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ローカルプロジェクトのつくりかた④:プロジェクト設計

当日の運営だけでなく全体の企画からボランティアが主体を担う、渋谷の真ん中でみんなでつくる音楽祭「渋谷ズンチャカ!」
2014年の立ち上げから「どうやったら関わる人たちの"やりたいからやる"を増やせるかな?」と現場で重ねてきた試行錯誤が、ローカルプロジェクトづくりのショーケースになるんじゃないかと以下のトピックでまとめています。

今回は「プロジェクト設計」について。
先に「枠組み」ありきではなく、渋谷ズンチャカ!づくりの主体を担うボランティア(「チーム・ズンチャカ!」と呼んでいます)それぞれの「やってみたいこと」ありきでチームを組成し、実現までの工程を仮組みして実際に進めていく流れを解説していきます。

なお、学校の文化祭に例えるなら、前回まとめた個別の企画が「クラスの出し物」で、今回まとめていくプロジェクト全体の設計が「文化祭実行委員会の役割」になります。
もし、個別の企画だけを担うとなると"参加者"の域を出にくく、プロジェクト全体のことについて他人事になりがち(極論「自分の企画がよければOK」)になるので、それぞれが「このプロジェクトの"主体者"のひとり」として自律化しやすいように、プロジェクト全体の裏方の役割について全員何かしらを担うようにしています。
(逆に、個別の企画についてはアイデア発散する「ためしに企画の練習」までは全員でやってみますが、その先の実際の企画づくりはやりたい人だけが進めます)

それぞれの「やってみたい」からチームをつくろう

「好きでやってる」を最大化するために、先に役割や組織図ありきではなく、集まったメンバーそれぞれの興味・関心・好奇心ありきでチームの形をつくっていきます。ここでも「正解はない(≒たくさんある)」と、誰かひとりの考える"正しさ"よりも最大多数の"たのしさ"を志向していきます。

チームアップの流れは以下です。

【「ためしに担ってみたいかも」からチームをつくろう】
・10分×3:3人組になって順番に「ためしに担ってみたいかも」をインタビュー
・10分:自分が「ためしに担ってみたいかも」なことを書き出してみよう
・15分:それぞれの「ためしに担ってみたいかも」を場に出してみよう
・10分:場に出てないけど「これも大事/必要じゃない?」を加えてみよう
・10分:機能や目的別に、部門をつくってみよう

※ 付箋2色(たとえば黄・青)を使います。

いきなり「やってみたいことを出し合おう!」と言ってもなかなか弾みがつかないことも多いので、まずはおしゃべりでほぐしていきましょう。
3人組になって、順番に1人に対して10分間ずつ他の2人が以下のお題をインタビューしていきます。

・普段、得意なこと・やってて楽しいこと
・この取り組みで大事にしたいこと
・この取り組みでためしに担ってみたいこと

なお「やってみたい」を引き出すにあたって、大きな問いを「ためしに担ってみたいかも」にしています。これは「やってみたい」と問うと個別の企画アイデアの方が出がちだったので「担ってみたい」に変換したのと、まずは雑に出してみてほしい(出したものを担わなくてもいい)ので「かも」を加えてより気軽な印象にしています。

インタビューで準備運動が済んだら次は個人ワークで10分間、自分がこのプロジェクトで「ためしに担ってみたいこと」を付箋(黄)に書き出していきます。1トピックにつき1枚で、後で参照できるように自身の名前も併記しておいてください。また、個人ワークの時間は喋らず相談せずで進めます。

そうしたら机を並べて大きめの場をつくって、全員の「ためしに担ってみたいこと」の付箋を場に出していきます。あとで一覧しやすいように近しいものや似ているものを寄せていってもらいます。

このとき、場の片隅に「パーキングエリア」を作っておきます。これは、自分の書いた付箋が思惑と違うところに寄せられてしまっていたり、どこに寄せようにもいまいちしっくりこなくて一旦保留したいときに、こちらに仮置きしておきます。

全員の「ためしに担ってみたいこと」が場に出揃ったら、場に出てないけど「これも大事/必要じゃない?」と思うことを付箋(青)に書き出して加えていきます。こちらは無記名でOKです。
並行して「やっぱりこれを担ってみたいかも」を付箋(黄)で加えたり、パーキングエリアのものを場に戻したりして、また近しいもの似ているものを寄せていきます。
また、プロジェクト全体のことというより個別の企画にあたりそうなものは別にしておいて、やりたい人がいれば「企画づくりのプロセス」に乗せていきます。

