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ローカルプロジェクトのつくりかた②:スローガンづくり

当日の運営だけでなく全体の企画からボランティアが主体を担う、渋谷の真ん中でみんなでつくる音楽祭「渋谷ズンチャカ!」。
2014年の立ち上げから「どうやったら関わる人たちの"やりたいからやる"を増やせるかな?」と現場で重ねてきた試行錯誤が、ローカルプロジェクトづくりのショーケースになるんじゃないかと以下のトピックでまとめています。

今回は「スローガンづくり」について。
渋谷ズンチャカ!づくりの主体を担うボランティア(「チーム・ズンチャカ!」と呼んでいます)それぞれが自律的に意思決定しつつも協働できるように、自分たちでスローガンをつくった際のプロセスをまとめていきます。

スローガンづくりは合計3日間で行いました。
まず最初の2日は、定例の活動日に集まった全員で「渋谷ズンチャカ!がどんなお祭りになるといいか?」のアイデア出しを行い、その後は有志を募って定例とは別日で分科会を設け、皆から挙がったアイデアたちを材料にスローガンを文章化しました。


Day1:4つのテーマでそれぞれの思う渋谷ズンチャカ!を出し合ってみよう

まずは全員で「それぞれの思う渋谷ズンチャカ!の姿」を、以下の4つのテーマで順番に出し合いました。

  1. 渋谷ズンチャカ!の好きなところ・いいと思うところ・他にないユニークなところ

  2. こんな渋谷ズンチャカ!は嫌だ

  3. 理想の渋谷ズンチャカ!で見てみたい、気持ちのいい光景は?

  4. どんなことを大切にして、渋谷ズンチャカ!をつくっていきたい?

なお、1のテーマについて、今回は既に存在する取り組みだったので「渋谷ズンチャカ!の好きなところ・いいと思うところ・他にないユニークなところ」としましたが、これがもしも新規立ち上げ時だったら「渋谷ズンチャカ!をどんなお祭りにしていきたい?」と置きます。で、2〜4は同じテーマで進めます。

そして、各テーマそれぞれについて45分づつ、以下の手順でアイデア出しをしていきました。

・まずは1人で思いつくことを箇条書き(3分)
・3〜4人組になって話す(15分)
※話しながら箇条書きを追加
・別の3〜4人組になって話す(15分)
※話しながら箇条書きを追加
・またひとりで思いつくことを箇条書き(2分)
・書いた箇条書きたちを共有(10分)
※共有した人から休憩

お互いのアイデアの共有方法について、今回は緊急事態宣言中だったのでオンライン(Zoom)で「箇条書きをチャットで共有」としましたが、対面で集まって行う場合は「A5用紙(横)に1枚1トピックで書いて共有」でやっていました。


Day2:それぞれの思う渋谷ズンチャカ!について共感の可視化をしてみよう

2日目はまず、今回なんでまたスローガンをつくるのかの話をしました。
この取り組みに正解はない(≒正解はたくさんある)し、そもそも「渋谷ズンチャカ!」なんて世の中になかったもの。なので、あらかじめ決められた正解や細かなルールに沿うんじゃなくて、それぞれが理想とする「渋谷ズンチャカ!」を持ち寄って現在形を更新し続けていきたい。その際、各自で考えつつも、みんなでつくるための補助線としてスローガンを共有したい、と。

なお、スローガンは共有しても、「なんでまた渋谷ズンチャカ!づくりをやるのか?」のWhyはそれぞれでOK。借り物のWhyじゃ続かないので、動機は「まちにもっと余白を!」でも「友だち欲しー!」でもいいです。

そして、1日目に出し合った4つのテーマでの「それぞれの思う渋谷ズンチャカ!の姿」について順番に、スローガンをつくるにあたってそれぞれが「いいね」と思う・感じるもの各5つを選んで投票してもらいました。
(票数は人数やアイデアの数に応じて調整。少なければ3票とかにします)

で、各テーマにて1つ以上の「いいね」がついたものの抜粋が以下です。「いいね」が多いほど文字を大きくしています。


1.渋谷ズンチャカ!の好きなところ・いいと思うところ・他にないユニークなところ


2.こんな渋谷ズンチャカ!は嫌だ


3.理想の渋谷ズンチャカ!で見てみたい、気持ちのいい光景は?


4.どんなことを大切にして、渋谷ズンチャカ!をつくっていきたい?


