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営業時代の話part⑲

おはようございます!

今日は「営業時代の話」をお送りします!

▼第1話はコチラから!

それでは本日もよろしくお願いします!

※登場人物、企業、団体は全てフィクションです。

●テレアポ

私は社内にある資料をあさり、大柴テクノロジーについて情報を集めた。社長が言っていた通り、最初の取引はもう15年以上前で、社長自身が営業担任だった。そこから、かなりの大口取引が続いていたが、ここ数年はほとんど取引もなく営業も滞っているようだった。

「なるほどね。もしこの取引を復活させることが出来たら、俺の成績もかなり上がりそうだな」

私は資料を見て、そう息巻いた。そしてその後は大柴テクノロジーのホームページを見たりして、午前中はとにかく情報を集めた。そして午後、いよいよ大柴テクノロジーに電話をする。これが私にとって初めてのテレアポだった。 

「よし、電話するぞ。えーと、取りあえず最後の訪問履歴にある“吉田さん”って言う人事担当の人にかけてみるか」

私はドキドキしながら受話器をとり、電話番号を押していく。番号を押し終わると、呼び出し音が聞こえた。それに伴い心臓の鼓動が速くなっていくことを感じた。

2コールくらいしたところで電話がつながる。

「はい、大柴テクノロジーでございます」

「あ、い、いつもお世話になっております。ヒューマン株式会社の佐藤と申します」

私は緊張しながらなんとか名乗ることが出来た。

「いつも大変お世話になっております」

「お世話になっております。あ、あの、人事部の吉田様はいらっしゃいますか?」

「人事部ですね。ではお繋ぎいたしますので少々お待ちください」

「は、はい。ありがとうございます」

電話は保留音へと変わった。それから15秒くらいして再び電話がつながる。

「お待たせしました。人事部の飯河ですが」

電話に出たのは吉田さんではなく、飯河さんという方だった。

「あ、あの、いつも大変お世話になっております。ヒューマン株式会社の佐藤と申します。よ、吉田様はいらっしゃいますか?」

「あー、吉田ですね。吉田は昨年移動になって今は人事にいないんですよ」

「え! そ、そうなんですか?」

予想外の返答があり、私はどうしたらいいのか分からなくなった。

「あ、えーと……。そしたらまた改めさせていただきます」

「そうですか。申し訳ないですね。それでは失礼します」

「し、失礼します」

”ガチャ”と電話が切れた。初めてのテレアポは何ともあっけなく終わる。私はどうすることも出来ず、「改める」と逃げるしか出来なかった。受話器を置いて、しばらくパソコンの画面を見つめていた。

To be continued…

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