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米の話

突然だが諸君は米は何を使っているか。

米だ、米。rice。白米(玄米でもいい)。その銘柄、ブランドだ。諸君らは米の銘柄をどれほど気に掛けるだろうか。いやそれ以前に、一人暮らしで米を買わないし炊飯器も持っていないという人がたまにいるがあれはどうやって生活を成り立たせているのだろうか皆目わからない。話が逸れた。米の話である。拙者に言わせれば食事の本懐はいかに米を美味く食うかでありおかずの価値はどれだけ米を美味く食えるかによって決まる。この思想は昨今のやれ糖質オフだ糖質制限だという風潮のなかではいかんせん流行らない。前に行ったある焼き肉屋では肉は食べ放題なのに米が別料金で愕然としたことがある。話が逸れた。米の話である。米の品種改良というのは単に食味だけでなく耐寒耐暑性や病気耐性なども加味しながら幾千回もの試行錯誤の上に生み出されるものであるが、その中でも一番有名な品種と言えばやはりコシヒカリだろう。作付面積では40年以上ぶっちぎり一位の座を譲らず、甘味が強く大粒でもちもちふっくらと炊き上がる食味も圧倒的な人気を誇り、スーパーの米売り場に行けば必ずと言っていいほどコシヒカリが一等席に鎮座している。もはや米と言えばコシヒカリ、コシヒカリが日本の米の代表と言っても過言ではないだろう。ところで拙者はコシヒカリが嫌いである。いや別にコシヒカリが嫌いなのではない。正確には「美味しい米=コシヒカリみたいな米」という短絡的発想が嫌いなのである。だいたい米の品種というのは500以上もあるというのにどこの町のスーパーに行っても並んでいるのはコシヒカリコシヒカリコシヒカリ、たまに違うのがあればコシヒカリ子品種のあきたこまちにひとめぼれで同族経営の会社の如し。このせいでどこへ行ってももちもちふっくらした米に我々は包囲されている。少しばかり「美味い米食わせますよ」という顔をした店に行くと大抵魚沼産コシヒカリだのが出される。もちもちもちもちもちもちもちもち。

違うのだ!
拙者が好きなのは定食屋ででかいおひつからよそわれるあの固くて(芯が残っているのではない)ぱらついていて味が薄い、”あの米”なのである。

無論「定食屋の米」という銘柄は売っていない。しかし「固い米」はある。米の固さや粘りはアミロースとアミロペクチンの成分量によって決まる。

アミロースが少なければ米は柔らかくなるしアミロペクチンが多ければ粘りが強くなる(ちなみにコシヒカリのアミロース含有量は約16%、所謂タイ米は25~30%ほど、もち米の場合アミロースは0%である)。つまり固くてぱらついた米が食いたければ高アミロース低アミロペクチンの米を選べばいい。典型的なのはインディカ米(タイ米)だが、ほぼ日本のスーパーには並ばない。しかし日本の米にもアミロース量が高めの米はある。

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そこで拙者が目をつけたのが、宮城、秋田を中心に東北地方で栽培されている品種「萌えみのり」である。

かつて、コシヒカリと並び両雄として称された米が宮城にはあった。ササニシキである。ササニシキはあっさりとした食味でべたつかず粒離れが良い。このため寿司のシャリに最適であるとして長年愛用されていた。ところで最近の寿司屋ではやはり魚沼産コシヒカリなどを使うところが出てきたがあれもどういった料簡であろうか。話が逸れた。米の話である。そのササニシキであるが冷害によって打撃を受け衰退してしまったが、その代わりに台頭してきたのが冷害と倒伏に強いはえぬきという品種、そしてその子品種が萌えみのりである。萌えみのりも同様に倒伏と冷害に強く、また栽培難易度の高いササニシキと違い直播栽培(稲苗を植えるのではなく田に直接種籾を撒く方式)でも安定した収穫が可能で栽培が容易かつ低コストで、近年着実に勢力を伸ばしている品種である。そして萌えみのりのアミロース含有量はササニシキと同等の約20%で、粘りが少なく、味もあっさりしている。これだ。拙者が求めていたのはこの米だ。君に決めた!