で、「やってみたい」と「やったほうがよさそう」が出揃ったら、機能や目的別にまとめて部門にしてみましょう。この段階である程度の分類がされていると思いますが、まとめるとラクになりそうだったり相乗効果を生みそうなものたちをさらに統合していきます。

一例までに、前回の渋谷ズンチャカ!の場合は以下のような分類になりました。

※ 実際は、人数などのバランスを見ながら、さらに統合させて最終的な部門を組成しました。

なお、部門組みをしていく際、通常あるべき機能が欠けていたり何かの機能が過剰だったりと"いびつ"になったとしても、まずは極力そのままの形でやれないかを模索してみます。
熱量のないところに強みはつくれないし、強いところを活かしあうことで弱いところを補いあえないか?
また、むしろその"いびつ"な偏りをこのプロジェクトの"色"とできないか?
たとえば付箋(青)の「これも大事/必要じゃない?」だけの分類が出来てしまった場合は、そのまま安易に部門を増やす前に、まずはその部門ナシで全体を成立させる方法がないかを考えてみてください(それを担ってみたい!というメンバーがいれば別ですが)。

こうして、それぞれの部門をつくったら、メンバー全員に仮でよいので担ってみたい部門を選んでもらいます。
部門選びの際、「やったことないけど、やりたい」も「やったことあるけど、もっとやりたい」もどっちも大歓迎です。せっかくなので、ためしにやってみる機会としてぜひ!

とはいえ「やってみたいこと」と言われても特段ないのよねーってこともあると思います。そんなときは以下のどれかをとっかかりにしてみてください。

・Will:やってみたいこと(≒意欲や興味が向かい、ワクワクすること)
・Should:やったほうがよさそうなこと(≒意欲が向いてるわけではないが、大事だと思うこと)
・Can:できること(≒意欲が向いてるわけではないが、可能なことや得意なこと)

やりたくないことは担わない方がいいですが、まずは誰かから求められて心が動いたことをためしに担ってみたり。意欲ってやり始めたら上がっていくものなので、起点はどこからでも面白くできると思います。

また、部門は全員"1つ"を選んでもらいます。
複数担おうとすると結局時間を割けなくなって中途半端な関わりになったり、部門の他のメンバーに予定合わせに手間を取らせがち。
とはいえ、その場では選びかねる人もいると思うので当面の間は「仮入部期間」としています(渋谷ズンチャカ!の場合は本番2ヶ月前まで)。それまでは異動も自由で、毎回の集まりの最後に異動希望を聞いています。

加えて、必ず"1つ"を担ってもらうのには、「次回も話せる最初のひとり」と早めに出会えるようにでもあります。
全員の前で臆せず話せる人ってなかなかに強心臓ですし、輪が大きいとなかなか発話の機会も回ってきません。なので、会話のきっかけが生まれやすくなるように、興味の近しい小さな輪を複数つくっています。


5つの切り口で、自分たちのチームを設計してみよう

さて、各部門チームが立ち上がったら、自分たちで自分たちのチームを設計していきます。次のステップで進めていきましょう。

【自分たちの部門を設計してみよう】
・ 5分:1.なんでまたこの部門を選んでみた?
・30分:2.この部門はどんな部門?
   └:3.この部門のみんなで目指したいことは?
・60分:4.この部門でやりたいことたちは?
・15分:5.この部門の楽しみって何になりそう?

※ A4コピー用紙と付箋2色(たとえば黄・桃)を使います。

まずは、喋らず相談せずの個人ワークで5分間、各自A4の紙に「1.なんでまたこの部門を選んでみた?」を書いてみてください。

次に、部門毎のメンバーで集まってそれぞれの「なんでまた」を見せ合いながら、「2.この部門はどんな部門?」と「3.この部門のみんなで目指したいことは?」を話し合っていきます。これらもそれぞれ別のA4の紙に書き残しておいてください。
また各部門の分科会に移る前に全体に向けて「迷ったら最初につくったスローガンに立ち返ってみて」とアナウンスしておきます。

