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summilux 75mm f1.4 2nd 初めてライカ純正レンズを買う

2016年3月のブログにて

 けっこう前にこんなのを書いた。

 一本ならば35mmか50mm。あるいは28mm。これが定石らしい。僕も35か50がやはり使い勝手がいい。路地が多いところであれば、35mmを使うだろうし、50mmは何を撮るか分からないときに使う傾向があって、しかしこの二本に関しては用途というよりも気分で使い分けることのほうが多い。

 二本ならば35mmと85mm。あるいは28mmと50mmの組み合わせだ。後者はX100での組み合わせになる。一眼レフでの28mmレンズを持っていないのだ。
 実際、撮影に行くぞというときは、35mm 50mm 85mmの三本が多い。しかしこれだと、50mmの存在が曖昧である。他のどの組み合わせとも焦点が近くなって、一眼レフでは少々面白みに欠ける気がする。でも持っていきたくなるのは、やはり気分の問題なのだと思う。
 ちなみにここに、さらに12mm~24mmをプラスすることもある。
 望遠側は85mm以上をほしいと感じることは少ない。
 最近考えるのは21mmと50mmくらいの開きのほうが面白いのではないか、ということ。21mmは超広角の入り口みたいな画角なわけだけれど、ほどよく遠近感がとれるうえ、それ以上の広角に比して扱いやすいように思う。「思う」というのは、その画角の単焦点を用いたことがないから。ズームを固定させれば使いやすさも分かるけれど、意識して使ったことがない。一度広角ズームを固定してやってみるのもおもしろそうだ。

 さて、この画角だと、実はライカが得意とする範囲のように思う。
 お金がロマンス並に有り余るか、ライカの方が気まぐれで僕にプレゼントしてくれないかぎり、手に入れることはできないけれど。

 ところで、一本のレンズで撮り歩くとすれば、35か50と書いたが、以前は85mmばかりを使っていた。
 フルサイズのカメラを買ったときに、ノクチルクスの、あの人の目よりも明るいレンズの写りを観て、とにかく「ほしい」と思った。被写体から離れているのに、背景が適度にボケて、被写体が浮き上がるように見えたその一枚に、心惹かれたのだ。
 けれどライカのボディは高いし、いや、もう、このレンズ自体、安い車が買えてしまう値段である。「それら」を購入することはゼッタイにできない。そう、絶対だ。でも、その写りを自分も経験してみたい。そんな思いから、「0.95の明るさには追いつかないが、その分、望遠気味でボケ感を稼げばいいのではないか」と思い至り、そしてそれが正しかったかどうかは分からないけれど、とにかく僕はそんな動機でシグマのレンズを購入したのだった。

 一応50mmF1.8という単焦点は持っていたけれど、表現の意図を意識して買った単焦点レンズはシグマレンズが最初だった。

 このレンズ一本で歩くのは実に楽しかった。スナップには少し長いと言われるレンズなのだけれど、でもそれはそれで色々工夫をするのだろう、勝手が悪いな、と思うこともなく、あれこれ撮影したものだった。僕にとっての標準レンズは85mmだったのだ。
 だから時々、一本のみで歩くとしても、その定石から離れた焦点距離でやってみたいなと思うこともある。魚眼だとか、12-24とか、70-200とか。マクロレンズ一本というのもいい。でも、やはり他を持っていると使いたくなるし、定番がないと不安になる。そんな気持ち上の保険が、荷物を重くさせ、行動範囲を狭めてしまっている。身軽が一番だと分かってはいるのだけれど、それができない。どうも、これはカメラの話だけでなく、日常の生活でも言えることのようだ。あれもこれもが止まらない。

