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同潤会アパート

近代集合住宅の先駆け 鉄筋コンクリート造の集合住宅アパート「同潤会アパート」について、解説いたします


〈目次〉

1.関東大震災後の復興を目的に建設
2.日本最初期のRC造共同住宅 
3.当時の最先端技術と住民のコミュニティの融合
4.同潤会アパートの事例紹介 
5.おわりに

1.関東大震災後の復興を目的に建設
同潤会のアパートは、新しい生活様式を提示した近代集合住宅でした。  
建設当時としては、珍しい鉄筋コンクリート造の建物に、狭いながらもガスや水道、水洗トイレを備えた賃貸住宅でした。

関東大震災後の住宅の復興を目的として、建設が
始まりました。
建設に関わったのは、震災後の義捐金(支援金)をもとに内務省の外郭団体として設立された財団法人同潤会です。

同潤会は、住宅不足を補うため震災後直ちに木造住宅の建設に着手し、その後の大正 15 年から10 年間に東京と横浜の16 箇所に耐震耐火のアパートメントを建設しました。

例えば、下町の罹災者への住宅供給を目的としたのが清砂通りアパートや柳島アパートです。一方、震災被害の少なかった山の手地域では、新たな都市生活者階層向けに新しい都市生活様式として供給された青山アパート代官山アパートが建設されました。

そのほか、都市居住をうたった三田アパート、上野下アパート鶯谷アパート、また、単身専用の虎ノ門アパートや大塚女子アパートのようなタイプもありました。昭和9年には当時東洋一といわれた江戸川アパートが建設され、このように場所により様々なタイプの同潤会アパートがありました。

2.日本最初期のRC造共同住宅
同潤会アパートは、電気やガス、水洗トイレを備えた鉄筋コンクリート造のアパートです。わが国においても近代的な集合住宅のさきがけとなるものでした。


その住宅としての特徴は、次のとおりです。代官山アパートを例に紹介します。

規模:世帯向けでも30 ㎡未満(現在の1DK)
仕様:水洗トイレ(各戸)をはじめ生活用具の全てを完備
建物:地震に安全な鉄筋コンクリート造
防火:不燃質の障壁を設け、出入口は防火壁
防犯:建具を堅固にする
その他設備:
・和洋の様式を自由に選択可能、水道・電気・ガスの完備、キッチン設置
・屋上に洗濯室と物干しを設置

3.当時の最先端技術と住民のコミュニティの融合
同潤会アパートの特徴は、前述のように各戸に水道・電気・ガスの完備など最新の設備を導入していましたが、そのほかに共同浴場や集会室などの共有スペースの設置もされ、住民同士のコミュニティづくりにも積極的に取り組み、工夫をこらしています。

4.同潤会アパートの事例紹介
現在のマンションの原型となった同潤会アパートのなかでも、現在もなお良い立地となるである場所にあった同潤会アパートを3つご紹介します。

■青山アパート
同潤会アパートのなかでも、一番有名なアパートと言えるでしょう。表参道のケヤキ並木に沿ったアイビーがつたう3階建て10棟の住棟のコンクリート造の建物でした。山の手アパートとして位置づけられ、「ハイカラな整備の卵色三階建てアパート」と宣伝されました。

三田アパート
三田アパートは、慶応大学の洋風建築の近くにスマートな文化住宅として登場した一棟建ての小さいながらもすっきりあか抜けたアパートでした。エントランスのアーチ上部に居室を施したり、表の街路部分は四階建て、裏側を三階とする街路と住棟の構成となっていました。

虎ノ門アパート
虎ノ門アパートは、オフィスとアパートの複合建築物でした。都心の超一等地に食堂や浴室を備えたエリートの独身男性の城と話題になりました。ウォールナットのメインエントランスの扉や、重厚な鉄製の手摺子の螺旋階段はまさにビジネスマンのスーツが似合う重厚な空間でした。

5.おわりに
同潤会アパートは社会史・文化的視点からも重要な価値を有する遺構です。その後のマンションは、同潤会アパートを参考にして成長してきました。
また、現代のマンションには薄れている住宅間のコミュニティなどは、学ぶべきものだと思います。


以上

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