「2.この部門はどんな部門?」は部門の目的として「我々は【_____】のために集まったチームです」の形で言葉にしてください。

「3.この部門のみんなで目指したいことは?」は部門で目指す目標として、プロジェクトを終えてこのチームみんなで振り返ってみたときに何が実現してたら「やったね!」ってよろこびあえそうか?を描いてください。複数あってもOKです。

これは効率的に取り組みを進めるためというよりも「チームで共に目指して取り組む」という体験そのものをより面白くするための意図がメインです。
そのため、チクセントミハイのフローを参考に、難しすぎても不安だけど簡単すぎても退屈なので「ちょっと背伸びするくらいのチャレンジングな目標を」とアナウンスしています。

また、目標ついてはあんまりに抽象的(たとえば「最高の仲間と伝説をつくる!」とか)だと、絵に描いた餅になるか、あとで「で、どうやろっか?」とそのつど解釈しなければならなくなるから大変です。
それに、もしも目指したものの届かなかくて一緒に悔しがれたなら、これまたかけがえない体験と思います。なので、取り組みそのものをより深く味わうためにも「うまくいった? / いかなかった?」を実感できそうな具体的なものを推奨しています。外から未達成を非難されるようなものではないので、自分たちが本気になれそうなものを目指してみてください。

目的と目標を形にしたら、それら念頭に置きながら実際に「4.この部門でやりたいことたちは?」を挙げ合い、いつ/何を/誰がを整理して編集していきます。

まずは、以下の「月別シート」に付箋(黄)で「やってみたいこと」を、この辺でやるといいかな?って月のシートに貼っていきます。これも1トピックにつき1枚で、自分がやりたいものがあれば記名しておいてください。

このとき、チームアップの際に部門の素となった付箋たちも月別シートに移せるものがあれば貼り替えていきます。サイズの大きなものは実現までの工程に分解して時系列に並べてみてください。

進めていく中で、もし並んだ付箋が目標達成のために「チームがやるべきこと」ばかりになってしまった場合は、より面白くするために「チームでやってみたいこと」の視点も入れてみてください。

それと、話に出たけど「やっぱやめとこう」や「いったん保留で」となった付箋たちは、月別シートの最後のページにある「やらないことシート」へ貼っておきます。
やらないことを決めるの本当に大事なので、やりたいことにちゃんと時間を使えるように優先順位付けと取捨選択はシビアにいきましょう。

なお、全体で集まる活動日については、都度決めるのではなく、具体的にやることが決まってなくても日程だけ先に決めておくと考えやすいです。また、もし当初から「この日にこれやらなきゃ」って自明なことがあれば、あらかじめ入れておくと計画の補助線になります。
その上で、全体の活動日とは別に分科会をやろう!となったら、付箋(桃)に「お題」と「日付(決めていれば)」を書いて月別シートに貼っておきます。

こうやって各部門で「これやりたいね」ってことたちを時系列に小さな単位でわかりやすくしておくと、関わり方を迷ってる人や新しく関わり始めた人たちが取っ掛かりを選びやすくなりますし、提案もしやすくなります。

最後にこれまでの設計を振り返りながら、今回のプロジェクトに取り組んでいく中での「5.この部門の楽しみって何になりそう?」をイメージしてみましょう。これもまた新しいA4用紙に書き残していきます。
この問いは、部門の取り組み全体を統合して、その先にある自分たちにとっての意味を見出すことに繋がります。人は「意味」と「目的」がわかれば自律化しやすくなるので、ぜひ言語化してみてください。
また、何かを目指すための「to do」だけではなく、どうありたいか?の「to be」の楽しさにも焦点を当ててみると、より共にする時間を味わいやすくなります。

これでいったん部門の設計は完了ですが、このタイミングでメンバーの中から部門長を決めてもらいます。
なお、仮入部期間中は部門長も転部OKです(引き継ぎはしてもらっていますが)。

それと、それぞれの切り口で書き記してきたA4用紙&付箋のメモたちを、あとから参照・編集しやすいように以下の「部門設計シート」に書き写しておきます。

※ Googleスプレッドシートのテンプレートはこちら

部門の設計にあたって、いきなりスプレットシートの均質なセルに閉じ込めてしまうと、ワクワクとか熱量とか拡がりまで漂白されてしまいがちなので、まずは余白だらけの白紙にやいのやいのと書き散らかしていくプロセスを設けています。