舌の根は乾いているが

 ゼッタイに買えないと言っていたライカを、舌の根はすっかり乾いていたと思うが買ってしまったわけで、6年越しにこのフリは回収されたことになる。

 そうして圧倒的に50mmが好きになった。今の組み合わせは50mmと21mm 50mmと135mmと言ったものが多いかも知れない。

 さてそんな中、75mmである。
 50mmでもなく35mmでもなく75mmだ。

 狙って購入したわけではない。本当にばったり出会ってしまったのだ。

 この75mmという焦点距離は、ポートレートレンズとして名高い85mmより少し広め、なんなら標準レンズ的にも扱える。たとえば50mm ではちょっと広いかなと感じる日にはちょうど良い。気分で50mm が広角的に思えてしまう日もあるのだ。
 それまで、フジのカメラで明るい中望遠が欲しいなと考えていた時、xf90mm とかなり悩んで中国製の75mmf1.25 Mマウントを手にした。参考にしていたブログが135mmf1.8の驚異的なボケ感で、それを出したいという思いもあったし、買えない買えない言いつつ、いつかはライカという気持ちがどこかにあったからだ。
 そう言うわけで、ライカで初めて使った焦点距離は75mmになる。そもそも僕の単焦点レンズの始まりは85mmだったので、そこにさほどの違和感がなく、画質云々を除いてはかなり使い勝手が良い。画質もあれこれ欠点はあるが、そこをどうのと思うほどではない。

 だから今回のお買い物は、ライカ純正だから買ってしまった、と言って間違いない。
 …欲しいなと思っていた50mm にしても既に他があるんだけども。

 それでも勢いで買ってしまったのは状態が良かったのと、思わぬプライスタグだった。買えるじゃん! ズミルックス! 焦点距離も嫌いじゃない!
 ネットで見ている時はスルーしていた焦点距離だが実物見せられるともうダメ。いや、できることならやはり実物を見て判断したいもの。
 以前某ネットショップで6ビット改造済みのズミクロン50mm2ndがそこそこの状態で、セール品として少し安めであり、これは買いだと思っていたけれど、やはり手にとって見れないのはネックだ。ここ宮崎だと、しかしそんな機会も少なく、難しいのだ。
 そんな折に隣県に行く用事がてら立ち寄ったカメラ屋さんにズミルックスがあったわけだ。

 こんな場所だとライカを欲しがる人っていなくて…。と店員さんはおっしゃっておられたが、そんななか誰がこのお店にライカを売ったのか、ちょっと気になるところだ。個人経営だからか、自分の予算を告げると相場よりかなり安くしてくれた。割引率に目が眩んで気がついたらカメラ鞄にレンズ入らないどうしようって状態に。

フォクトレンダー75mm f1.9のデザインが美しい

 最近発売されたフォクトレンダーのULTRON 75mm F1.9が単体ではそうは思わなかったのだけれど、ボディに着けた状態で見ると大変に美しいと感じた。絞り値はそこまで明るくないのだけれど、かなりコンパクトで、MCコーティングはマットな塗装もあって、頗るかっこいい。
 う、いいなあ。apo skopar90mmよりいいかもしれない、と思っていたときに出会ったズミルックス。これもまたなかなかかっこいい。ベクトルが違うけれど、その見た目にも心惹かれた。

石井靖久さんのこと

 医師をやりながら写真家としても活躍されている石井靖久さん。カメラは最初からライカ一筋。僕が彼のことを知ったのは、彼が書いていたブログで、とにかくかっこよく、ときおりブログを観に行っては溜息をついていた。まだ写真家として出発される前のことだった。
 そんな石井さんの代名詞が75mmだそうだ。アポズミクロン75mmをお持ちのようで、それで数々の素晴しい作品を生み出している。
 図らずも、同じ焦点距離のレンズを手にしたわけだが(アポズミとズミルックスの違いはあれど)だからといって同じような写真が撮れるわけではないことは十分承知している。
 なんなら、ヘリアー50mmのときも、セイケトミオさんの作例にやられたわけだが、だからといって同じレンズを持っていたら同じ写真が撮れる、というわけではないことも十分理解している。そんなこと言ったら、ライカを手にしたら他の著名な写真家のような写真が撮れることになる。そんなことはない。

 けれども、誰かと同じものを持っているという優越感みたいなものは、趣味の世界の醍醐味だったりする。ロードバイクの楽しさと似たところがあるとも言えるだろう。プロと同じ機材を持っているってちょっといい。ただそれだけで、同じことができるわけではないことは分かっているのだけれど。

