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「100年続くクラブのDNAを見せつけろ」2019.08.14 天皇杯 3回戦 川崎フロンターレ×ファジアーノ岡山 観戦記

この日は台風の影響により試合前から、そして試合時刻も激しい雨が降ったりやんだりということでボールが滑りやすいものの、芝に水がたまっている個所は無かったのではと思う。
そこはトメルケール住人ということで、パスの速さやそれを受ける技術はJ2とは違うなという当たり前の感想の中試合が始まった。

スタメン

この日のメンバーは岡山はリーグ戦とは大きくメンバーを入れ替えてきた。そして、川崎もSBの組み合わせはここ最近のリーグ戦では無い組み合わせとなった。全体的にメンバーを入れ替えてはいるものの、名前を聞くだけでテンションが上がるメンバーとなっていた。

【川崎-魅惑のパス回し】

試合は終始川崎がボールを持ち、岡山が守るという展開だった。
川崎は守田のサリーから降りてくる2列目、あるいはCBから2列目へ直接パスを出す形で前進させていた。
また、齋藤はトップのように裏抜けを狙う動き、家長はボールを受けに色々なところに顔を出していた。基本的に幅を取るのはSBの役割としており、両SBとも高い位置をとっていた。
ただあくまでSBは大外レーン、ハーフスペースは脇坂やSHが使うものという印象を受けた。

岡山の守備は前から行きたいものの、突破されかけると低い位置でブロックを敷き直すという陣形で迎え撃つ。
この日CBコンビを組んだ濱田と増田を中心にボールを回されても、サイドからのカットインにも「最後は中を固めるぞ」という守備を見せていた。
特に齋藤、馬渡のカットインに対してシュートコースは切っていた。ダミアンに対しても体をぶつけることで楽な態勢でシュートまで打たせなかった。

【岡山-シンプルイズベスト】

前述の通り川崎がボールを保持しながらSB、CH、SHの3人が流動的に動きながら岡山ゴール前で駆け引きを続けた。その際にペナルティーエリア付近での、SBからの中央への横パスをボランチがマイボールの状態で引っ掛けることができればカウンターが成立しかけていた。
岡山は守備時、SHが中央に寄ることでCHを監視していた。そして、CHの前でカットすることで武田拓は突破を試み、久保田はSBの裏を突くパスを供給していた。

そして多くはないものの、岡山が落ち着いてボールを持ちながらミドルゾーンに侵入するシーンもあった。ここでは、川崎は4-4のブロックで守備をするのだが、スライドの際にSHとCHの間が空き斜めのパスが通しやすい状況があった。

さらにSBがボールに食いつかせてその裏へ中野が抜ける形からマイナスのクロスなど意外とやれていたシーンもあった

そして後半開始直後、思わぬ形で試合が動き始めた。
前述の通り生まれたSHとCHの間のスペースへ斜めのパスを通したところから攻撃が始まった。中央で久保田が起点を作り逆サイドのペナ角で待ち構える赤嶺へ。タメを作ることで下口が上がる時間を作りそして速く低いクロス。久保田がニアで潰れたことにより、谷口はクリアできず、こぼれ球に中野が反応してゴールへ。
川崎守備陣をしっかりと攻略した形での得点と言っても過言ではないだろう。

その後も川崎が崩しながら、岡山は拾ったボールを2トップでカウンターを成立させる形でゴールを狙った。
赤嶺が中央に位置をとり、高い位置をとるSBの裏に中野が抜けることでチャンスは作ろうとしていたがそこはJ1でもトップクラスのCB。もはや反則級の速さと強さのジェジエウにより中野の突破はことごとく防がれてしまった。
ちなみに、後半ジェジエウによりPA内含めて何度か転がされていたが、いずれもノーファウルは妥当だろうという判定であった。

一方、川崎は家長が前半よりも自由に動きボールを触る回数が増えた。また知念を投入しサイドからのクロスに対して2枚起点を作る。さらに、阿部の投入からよりハーフスペースを使う動きが増えた。
美しいFKがなんやかんやでノーゴールとなったり、終盤のジェジエウ大作戦に対しても金山のファインセーブやDF陣を中心とした体を張った守備だったりで何とか0で抑え続けることで迎えた90分。
岡山も何とかサイドでボールをキープしながら時間を作ったもののアーリークロスから最終的にダミアンに決められ同点。
そして試合は延長戦へと突入した。
ここにきて体力と気力が限界に近づいていたのは岡山の方だっただろう。何とか力を振り絞るも力及ばずとなった。

【死闘の先に見えた景色とは】

岡山の選手たちは闘志を全面に出しながら戦い続けていた。
そして選手たちに呼応するようにスタジアムから歓声と拍手。ピッチで戦う選手達、大荒れの天気の中駆け付けたサポーターが一つになり勝利向けて戦い続けた120分はまさに岡山のスタイルを魅せ続けたものだったと思います。

対戦相手としては非常にやりづらいと言いますか。そういう雰囲気を岡山のサポーターがすごく出しますし、雰囲気自体、一体感というものがありますので。対戦相手はどのチームも苦しんでいるんじゃないかなと思いました。チームもすごく、全員がというか、選手全員の一体感みたいなものが、今日出ている選手、出ていない選手も何かそういう雰囲気を感じたので。すごくいいチームだなと思いました。                      -鬼木達監督コメントより

チームとして一つになるためにスタジアムから送る雰囲気。それをピッチで体現するかのような選手たちの前プレス、粘り強い守備。これらは岡山のスタイルとして自信を持って誇れるものだと思います。
リーグは終盤に向けて勢いをつけたい中で無得点、連敗と苦しいチーム状況の中で普段出場機会が無かったメンバー達による若手らしい躍動感。安定感をもたらし続け、戦い続けたGK、CB。
この試合によってファジアーノというチームが何を強みとして、どう戦っていくべきかが選手、サポーターそれぞれが再確認できた試合だと思います。岡山県サッカー協会の最高の運営のもと作られたこの日のスタジアムでの出来事はファジアーノ岡山に関わる全ての人たちにとって忘れられない一戦となることでしょう。

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