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ブランド構築とパフォーマンスマーケティング(上) - Havard Business Reviewからの学び⑤

パフォーマンスマーケティングとは、デジタルマーケティングの一つで、インプレッション、クリックなど広告主の期待する成果を上げた場合にのみ広告料金が発生する手法です。パフォーマンスマーケティングは短期的な売り上げの増加を目標とし実施することが多く、ブランディング戦略と時に矛盾することがあります。では、どのように、パフォーマンスマーケティングとブランディング戦略を両立させるのでしょうか?How Brand Building and Performance Marketing Can Work Together (Stengel, Lamberton and Kavaro, 2023)を紹介したいと思います。示唆に富む内容が多く、2回に分け記載したいと思います。

ブランド構築とパフォーマンスマーケティングの対立

過去20年間、パフォーマンスマーケティングが顧客とのつながりを作る主要な手法となってきました。企業は、ダイレクトメール、サーチエンジン、ソーシャルメディアなどデジタル広告枠を買いマーケティングキャンペーンを実施してきました。パフォーマンスマーケティングにより測定可能なROIが設定でき、ターゲット顧客に直接働きかけることが可能となり企業が積極的に使うようになってきています。その結果、多くの企業がブランド構築とパフォーマンスマーケティングのトレードオフで悩む事態が発生しています。
なぜなら、ブランド構築は長期的な投資が必要です。一方でパフォーマンスマーケティングを効果的に行えば即座に売り上げにつなげることができます。したがって、短期的な利益を重視しパフォーマンスマーケティングを行うと、ブランド構築と違う方向性に向かう可能性があります。しかし、どちらの戦略が良い悪いで争わせてもいいことはありません。そこで、企業はブランド構築を行いながら、パフォーマンスマーケティングで成果を出すことを目指していくべきです。

ブランド構築のための指標作り

ブランド構築は売上貢献にすぐにつながるものでもなく、財務的な数字に表れないため、ブランド構築にリソースを割くことに理解を得るのが難しい場合があります。パフォーマンスマーケティングはクリック数など成果が分かりやすく、必要性の判断もしやすいです。もし企業がブランド構築をしたいと考えリソースの検討をする場合、ブランド構築に対し的確な指標を作るべきです。もし、指標がなければ長期的なブランド構築の道のりの中で、説明責任を果たせず方向転換を強いられる可能性があります。
ブランドの指標作りに必要なポイントを挙げていきます。

1.ブランドのポジショニングの構築

ブランド構築の基本はブランドポジショニングです。成功しているブランドは名前を聞くだけで、そのブランドのよいところを想起させます。そのような状態となれば、マーケットシェアや価格交渉力などが上がり、持続的な成長につながります。ブランドのポジショニングには、
①ブランが提供したい価値
②ターゲット顧客が感じる感情(洗練された、かっこいい 等)
③機能として優れた点
④記憶に残る経験の提供
の4つの要素が必要です。そして4つの要素を考え、決定した自社のブランドのポジショニングとマネージメントの期待を測定するための指標を決定します。指標には、マーケティングの5P(Prodcut, Price, Place, People and Promotion)を使い、5Pの中で定量的に顧客の認知を定量的に測ることができる指標が良いです。

2.ブランドエクイティの測定

ブランディング活動のゴールはブランドエクイティの成長のためです。ブランでエクイティを測定する4つの要素は、
1. 親しみやすさ(Familiarity)
2. ブランドへのあこがれ(Regard)
3. 消費者がブランドを持つ意味(Meaning)
4. 独自性(Uniqueness)
です。顧客の意思決定の90%がこの4つの要素に影響されるようです。これら4つ要素を英語の頭文字を取りFRMUと呼びます。FRMUを測定する際は、自社ブランドに関し、製品を購入してくれている顧客だけではなく、製品を買わなかった顧客、全く興味を持たなかった顧客など幅を広げて測定することが大切です。

3.ブランドエクイティをパフォーマンスマーケターのKPIに設定

次に、ブランドエクイティのFRMUを継続的に測定していきます。仮にブランドエクイティのFRMUが低下している場合は、パフォーマンスマーケティングが悪影響を及ぼしていないか検証します。ブランドエクイティの測定指標を作り影響を見ることで、パフォーマンスマーケティングとブランド構築を両立することが可能となります。

4.ブランドと収益や株主価値の関連性を確立

最後に、FRMUと、収益や株主価値などの財務的指標とを連携させていきます。しかし、もし企業が長期間FRMUでブランドエクイティを測定していけば、財務的指標とつながりは自然と見ることができます。

ここまでの考察:

マーケティング戦略を作っていく中で、最後は実施する施策の検討を行います。例えば、インターネット広告やWebsiteなどをターゲットにいかにアプローチをするかを考えていきます。しかし、ブランディングの長期的な話とどのように整合性を取ればいいか疑問に思っていました。今回、パフォーマンスマーケティングが時にブランドを傷つけてしまう事があることを学びました。裏を返せば、ブランドを気にしたパフォーマンスマーケティングではいい成果が得られないと示唆しているかもしれません。ブランド構築と、ブランドを守りながら攻めたパフォーマンスマーケティングを行うには、ブランドエクイティを測定し、どこまで攻めていいかを測っていくことは有効ですね。そして、ブランドエクイティを作り上げ、企業価値を上げていくことがマーケティングの最大の魅力な気がします。
本論文の続きは、別の記事で掲載します。

Reference

How brand building and Performance Marketing Can Work together. Harvard Business Review. (2023, April). https://hbr.org/2023/05/how-brand-building-and-performance-marketing-can-work-together?autocomplete=true



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