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【4月】ユーフォリアR&Dセンター主催・社内勉強会活動報告

ユーフォリアR&Dセンターでは、ユーフォリアのビジョンである「すべての人の可能性が生きる未来へ」を実現するため、スポーツ科学領域におけるさまざまな研究課題の解明や新技術・サービスの開発、そして社会実装に取り組んでいます。

数多くのアスリート、スポーツ関係者と接する機会が多いユーフォリアメンバーには常に最新の正しい知見を取り入れておくことが求められるため、R&Dセンターが主催となり、毎週金曜日の朝9時から「ユーフォリア社内向けの勉強会」を開催しています。

データサイエンス、スポーツセーフティ、神経科学、そしてスポーツ栄養学など、様々な専門家が在籍するR&Dセンターでは、その知見を活かし、部署を超えた社員全体のリテラシー向上や、自身の専門性の研鑽に取り組んでいます。

今回は、2024年4月に実施した社内勉強会のトピックについてご紹介いたします。


第1週:「我が国のスポーツ現場における労作性熱射病の発生と現場での対応」

4月第1週目は、リサーチャーの山中より「我が国のスポーツ現場における労作性熱射病の発生と現場での対応」というテーマで発表が行われました。

3月最終週に山中が発表した「高校の運動部活動中の重篤事故について」の続きとなる発表で、山中が博士課程で取り組んだ2009年から2018年に発生した事故の実態について調査し、記述した研究の一部です。

スポーツ中に発生する重篤事故の原因として大部分を占めるのが、心臓系の事故(Heart)、頭部や頚部の外傷(Head & Neck)、そして労作性熱射病(Heat)の「トリプルH」です。安全なスポーツ環境を作り上げるには、①トリプルHを予防すること、②もしトリプルHに起因する傷病が発生した場合には適切に対応できるようにすることが非常に重要です。

勉強会では、日本の高校運動部活動で発生した労作性熱射病による死亡事故を題材に、労作性熱射病発生後の現場での対応の問題点について振り返りました。米国資格認定委員会公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) の資格を持つ山中より、現場で実践できる冷却法についても解説が行われました。勉強会には実際にスポーツ現場でアスリートに関わる機会のある社員も多く参加していたことから、活発なディスカッションとなりました。

なお、今回山中が発表した内容の一部は既に学術論文として公表されておりますので、ご興味のある方は以下よりぜひご覧ください。

Yamanaka, M. S., Hosokawa, Y., Ayusawa, M., Hirose, N. & Kaneoka, K. Epidemiology of sports-related fatalities during organized school sports in Japanese high schools between 2009 and 2018. PLoS One 16, (2021).

▲PubMedのリンクが開きます

Yamanaka, M. S., Ayusawa, M., Hosokawa, Y., Hirose, N. & Kaneoka, K. Epidemiology of sudden cardiac death and sudden cardiac arrest with resultant disability during high school organized sport in Japan. J Sci Med Sport 25, 705–709 (2022).

▲PubMedのリンクが開きます

第2週:「海外遠征に臨むアスリートに対する栄養サポート」


第2週目は、リサーチャーで管理栄養士の資格を持つ飯澤より「海外遠征に臨むアスリートに対する栄養サポート」というテーマで発表が行われました。

スポーツ栄養学に関する研究は数多くありますが、実際のスポーツ現場では、そのエビデンスを”どう活かすか”が重要となります。そこで飯澤からは、海外遠征時のサポート事例をもとに「機内での体調・コンディション管理」、「現地での食環境整備」に焦点を当てた情報提供を行いました。

写真のスライドは、「長時間座りっぱなしの機内において、できる限り筋量・筋機能を維持する為の栄養戦略」について紹介しています。座りっぱなし、つまり不活動の状態が長く続くと、筋分解や筋機能の低下が生じる可能性があります。飛行機での移動後、すぐに高いパフォーマンスの発揮が求められるアスリートにおいては、この小さなマイナスですら避けるように対策しなければなりません。
飯澤からは、サプリメントを活用した実践的な対策方法が紹介されました。

第3週・第4週:「Vertex AIの活用」


第3・4週目は、R&Dセンター センター長の田中より「Vertex AIの活用」というテーマで、2週にわたり講義と実習が行われました。Vertex AIはGoogle Cloudの機械学習プラットフォームで、様々な種類の情報を組み合わせ、多様な出力を生成できます。Vertex AIでは、これまで複雑なコードを書いて行われていた分析が、自然言語のプロンプト(指示や質問)を入力することで実行することができます。

講義では実際のデータセット(※公開データ)を用いて、プロンプトの書き方の工夫や生成されたアウトプットの解釈や注意点についても紹介されました。AIを用いたデータ処理は、まず正確にプロンプトを入力することが重要です。相手が人間であろうと機械であろうと、より的確な指示を出すことは正確に仕事を進めるうえで最も大切であるという点は似ていますね。

また、現状の生成系AIは平気で”嘘をつく”ことがあります(ハルシネーション)。これは、データを正しく参照していなかったり、指示が正しく伝わっていないことなどが要因となります。プロンプトエンジニアリングにより、指示や命令を的確に設計し、より良い回答を生成させる技術が実務では求められます。AIは上手く活用できれば我々の業務を驚くほど効率化させる一方で、出てきたものを鵜呑みにはせず、うまく活用をしていくという観点が重要であるという話が印象的でした。

4週目に行われた実習では、実際に社員がVertex AIにデータを読み込ませて、様々な解析を行ってみました。自分が分析したい切り口で分析を行い、そこで入力したプロンプトの工夫点を発表しあいました。普段データ分析には関わっていないメンバーも、こうした勉強会をきっかけにAIの活用やデータに触れる機会を増やすことで、専門領域の活用の幅を広げていく一助となります。

スポーツ医科学研究やデータ活用に関するご相談について


こちらのnoteでは、今後も毎月の社内勉強会の様子をお届けしてまいります。

もし、このような社内勉強会のトピックについて「自分たちのチームや組織でも、同じような内容の講演をしてほしい!」など、ご関心をお持ちいただけましたら、ユーフォリアでは法人向け社内セミナーやスポーツ科学に関するご相談を受け付けております。

以下のお問い合わせフォームより、「取材・講演・イベント登壇などのご依頼」の項目をお選びいただき、お気軽にお問い合わせください。内容や形式、費用などについて、追ってご相談させていただきます。
また、ユーフォリアでは受託研究のご依頼も承っておりますので、こちらについてもご興味のある方はお気軽にご連絡ください。


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