また、プロジェクトを進めていく中で「やりたいことリスト」(&「やらないことリスト」)は適宜、書き換えてください。
最初に描き切ることは出来ないし、気付きや出会いは進行形で来るので、計画は厳守しなくてOKです。
あくまで部門の取り組みを可視化して俯瞰できるようにすることが目的なので、必要に応じてどんどん変更していきましょう。

そして、ここから実際に各部門で取り組みを進めていくわけですが、有志主体のプロジェクトは個々の都合や忙しさによって、プロジェクト全員はもちろん、部門別の小さな輪だとしても足並みがバッチリ揃うのはけっこうな奇跡です。
なので、活動の冒頭に「いないメンバーの声を待ちすぎないでOK」と意識共有するようにしています。


「みんなでつくる」の罠

組織としてのひとつの理想は、分散しているそれぞれがフラットに自律し協調しながら、お互いの「やってみたい!担ってみたい!」だけで全体が成立することだと思います。

そのため、前段で組んだ部門チームは「機能別分業」ではないです。
プロジェクトの完遂に必要なプロセスはすべて全体の場に開き、それぞれ関わりたいメンバー全員で大枠を決めて、その上で担当分野に重心を置く各部門でディティールを詰めていきます。

また、部門の枠を越えた新規の取り組みについても挙手あれば自由に立ち上げられます。途中で"意志なき惰性"にならないように各取り組みのリーダー役は決めてもらいますが、リーダーは途中で変わってもいいですし、1人で立ち上げてもOKです。

全体の場で「やってみたいこと」を立ち上げたり「担ってみたいこと」を引き受けたメンバーは、それぞれがスローガンを解釈して自分(たち)で決めて進めていきます。
誰かが管理するわけではなく「どこまでやりたいか?」もそれぞれの主体者に任せます。つらくなったら止めてもいいです。

それに、アイデアが挙がったとしても主体を担いたい人がいなければ放置でOKです。心動かないものを引き受ける必要はありません。
実行の規模についても、設計ありきで人を集めるのではなく、やりたい!と集まった人数ありきで設計します。誰かに人がアサインされるわけではないので、人数を集めたかったらまずは仲間の心を動かすために何ができるかを考えます。

加えて、継続していくプロジェクトの場合は、ショートカットに使えそうなものは過去の事例を活用すればいいですが、自分たちで考えた方が手間は掛かるけど面白いと思った場合、非効率でも"車輪の再発明"をしたっていいです。
(前例踏襲って思考停止を生みがちだし、前例の"賞味期限切れ"もよくありますし)

渋谷ズンチャカ!の場合、「みんなでつくる」プロジェクトとして、このように「全体の場に開きつつ、それぞれの意志に重きを置く」運営を前提に設計しています。
「バラバラなものたちを同じひとつにまとめる」というより「バラバラなものたちがバラバラなまままとまる」、不揃いのまま協調するイメージです。
「みんなでつくる」と言うより「たくさんのわたしがつくる」と言った方が正確かもしれません。

ただ、この運営の形には落とし穴があります。
それは、意思決定が虫食い状態になりがちなこと。
時間がかかるだけならまだしも、宙ぶらりんのまま決めきれない場合も多々。
誰も興味が湧かないことは放置されるし、ただでさえ自分の考えを場に出すのに勇気がいるのに、もし"あつれき"を感じたら触れることすら避けてしまう。

ものごとは、決めないと進みません。
(次次回で「決め方ケーススタディ」をまとめます)

また、有志が担うプロジェクトでは、関わり方の濃淡を選べることが重要です。

なので、関わり方の"最も濃い方"として「誰も決められなくて宙に浮いているものを引き受ける部門」を、部門のチームアップの際にあわせて募ります。
この部門を、渋谷ズンチャカ!では「縁の下ズ」と呼んでいます。

縁の下ズは言わば「文化祭実行委員長ズ」。
このプロジェクトに、いちばん汗をかいて、いちばん意志を込める人たちです。
チームとプロジェクトの両方がうまくいくように、全体の方向性の舵を取り、皆が円滑に進められるようにすることが役割です。

渋谷ズンチャカ!は年1回開催で毎年継続していくプロジェクトですが、各年の縁の下ズは、掛ける時間と熱量があれば初年度の関わりでも全然OKです。
詳しい人より詳しくない人が舵を取った方が、対話と自律が生まれて認知の量が増えて、よりよい選択になりがちだったりもしますし。

