクスがダイレクトクロス。すばらしいボールがゴール前に送り込まれたのだが、ホイビィアケインへの落としはうまくいかず、決定機を逃してしまった。


そしてタイムアップの笛が吹かれ、両者ともにレベルの高さを見せたゲームだったものの、1-1、勝ち点1を分け合う形で試合終了となった。


4. 感想、総括

できることはやった。シティ戦同様〔5-4-1〕のブロックで懸命にスライドし、カウンターで先制もした。やはりスパーズは割り切ってこの戦い方ができればシティやリヴァプール相手にも十分に勝ち点は計算できる。
ただ、やはりあれだけ相手にボールを持たれて何度も何度も揺さぶられるとスライドは遅くなってくるものであるし、ミドルシュートはある程度打たれる構造になっている。
実際失点シーンもホイビィアとベンタンクールのスライドが若干遅れていることでルイス・ディアスのカットイン、シュートを許してしまっている。
ミドルシュートを打たれやすい戦い方を自ら選択しているのだから、もちろんそれは頭に入れておかなくてはならないものであり、今回のリヴァプールはそこまで積極的にミドルを打ってこなかったが、確率論的に数が増えればああいったディフレクションでゴールになる可能性が上がるのは当然だ。


この戦い方でも世界の頂点相手に勝ち点が計算できるのはもうわかったが、どうしてもこのやり方では終盤にスライドが遅れてああいった場面が出てきてしまうことはあるし、かといってそれをなくせる程最後まで走り続けることができるのかと言われると現実的ではない気もする。
そもそもスライドが遅く〔5-4-1〕ブロックでのボランチ間が空きすぎる問題は普段の試合から気になる部分ではあるし。
そして決定機をそこまで多く作ることができない分、58分のカウンターをモノにできなかったように、どうしても最後のクロス、シュートの質に依存してしまう部分が大きい。


もちろんリヴァプール相手にここまでやれたことはサポーターとして誇らしいが、リーグテーブルの上で彼らと渡り合っていくためにはやはりまだまだ先があるなと痛感させられた。


5. おわりに

いかがだったでしょうか。


いよいよ次節は延期となっていたノースロンドンダービー、文字通りCL出場権を懸けて負けたら終わりの大一番です。本当に負けたら終わりです。
CLファイナリスト相手に勝ち点1をもぎ取って繋いだ希望。
まだ終われません。



戦い方の話をすると、シティやリヴァプールを相手にしたとき程スパーズが深く守ることはないでしょうが、だからこそ怖い。今のスパーズの弱点前線と中盤、DFラインが間延びしてしまうことビルドアップ時のWBとシャドーの連動ボランチの使い方
前と後ろの意思統一がなっておらず、自らピンチを招いてしまうような展開を避けることができるか。ビルドアップは一朝一夕で改善するものではないので、繋げずに蹴ってしまうことが多くなるような展開はある程度許容範囲ですが、ライン間でプレーするのがうまい選手が揃うアーセナル相手にやすやすと中を使われて前進されるのはさすがに避けたいところ。


こんなに熱いノースロンドンダービーは僕自身も体験したことがなく、何が何でも勝ちたいこの一戦。
経営サイドやサポーターからすればシーズン当初は終盤にこんな争いができているとは思ってもみず、ひとまずEL出場が確定しただけでも万々歳という意見もあるかもしれませんが、個人的にはチームとして4位以内でのフィニッシュを目標として掲げ、これだけドラマチックな舞台を自分たちで用意してしまった中で負けるのは今後に向けてもよろしくないと考えています。


彼らがCLを目標に設定して走り出してしまい、ここまで戦ってきた以上、負ければそれ相応のダメージがあるはずですし、メンタリティ云々の問題が取り沙汰されてきた今のスパーズに必要なのはこの大舞台で言い訳せずにぶつかって何としてでも勝利を手にするという経験なのではないでしょうか。


あの先が見えない暗闇、とんでもない逆境から何とか這い上がり、CLが手に届くところまで登ってきました。





もう少し、もう少しで届きます。





勝って次に繋げましょう。来季からはスパーズの逆襲が始まります。





立ちはだかるのはアーセナル





舞台は整った。





Dare. Dream. Do.



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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