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LEICA M typ240を今でも積極的に使いたい理由(という言い聞かせ)

 ライカらしい色とはいったい何なのか。まだライカを手に入れていない頃の僕は、いろんなネット上で出されている作例を見ながら、この色を再現したいな、と思っていた。
 だが、ライカらしい色とは、いったいなんだろう。そうとも思った。当時よく見ていたX1やX2の色は、その2機種でも色が違っていたし、で、どちらもいい色をしていた。しいて言えばX1が好みだったかもしれない。X100が発売されたころでもあるので、2つのX ということで比較される記事もあり、そのJpegで吐きだされる色の違いは非常に興味深いものだった。
 ライカらしい色、という言葉は、もしかするとデジタルになってから出てきた言葉なのかもしれない。その歴史をよく知らないから、ライカらしい色という言葉がどの時代から言われてきたのか、その発端をつかめないまま、出て来る写真を指してライカっぽい色だと、僕も含めみなほめそやしている。しかし、デジタルではないころは、その色味というのは、フィルムに大半を左右されるものであったはずだ。ライカらしい色なんてものはなかったのではないか。それでも、しいて言うならば、多くのライカを使った偉大なカメラマン、写真家たちが作った色が、そういう色だったのではないかな、とも考えてみたりする。いずれにしても、〇〇らしい、という言葉は、実に曖昧だ。〇〇らしい●●という言葉は、本当は気を付けなければならない。

 それでも、僕はこのライカらしい色というものに盲目的に惹かれてきた。しかしてライカMtyp240を手にすることになった。10年も前のカメラである。10年前のカメラは、もうだいぶ、どのカメラを使おうが、大きな問題はないよ、と言われるようになったころだと記憶する。とりあえず写真として十分に機能する。そんなころのカメラだ。だが、もうさすがに10年前。例えば後継機種と比べて不満があるところもある。高感度性能に関しては、もう少しがんばってほしいところ、発売の時期を考えても、もう一段ほどは耐性があってもいい気がする。そこに目をつぶったとして、他にもボディの厚さや、前面にあるライカロゴの大きさ、Mという文字など、デザインとして煮詰められていない感もある。そしてなによりシャッター音の大きさ。音の質感としては嫌いではないが、とにかくもМ10-Pの細身のスタイルや、上質なシャッター音、夜でも撮影を気楽に続けられる高感度性能を知ると、typ240はやっぱりちょっと足りないなあ、と思うことも多い。盲目的に「だがそれがいい」とはならない。なんなら、相場よりも安いM10-Pがフリマアプリで出ていたときは、正直悩んだ。出どころも悪くなさそうだし、色々処分をすれば買えなくもなかった。
 他のカメラとの比較もすれば、10年前のこのカメラが機能として優っているところも少ない。本当にフィルムカメラをセンサーだけ変えたかのようなものだ。

 だが、一方で、typ240でなくてはならない、と思うことも出てきた。それは、それこそが、カメラが吐き出す色である。
 身の回りでライカを使う人は、多くが色の調整をしないでいい、と言う。撮って出しで十分だ、と。身の回りと言うことで、彼らの使用しているのは、M10-Pであり、M10-Rなわけだが、一応RAWで撮るけれど、そのまま色調整をしないでも十分だ、と言う。確かにいい色をしていると思うが、他のカメラと大きな違いがないようにも思う。言い方を変えれば、ずいぶんと使いやすいカメラになった、ということでもあるが、一方でtyp240の色とは違うな、と感じる。そしてその色がとても好きだな、と僕は思っているのだ。

 その色というのが、スムースという設定が吐き出す色だ。
 typ240にはフィルムモードというのがある。通常の色設定、これも渋めでいいのだけれど、フィルムモードのスムースという設定、いわば、当時のライカが作り上げた色だが、この色がとてもいいのだ。スムース以外にヴィヴィッドというモードもある。ヴィヴィットもまたいいのだが、使いどころを選ばないといけない。確かに色が濃く出るが、ヴィヴィッドという割には、cannonのピクチャースタイルで言うところの「クリア」よりはあっさりめだ。

ヴィヴィッド
スムース


 スムースはフジフィルムのクラシッククローム的な色合いを出す。だから、フジとライカを同時に運用しても、極端な違和感はない。そしてこれがとてもいい。彩度は比較的低め、少し濁りのある写りをする。願わくば、この設定で、さらに自分でコントラストや色を微調整できれば最高だが、それはできない。だから、この設定で撮る限り、色に関しては、ライカMtyp240をスムース設定で使っている人と区別はできないことになる。とはいえこれが本当にいい。きれいだと思う。
 RAW現像を覚えてこなかった自分としては、フィルムモードがあること、そしてそれが自分の好きな色設定であることは、かなりのアドバンテージである。けれども、M10以降、そのフィルムモードはないらしい。typ240の通常モードと同様に、コントラストや色の濃さ、シャープネスが調整できるだけだそうだ。すると、どうしてもこのカメラから離れるのは難しいと考えるようになった。

xpro2

 一点突破という言葉がある。他の分野はさほどではないけれど、その1つが飛びぬけてすごい、というものだ。GRのあのコンパクトさとか、X100のファインダーとか、SonyのRX1のフルサイズなのにコンパクトカメラだ、とか、言うなれば、スマホも圧倒的な可搬性と通信制を持っているとも言える。そのような1点突破的機能は、カメラを名カメラにする。後継機を待ちわびるようなカメラになる。
 ライカM型もまた、レンズを含めたコンパクトさで、唯一無二だとは思うが、なかでもtyp240のもたらす色は、それだけで手放したくないカメラだ(白飛びはとにかくはやいけれども)。



 むろん、そうは言っても、M10-Pの薄さ、シャッター音は、スナップに最良という面があるから、いつか乗り換えることもあるかもしれない。それに、メーカーお仕着せの、それもほとんど自分で微調整もできない色設定を頼りにしてしまうのは、ある種の怠けのようにも思う。 けれど、撮って出しでこの色が出てくれるのであれば、僕はやっぱりもうしばらくはこのナンバリングから外れてしまった、あまり人気がないと言われているライカMtyp240というカメラを使い続けていきたいと思うのだ。

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