この投票の目的は多数決ではなく、共感の可視化です。
アイデアすべてを満遍なく扱うよりも、情念の強いものに重きを置いた方が、より固有の差異が際立っていきます。
たとえば、今回「1. 渋谷ズンチャカ!の好きなところ・いいと思うところ・他にないユニークなところ」と「4. どんなことを大切にして、渋谷ズンチャカ!をつくっていきたい?」で挙がったすべてのアイデアで簡単なテキストマイニングをしてみたのがこちら。

そして、複数の「いいね」が付いたものだけを抜粋してテキストマイニングしたのがこちら。

並べてみると、後者の方が「らしさ」が強く出ていませんか?
なので、フラットにアイデア出しをした後に共感の可視化を挟むことで、愛着や納得の強さをあぶり出してから、次のステップに進めていきます。

ちなみに、Day1とDay2は同じ日に行ってもよいと思いますが、渋谷ズンチャカ!の場合、定例活動日について『すべての回に出席できなくても大丈夫!途中の日程からの参画も大歓迎』としていて、かつスローガンづくりを行った年度始めは毎回の新規メンバーの参入が多かったため、途中参入メンバーの関わりしろを広く取りたかったのと、共に考えるプロセスを多めにつくることによってメンバー同士を混ぜ合わせる機会としたかったので、2日間に渡っての展開としました。


Day3:ありたい渋谷ズンチャカ!の姿を元にスローガンにまとめてみよう

チーム・ズンチャカ!は関わり方の濃淡を選べればと、この後はスローガンの文章にするまでを一緒にやってみたい有志を募って分科会で行いました。

冒頭、集まったメンバーで「スローガンって誰にどう機能するといい?」という問いで話し合い、

そして、文章にまとめていくにあたって次のようにガイダンスしました。

こうした指針をつくるときには「これは自分の出したアイデアが元になってるな」とか「そうそう、こういうことが言いたかったんだよ」など、メンバー全員の愛着と納得の総量がより高いものになるといいです。
そのために、あくまで皆で出し合ったアイデアたちを材料にして成文していきましょう。もし元の材料に繋がりのない主張を新たに加えてしまうと「あいつらだけで決めたな」ってなってしまいます。

また、今回行うことは"要約"ではないです。
きれいに漂白されすぎると愛着や共感への取っ掛かりも抜け落ちてしまうので、パッと見の印象で分類するのではなく、なんでこの言葉に至ったか?の営みを想像しながらゴツゴツした生の情念の持つ引力をまずは感じてみてください。
カテゴリーに分けて満足するのではなく、似ているものを繋げてみて立ち上がってくるものを掬い上げていくアプローチです。
(「大グループ→小グループ」と仕分けしていくのではなく、「小グループ→大グループ」の順で繋げていく方がうまくいくと思います)

なので、それぞれのアイデアたちをしっかり味わいつつ、そこに自分が感じることを重ねあわせて言葉にして、振り返った未来に「やっぱコレだね!」って思える渋谷ズンチャカ!のスローガンを紡いでいきましょう。

さて、以上を踏まえて文章化を進めていきます。

まずは、Day2で複数の「いいね」がついたアイデアたちを抜粋して4テーマ分まとめて並列に並べ、改めてそれぞれが「いいね」したいものを1人最低5つ選んで、今度はその理由もふせんに書いて該当のアイデアに貼っていきます。理由が書けるならば5つより多くても構いません。

次に理由のふせん(元のアイデアにではなく)から「いいね」したいものを1人3つ選んで丸シールで投票して共感度を可視化します。

そして「いいね」が付いたものを抜き出して敲き台にして、

それぞれキーワード・キーセンテンスと感じるものを持ち寄って共有。
(このとき、ここまでのプロセスでこぼれちゃったけど、この材料も大事にしたい!って要素があれば追加)

で、スローガンとして成文しました。

、、実際は「てにをは」などの最終調整を、この後の定例活動日に全員で行って完成としました。


なお、もし継続していく取り組みの場合、スローガンづくりなどをやりすぎてしまうと、"ワークショップが得意な人"だけのプロジェクトになってしまいがちなので、毎年やるものでもないかなとも。
ただ、それぞれの頭の中をババーっと場に出し合ってみるのは、毎回のプロジェクトを始める際の意識合わせにはとても有効と思うので、状況を見ながら軽めに(Day1もしくはDay2までを)やってみるのもいいと思います。


さて、今回のお話はここまで。
次回は、企画慣れしていない人でもできる具体的な「企画づくりのプロセス」についてまとめてみます。

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