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関東ローム層

関東地方の台地や丘陵に広く堆積する火山灰層について解説いたします

1.関東ローム層
2.関東ローム層の意味 
①「関東」はどこまでを表すのか   
②「ローム」とは
③関東ローム」と「関東ローム層」      
3.関東ローム層と歴史

1.関東ローム層
関東ローム層とは、元々は関東地方の台地や丘陵に広く堆積する火山灰層のことです。

赤土と呼ばれる赤褐色の土層で、火山灰で構成されているため風化して粘土質になっているといわれています。

2.関東ローム層の意味

①「関東」はどこまでを表すのか
関東ローム層は、関東地方西側の富士山・箱根山・愛鷹山などの火山や、北側に当たる浅間山・榛名山・赤城山・男体山などの火山から関東平野に降った灰が風や水によって流されたりして出来てきたものです。


その降灰地域から都道府県で考えると神奈川・東京・千葉・埼玉・茨城くらいといえます、

広くみれば静岡・山梨・栃木・群馬も含まれるかもしれません。

②「ローム」とは
ローム(loam)とは、土壌区分の1つで、土壌に含まれる砂と粘土の割合を示す土の特性を示す言葉となっています。


砂土と粘土の中間で、砂の含有率が1/3以上の粘土質の土壌のことになります。

なお、ロームは単に土壌中の粗粒組成比率を示しているのであって、火山からの物質であるとか赤色である とかは全く関係ありません。 

③ 「関東ローム」と「関東ローム層」  
「関東ローム」はその土壌を示す名称で、そのロームで構成された地層のことを「関東ローム層」と呼びます。

地質学では沖積世(ちゅうせきせい)の中期から後期(約1万年~40万年前)に形成された地層と言われています。

たくさんの火山に囲まれている関東地方では、火山の噴火で巻き上げられた火山灰などが、風で遠くに吹き飛ばされ、それらが堆積し「関東ローム層」を作っていったと思われていました。

しかし、近年では火山灰のみではなく、風で運ばれた塵も多く含まれていることが分かっています。

これら塵には、火山の河口付近の土地や火山以外の土地から風で舞い上がったもの、また黄砂(こうさ)のように遠方の大陸からもたらされたものもあります。

3.関東ローム層と歴史

(岩宿遺跡 出典:Wikipedia)

①遺跡の発掘
関東ローム層にある遺跡で有名なのは、1946年民間考古学者の相沢忠洋(あいざわただひろ)によって発見された岩宿遺跡ですね。


太平洋戦争後くらいまで、日本列島には一万年以上前の石器文化、いわゆる縄文文化以前の先土器文化はないと考えられていました。

ところが、相沢の発見を元に関東ローム層の中を発掘したところ、多くの石器が出土し、日本の縄文以前の時代の先駆けの遺跡となったのです。

岩宿遺跡では、後期旧石器時代初頭(3万5000年以前)と後期旧石器時代後半(2万5000年前)の石器が見つかっています。

②荒れ地として 
徳川家康が江戸に来たことにより、関東地域が開拓されますが、この土壌は稲作には向いていませんでした。


歴史の中でここの土壌の話が出てくるのは、『享保の飢饉』の時になります。

飢饉によって食べ物が不足した際、荒れ地でも耕作できるサツマイモを栽培し、命をつないだ薩摩藩の噂をきいた江戸の農学者青木昆陽が、この江戸の土壌でも採れるサツマイモを研究し、関東各地に種芋の栽培を奨励したと言われています。

そのようなこともあり、埼玉の川越は今もサツマイモの名産地となっています。

4.関東ローム層の特徴

①農業との相性
一概には言えませんが「関東ローム層」は農業に適しているとはいえません。


火山灰の降り積もった土地なので、土地自体に植物の生育に必要な栄養分が少なく、また台地や高台が多いこともあって農業用水の確保も難しい為、特に稲作は厳しいと言われています。

同じく、九州のシラス台地も火山の影響を受けた土地ですが、こちらは火砕流などが堆積しているのでさらに悪条件であり、農地としては非常に厳しいと言われています。

薩摩でサツマイモが生まれ、関東に来たのは必然だったのかもしれません。

②畑作で有名
弱酸性の土地ではあっても、長い時間がたつと植物が生えるので、それが腐葉土となり徐々に栄養豊かな土地にもなっていくようですが、残念ながら関東ローム層は地球の長い歴史からみると、まだそのレベルではないです。ら

ただ、おもしろいことに通常「ローム」は粘土質のため、水はけが悪いはずなのですが、関東ローム層はロームでありながらも適度に砂がまじり、保水性も透水性もあるという矛盾する土壌性質を持つため、畑作には適していると言われています。

栃木のいちごや千葉のらっきょう、群馬のキャベツなどは有名です。

③地盤の強度
東京の地盤は液状化したりするのでもろいと勘違いしている人もいますが、これは江戸期以降の埋め立て地のことであり、本来の関東ローム層は粒子間の結束が強く、自然の形であれば非常に地耐力もある強固な地層とのことです。

ただし、この結束をほぐしてしまうと脆弱なものになってしまうので要注意です。

一度崩してしまった層は元の強さにはならないため、開発した土地であれば、その層はもろく地震にも強くはないと思われます。

④土壌改良  
家庭菜園などで、栽培に適した土壌にするため、色々な土を混ぜることがあります。

その際に使用される土で「赤玉土」というポピュラーなものがありますが、実はこれは関東ローム層の土をふるいにかけて乾燥させたものということです。

通気性・排水性・保水性に優れているこの土は、庭土に混ぜたりして非常に良く使われますが、こんなところにも関東ロームの土が利用されています。


以上

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