なお、縁の下ズは決定権者ではないですし、指示命令する係でもないです。
アンカー役として最終的に宙に浮いてしまったものの意思決定は引き受けますが、浮かないに越したことはありません。なので、指し示す役ではなく、むしろ耳を傾ける役を担ってもらいます。

ただ、耳を傾けていく際、"弱者の権力"には注意してください。
あえて強調した言い方にしますが「私は弱者だから(どうせ届かないから)大きく要求していいし、(私の力なんて微弱すぎるので)なんとかするのはあなた方だ」といった声への共感が過剰だと、批評家ポジションを量産してしまいます。
「批判はするが関与はしない」がよしとされると、実行がないまま声だけが大きくなっていき、いないはずの多数派を幻視してしまう。そうすると"空気"が主体になってしまって、やがて活動体がいなくなる。
その声に本当に心が動いたのなら引き受ければいいですが、そうでないのなら"受託"ではなく"支援"をやってみてください。助け合いをしましょう。

それと、渋谷ズンチャカ!では毎年、縁の下ズの中からキャプテンを選出しています。
"キャプテンの仕事"として何かが決まっているわけではないので取り組み方は人それぞれ、みんな個性が全然違ってて面白いです。

2021の終了後に有志がつくってくれた内輪のZINEで歴代のキャプテンたちが振り返っているページと、

2022の終了時に2022と2021のキャプテンが振り返っているポッドキャストのリンクを貼っておきます。

縁の下ズの動きを具体的にイメージできると思うので、よかったらぜひ。


コミュニティ? アソシエーション?

関わり方の"薄い方"の話もしましょう。
基本「プロジェクトの実現」という目的を共にしているなら、どんなに関わり方が薄くても、まずはただ場を共にするだけで大歓迎です。
お互いに声掛けしやすい関係になれば「困った」「助けて」「ありがとう」と取り組みへの関わりも生まれてきますし、実際ピンチ(~だいたい本番直前に訪れる)のとき、淡い関わりだった面々が他律されなくとも発揮活躍して解決していく様を何度も目にしてきました。

ただ、関係性の醸成の前にまず役割があった方が「ここにいてもいいんだ」と安心する人もいると思います。
できるだけ、それぞれの「やってみたい・担ってみたい」が自律的に立ち上がってくるのを待ちたいですが、新しいメンバーで(まだ)あまり話さないタイプの場合は簡単な役割を提案してみるのもよいかと。
(乱発すると自律性を奪ってしまいますし、機会の奪い過ぎと抱え込みにご注意を)

しかし、担うことはどんなに小さくてもいいので、目的を共にする当事者の集まりであることが重要です。
、、プロジェクトを一緒に実現させることには興味がなくて、「単独で別でやる」とか「本番行けたら行く」とかではなく。

こうした活動への動機って、自己実現の他に「普段の仕事や学校とは別の関わりをつくりたい」というものも多いです。
ただ「つながり」や「居場所」って、そのものを"目的"とするとめちゃめちゃ難易度が高く、何かを共にした"結果"の副産物として描いた方が健康的になりやすいですし、実際に機能しやすいです。

ぼく、いまはそんなに構えずに使えるんですが、2015年頃は「コミュニティ」って言葉がバブル状態になってるなーと感じてて、ものによっては閉じてて声の大きい人が全部握ってたり、所属年数がそのままヒエラルキーになってたりなのに、なんだか「なんでもコミュニティが解決!」みたいな風潮に見えて、なんだかなーと思っていました。

※ 当時、よく使ってたスライド

そんな時、以下の連載を読んで、そうかコミュニティに感じたモヤモヤはもう少し解像度を上げて、元来の自然発生的な「コミュニティ」ではなく、目的を共有する「アソシエーション」として切り出して考えればいいのか。そして、アソシエーションの先にコミュニティが残っていくこともあるのか、と。

目的を共にしているのであれば、関わり方の濃淡や熱量の多寡はグラデーションがあって全然いいと思います。
ひとつの強い正解らしきものに皆が付き従うよりもわちゃわちゃと多様な方が、行き止まりを減らして道筋を増やしますし、速くはないですが息の長いチームになります。
その上で、淡い関わりでも歓迎されるし、汗をかいた分だけ報われる。そんなチームであれるように。

