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I can't be the one for you.


 目に入ったと同時に、自動的に足が止まった。
 本当にいるんだ、こういうの。
 だけど、うちでは飼えない。だからまたすぐに歩き出した。もうすぐ電車が来る。声は聞こえなかった。小さく丸まって、眠っているようだったけれど、目だけはしっかり開いて、何処かを見ていた。誰かを待っているようだった。あのとき一瞬だけ足が止まったのは多分、自分も昔そうだったから。つまりメサイア・コンプレックス。思い出す。電車が出発して、ガード下に鉄骨のきしむ音が響く。あのころ、ただ、祈っていたら、信じていたら、いつか報われると思って生きていたら、たまたま本当に神様に拾ってもらえた。それだけだ。運が良かっただけ。戻ってきたのは、ただ一晩のご飯をあげるため。やっぱり、お腹を空かせてた。
 そうか、お前は、生きようとしているんだな。
 ごめんね。明日、誰か良い人に会えるといいね。


最後まで読んでくれてありがとう。 無職ですが、貯金には回さないと思います😊