というわけで購入してみた。5㎏。

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スーパーで普通に売っていることも(稀に)あるが通販で買っても2000円弱でそんなに高いものでもない。ちなみに萌えみのりの「萌え」は普通に草木が萌え出るほうの意味だがそれはそれとして「鹿角の萌えみのり」というCV茅原実里の少女がプリントされたブランドもある。

そして早速炊いたものがこちらである。

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見よこの粒立ちを!この一粒一粒の輪郭が明瞭な炊き上がり、口に入れればぱらりとほぐれちゃんと「米粒」を食べている食感がある。これこそ拙者の好きな固い米である。味もあっさりして癖がないので肉にも魚にも合う。

そして萌えみのりを入手したら絶対に外せない料理がある。炒飯である。炒飯の米をパラパラにするために諸君らは涙ぐましい創意工夫を繰り返してきたことと思う。やれ冷や飯を使えだの、米を洗えだの……しかしそんな手間はもう必要ない。最初からパラパラな米である萌えみのりなら炊き立てをそのまま入れるだけでパラパラな炒飯になるのは世の必然であろう。これがその動かぬ証拠である。

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火力の心もとないIHの場合より万全を期するなら先に米と卵を混ぜてから炒めるといい。まず失敗はしない。そしてこの米粒の存在感、食感の楽しさは他の米ではまず味わえない。ぜひ一度試してほしい。拙者に言わせれば炒飯を作るなら萌えみのりに限る。それから、ねぎはけちらずたくさん入れた方が美味い。これも世の必然である。

他にもスープカリー等さらっとしたカリーを作る場合も萌えみのりは有用である。鶏飯や猫まんま等汁かけ飯も米のでんぷんが汁に流出せずさらさらと食える。要するに「べたつかせたくない」メニューの場合、萌えみのりは有力な選択肢となる。

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そしてもちろん拙者のように固い米を愛好する人間なら普段使いの米としても重用できる。むしろ固い米派諸氏としては長期専属契約を結ぶのも一考に値する、つまるところ「美味い、固い米」であるところは拙者が保証しよう。萌えみのりが不向きなのは唯一、炊き込みご飯である。炊き込みご飯だけはある程度の「粘り」が必要不可欠であり、粘りがないとまとまらない。萌えみのりで炊き込みご飯をやると箸でもったはしからぽろぽろ崩れて食べにくくて仕方がない。水加減をうまく調整すれば作れるかもしれんが、正直なところ炊き込みご飯はもっと粘りが強く柔らかい他の銘柄でやったほうが美味くなると思う。例えば――コシヒカリとか。

要は個性と相性ということだ。

ここまで語ってきてあれだが、拙者がここまで萌えみのりの話をしてきたのは単に拙者自身が固い米が好きだからであり、これを読んだ諸君らが萌えみのりを買っても買わなくても構わないし諸君らがコシヒカリしか勝たんと仰るのならそれならそれでいい。ただ申し上げておきたいのは、米というものは実に多種多様であり、その品種、銘柄ごとに固さや粘りも様々であり、それぞれに長所と短所があり、その良さを活かせる使い道がある。全部の米を知る必要はないが、せめて自分がどういった米が好きなのか、一度意識して見てほしい。米の品種はたくさんあるので、どれでもいい、ではなく「この米がいい!」というものがきっと見つかるだろう。食の基本は米である。米に拘るようになれば、食の愉しみはいっそう深まるのではないかと思う。せっかくだから米にもっと興味を持とう。拙者が言いたかったのはつまり、そういうことである。米の話であった。


余談である

萌えみのりという人(米)(Vtuber)(アイドル)がいる。萌えみのりはすごく良い文章を書くのでおすすめである。

ところで萌えみのりの有志のファンが今、萌えみのりの応援広告を半蔵門線渋谷駅と丸ノ内線池袋駅の構内掲示に出している。

この広告は今日(7/18)まで掲示されているので、近くに行く人はよかったらちょっと見ていってほしい。また今日(7/18)からアニメイト福岡パルコとアニメイト名古屋パルコで応援広告のフライヤー配布、VtuberグッズショップV-MANIでの展示なども行われているので、そちらも機会があれば。

まあ急にそんなことを言われても諸君らは困るであろう。これは単に私が紹介したかっただけである。諸君らはこの記事を読んで米の品種萌えみのりのことを知る機会を得た。であるならこれも何かの縁だと思って萌えみのりという人(米)(Vtuber)(アイドル)のことも知っていただけると私としては嬉しい。

もっと萌えみのりのことを知りたくなった人はこちらのインタビュー記事を参照するとよい。

余談であった。


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