 石井さんのアイスランドの写真のなかですごく好きな一枚があって、それが馬の背中の毛がアップになって写っているものだ。背景のどんよりとした空と、毛並みのぼさっとした感じが、なんとなくアイスランドの気候を感じさせてくれるのだ。いや、高緯度にありながら暖流の関係でそこまで寒くはない、という情報を知っているからかもしれないが、その情報としての知識を、実感に近いところにまで持っていってくれた。
 ぜひとも写真をご覧になってほしい写真家である。


75mmはブルーオーシャンかもしれない。


 75mmのレンズを検索かけてみる。中華製のAFが出ているらしい。それもF1.2だ。APS-C専用だけれど、写りもよくこれでAF仕様。もし、これが早く出ていたら、ライカを買う呼び水となった7artisansのマニュアルレンズは買わなかったかもしれない。

 ところが、というか、しかし、というか、ライカ用の75mmに関するブログ、動画は50mmや35mmほど出てこない。普段使いしやすい焦点距離ではないから、当然かもしれないが、90mmより出てこないんじゃなかろうか。さらにズミルックス75mmとなれば、説明の動画など皆無状態。これは、もし動画にしたら、並み居る35mm 50mmの説明動画とは違って、数少ない情報として重宝されるかもしれない。75mmはライカ動画のブルーオーシャンなのだ(と言い切っていいか、とか、そもそも需要があるのか、とか、いやいや、そもそも動画を作る気はないし、とかいろいろあるのだけれど)。

ピント合わせが大変

 75mmf1.4はピント合わせが難しい。ノクチルクス50mm f0.95とボケ感では同じくらいになる。マグニファイアを使っても、なかなか合わせられない。動き回る子どもなんか撮ろうものなら大変なボケ写真を量産する。だから、どうしても呼吸を止めて、構えて撮るようなスタンスになるが、それで出てきた写真は被写体が浮かび上がるようになって、これこれ、コレが欲しかったのよ!と膝を打つ描写だ。

EF 50mm f1.2 Lと似ている気がする。

 僕が持つのは所謂2nd。フードを引き上げて使うやつで、フィルター径は1stより大きいが、重量は軽い。1983年ころからこの2ndになったそうだが、1stはノクチルクスと同じ硝材を使っていたとか。
 そんなころのレンズだから、開放の解像感はあまり良いとは言えない。ピントの合った部分もはっきりくっきりとは行かないが、先述した通り、中距離での立体感は惚れ惚れするものがある。そう、昔、フォトヨドバシの作例に上がっていたノクチルクスの立体感と似た感覚になるのだ。

 描写はどことなく、CanonのEF 50mm f1.2に似ている気がする。解像感はあまりなく、雰囲気が写る感じといえばいいのかな、一眼レフのときはこのレンズばかりを振り回してスナップしていた。これも立体感が出るレンズだったが、なんとなくノイズが写るような、濁った描写を意図するにはこのレンズだと思っていたものだった。

 その濁り感という点では、カメラ側の処理もあろうからそこまで感じるわけではないけれど、このレンズもまた、なにかそれに近いものを感じさせるところがある。

若干の圧縮効果も感じる。

これでストリートスナップしたい

 もともと最初の単焦点が85mmだったので75mmは少し窮屈な標準レンズって感じだ。撮ってみると、不思議と余白が自分としてはちょうどいい。50mm が自分の好きな画角ではあるけれど、少し気分的に余白多めだなあと感じる時に、この15mmの差は、その違和感を埋めてくれる。

 季節柄桜の写真ばかり撮っているが、そろそろ街中に持ち出してみて、これでなんでも撮ってみたいと思う。

人が通れば…。
機動力があると、広い公園内も撮りやすい。
風に飛ばされた花びらがこちらに迫ってくる。うわあとか言いつつシャッターを切った。
前ボケはそこそこ素直な気がするが…。
立体感。
背景ボケは少々うるさい。嫌いじゃない。むしろ好き。
アンダーで撮りたいと思わせるところも 50mmLに似ている。
夕日に照らされた自転車の質感がいい。
この感じが 50mmLと通じるものがある。

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