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なりたて34歳。網走、男ひとり旅②

1日目はこちら。
https://note.mu/eye_like_it/n/n83cde3705b65

網走2日目。朝、起きる。

仕事を少しする。引きついできた仕事、とても大変そうだ(もはやヒトゴトでごめんなさい)。

そして、ホテルから歩いて、網走の道の駅へ向かう。レンタサイクルが目的だ。

なんとなくのプランとして、

昼前〜昼過ぎまで、レンタサイクル。能取岬を観に行く。そして、少し道の駅で休憩したら、道の駅から歩いて10分かからないくらいの桂台駅に行って、釧網本線に乗って、北浜駅で降りる。その北浜駅にある停車場というお店で何か食べたり、あと夕日とか観ようとかなんとか。そして、釧網本線か、もしくはバスで網走駅前のホテルに戻る。

みたいなことを考えていた。

道の駅に着いて、早速観光協会に行って、レンタサイクルをする。もちろん電動付き。坂道が結構きついらしい。でも、去年自転車で一周した沖縄の小浜島も起伏激しかったし大丈夫なはずだ。あんまり深く考えずに、ルートをしっかり確認して出発。

街中を抜けて、気づけば海がすぐそばに。波の音がしっかり聞こえる。

この道自体が、もはやいい景色。匂いはとりあえず昆布だった。

そうこうしているうちに、坂道、いや、山道が目の前に。

日陰になると結構寒い。でも動いてるから汗も出てる。景色は割と森だったり、開かれてるところは畑だったりするのに、時折、潮の匂いがする。昆布の匂いは薄くなってきた。軽く脳が混乱しそうだ。海なのか山なのかはっきりしてくれ。でも、それが岬というものなのかもしれない。

なんやかんや坂道を登り、能取岬の案内を見つける。そして、向かった先には。

絶景!

無意識に声が出る。ヤベェ。他の言葉言いたかった。でも、ヤベェしか言えなかった。情けない。

規模が大きい。北海道はでっかいどうって言ってしまう人の気持ちが初めてわかった気がした。

そして、能取岬でも仕事の電話。必死に自転車こいでるときに着信が来ていたので、折り返し。去年も小浜島で同じようなことしてたな。

景色をしっかり携帯カメラで収めたあと、教えてもらったルートに戻り、また自転車を漕ぐ。

アスファルトの道路なんだけど、まわりが本当に森とよくわかんない草と、とにかく不安でしかない光景が広がる。そうこうしていると、何の予備知識もないトンネルが現れた。後で知ったけど、全長1キロくらいの美岬トンネルというトンネルらしい。トンネルの入り口に節電中と書いてあったのを俺は見逃さなかった。そして、それが軽く恐怖を演出してくることにそのときは気づかなかった。

恐怖心が高まってきたけど、後戻りするわけにもいかず、トンネルの中に入る。まず、寒い。とにかく寒い。とにかく早くこのトンネルを抜けたい。その一心で自転車を漕ぐ。しけし、なかなか自然の光が見えてこない。すると、ただでさえ薄暗いのに、灯りが非常口灯レベルになった。やめてくれ。とにかく必死に足を動かす。どうやらその辺りだけだったらしい。とはいえとにかく自然の光が恋しい。

すると、人工ではない光のようなものが見えてきた。ゴールは近い、と思い、またスピードを上げる。光を浴びたい。一刻も早く光を浴びたい。

すると、、、、

トンネルを抜けたその先は、荒ぶったオホーツク海だった。凄まじい景色。海が荒ぶりすぎて少し飛沫が顔にかかる。能取岬とは全然違う光景だった。

そうしていくうちに、同じ水面のはずなのに静かになってきた。いつのまにかオホーツク海沿いではなく、能取湖沿いになっていた。

とにかく穏やか。湖畔のサイクリングってこんな感じなのか。めっちゃ穏やか。本当に穏やか。さっきの荒ぶったオホーツク海が遠い過去のよう。

しかし、漕いでも漕いでも道の駅がある網走市街地が見えてこない。全然見えてこない。でも、iPhoneで現在地確認すると、ちゃんとルート上にはいるようだ。

市街地までの景色が、今度は山になる。網走って海の街のはずじゃ、と思うくらい、山ばかり。森ばかり。上り坂に下り坂。もはや人生のよう。もう、この辺りは、無になって自転車を漕いでいた。とにかく、早く人の香りがするところに行きたい。人が恋しい。そんな感覚、かなり久しぶりだ。

すると、道路でよく見る、行き先とかが表示されてる青いでっかい看板。網走市街地って書いてある!人の匂いがした(なんか違う気もするけど、そのときは確かにそう思った)。

だんだん人の匂いが濃くなる。網走川沿いを進むと刑務所があった。

現在進行形の網走刑務所。まだ時間があることを確認して、橋を渡る。そして、受刑者が作ったものを売っているお店に寄った。

やっぱりというか、どうしてもというか、不思議な緊張感と、よくわからない落ち着いた雰囲気と、かすかに醸し出す張り詰めた空気と。せっかくだから何かを買おうと思って、バンダナを買う。

リアル刑務所を後にしながら、なんとなく考えていた。妙にこの街の懐が、なんとなく、深い気がしていた。刑務所があるというのは、一度失敗した人たちを受け入れてる街でもあるということ。

刑務所に行くときに渡ったあの橋は、鏡橋というらしく、昔の網走監獄のときにも同じように橋があって、橋の下を流れる網走川という清流に、この橋の向こう側(=出所後)に何のために渡るのかをちゃんと見つめ直せというような意味があるようで。厳しき優しさを感じる。

正直、確かに、あんな超自然を自転車で体感してきて、その最中に「ここに監獄作れば逃げ出す気にもなれないなぁ」なんて思っていた。確かにその一面もある。でも、なんだろうな。なんというか、社会で弾き出された人たちを受け止めてるというか、当事者からすれば受け止めてくれている、というか。なんかそれが救いな気もした。

ちなみに、網走駅には、「網走駅」という表札的なものがあって、それは縦なんだけど、それもね、出所して、網走を去るときに、「横道に逸れるな」って意味を込めて縦にしているとのこと。

うん、やっぱり、網走ってなんか優しい。

そうこう考えているうちに、道の駅に到着したわけでした。

ごめんなさい、なげぇ。

続く。

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