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科学と詩の間。 2020.10.18

最近のドキュメンタリーで、経済学者M.マッツカート女史の提言を聞いた。「企業家としての国家」など、世界的に注目を浴びる気鋭の研究者だが、番組最後のコメントが最も印象に残っている。「これからは、科学者だけでなく、詩人の力も借りなければならない」。

同様のインパクトが、数ヵ月前にもあった。コロナ禍が世界を不安に陥れているとき、ドイツのメルケル首相のスピーチに、「芸術家は、我々の生命維持装置」とあった。だから我々は、彼らを守る必要があると続くのだが、その少し前、僕と友人たちで企画した学びのイベント「たびするシューレ」では、芸術の役割はまだ見えていないのではとの仮説を得た。
この話は、価格と価値の対比にも通じていく。数字で表される価格は、子どもでも理解ができる。一方、価値は抽象が含まれるので、つい茫洋となりがちで、敬遠されやすい。僕がずっと繰り返している、感覚復権と直観重視は、まさにここに焦点を当てたくて絞り出している視点でもある。歌を忘れたカナリアは、象牙の舟に銀の櫂、月夜の海に浮かべよう。