、、それに同じ夜空でも、都会の強い光にかき消されて明るい星しか見えない空より、街灯も何もないからこその多彩な星空の方がきれいでしょ。


暗中模索から再結束、本格稼働へ

こうして部門での活動が始まっていきますが、まずは新加入のメンバーが「次回も話せる最初のひとり」と「やってみたい・担ってみたい役割」と早めに出会えるように、全体での活動日に部門という"小さい輪"で毎回20分間の分科会タイムを設けます。
この分科会でやることのガイドラインは「部門設計シートとカレンダーを眺めながら、気になることをみんなで話してください」だけです。ここはメンバーの自律性に任せてみてください。会話する機会をつくることがいちばんの目的なので、単なる雑談になっても構いません。

で、ほとんどの場合、プロジェクトの前半期はそれぞれの考えがバラバラでぐちゃぐちゃしたり、メンバーが集まらなすぎてほとんど動きがなかったりと暗中模索することになると思います。
でも、それでOKです。
むしろ整いすぎていると、それぞれの自律性を奪ってしまいます。

チームビルディングの考え方で「タックマンモデル」というものがあります。
組織の成長は「Forming:形成期」→「Storming:混乱期」→「Norming:統一期」→「Performing:機能期」のプロセスを経ていくというもので、混乱期を避けずに早めに乗り越えることが重要とされています。

※ 出典はこちら

ちゃんと混乱期を起こし乗り越えていくために、仮入部期間の終わりに部門別「公開モヤモヤ共有会」を行います。流れは以下です。

【公開モヤモヤ共有会】
15分:部門メンバーの「モヤモヤや困りごとを話そうタイム」
15分:オーディエンスによる「感じたこと思ったことの共有タイム」

聴き役&進行役を担うメンバーには事前に以下を共有しておきます。

【心構え】
・当事者たちに話してもらうことがメイン(アドバイス・結論づけ・議論をしない)
 ※ 興味を表現するための、個人的な共感・感想を交えるのはあり
・当事者たちに寄り添う(感情や主観を否定しない)
・当事者たちが自由に話せるように(尋問・批判・説得をしない)

【振る舞い方】
・できるだけ「はい・いいえ」で答えにくい質問を
・注意深く聴こう(言葉以外の反応もよく見てみよう)
・当事者と同じ言葉を使おう

一番重視してほしいのは「わかった気にならない」こと。
わかることよりも、興味を持ち続けることが大事。

※ 渋谷ズンチャカ!では、聴き役をファシリテーター(=ぼくです)と縁の下ズが担っています。

まずは、当事者となる部門メンバーと聴き役でテーブルを囲みます。他の部門のメンバーはオーディエンスとして外側から対話を聴いておいてもらいます。
最初に全員に「この会で、個人的にどんなことが解消されるとうれしい?」を聴き、その上で順番に「いま何か心配なことやモヤモヤしてることある?」を聴いて対話を重ねていきます。
そして、聴き役は気になったことに「もっと教えて」と質問を重ねていきます。

次は、オーディエンスだったメンバーと聴き役(=ここでは進行を担います)でテーブルを囲み、今度は部門メンバーに外側から対話を聴いてもらいます。
オーディエンスには以下の"振る舞い方"を共有した上で、さっきの対話を聴いて感じたことや思ったことを話してもらいます。

【ここでみんなにやってほしい振る舞い方】
・それぞれが感じたことや思ったこと、心動かされたことを話す
・当事者たちの主観を尊重する(ネガティブなことは言わない)
・アドバイスしたくなったらアイデアの形で挙げる(解決策を決める・選ぶのは当事者たち)
・アイデアを説明しすぎない
・目線は話してる同士。外側の当事者に目線を向けない。

わかり合えなくていいので、お互いの主観を大切にしよう。
やりたいのは、いくつもの多様な視点(異なる主観)を場に並べていくこと。
(目指すのは、異なった意見が対立せずに共存している状態)

で、全部門の順番が終わったら各部門に分かれて、それぞれ改めて部門設計シートを囲みながら振り返り、これからの動き方を考えていきます。

なお、この「公開モヤモヤ共有会」は、「オープンダイアローグ」という対話実践の技法を参考にしました。ただ、あくまで"参考"なので、本家にご興味の方はこちらのガイドラインを参照してみてください。


さて、今回のお話はここまで。
次回は、チームの連絡・共有・相談のための「コミュニケーションツール」についてまとめてみます。

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