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お気に入りのコスメポーチ

今私が使っている化粧ポーチは、もう使い始めて4年くらいたつ。
ARTISAN&ARTISTという、主にカメラバッグやカメラアクセサリを作っているブランドのものだ。
学生時代、アルバイトをしていたカルチャスクールで仲の良かった社員さんが、私がやめるときにくださったものだ。

「私はカメラについては詳しくないんだけれど、調べたらこのブランドはカメラバッグのメーカだそうなので、ここのものを選んでみました、良かったら使ってね」
そんなメッセージが添えてあった。

カメラバッグのために培われた利便性や耐性、軽量性などの技術が、うまくこのコスメポーチに落とし込まれて、ものすごく使いやすい。しかも、いただいたのは宝石がたくさん散りばめられたような限定ものの柄だった。

4年ほど、会社でも休日のお出かけでも辺境の外国への旅行にも、毎日毎日持ち出しているのに、全くへたらない。
この手のものは、手に入れたばかりの頃は新しいものへの高揚感があるけれど、だんだん飽きてきたり、黒ずんできたりして、新しいものへ乗り換えてしまう。本来は使いつぶしの消耗品だろう。
なのにこれは、全くほつれも汚れもしない。内側は流石にアイシャドウなどのパウダーなどがついたりするが、時々ふいてあげれば問題ない。新しいものという高揚感は流石にもうないけれど、しみじみとした満足感がある。これが、またたまらない。

このポーチは持っていると本当によく周りの女の子に「可愛いね」「使いやすそう」と褒められる。私にとっては、ポーチそのものだけでなく、大好きだったその社員さんまで褒められた気がして、なお嬉しい。

彼女は40-50代くらいの小柄で、日本人にしては鼻の高い、おしゃれな大人の女性だった。魔法使いみたいなウェーブのグレイヘアが素敵で、時々シニヨンにしてキリッとアップにしているのもかっこよかった。バイトで暇な時間、他愛もないおしゃべりをしたり、その人が担当で持っていた講座の話を教えてくれたり、楽しい時間だった。2年半ほどお世話になってやめるとき、その人に会えなくなるのが一番寂しかった。

仲の良かった人、大好きだった人でも、離れてしまうとだんだん存在が薄れていって、いつの間にか思い出の中だけの人になってしまう。それが仕方のないことだとわかっていてはいるけれど、時々それが少しかなしい。
私にとって懐かしい、という気持ちは、どこか遠い存在になってしまったこと、もう二度と会えないのではないか、 ー本当は、会おうと思えばきっと会える。けれど、もう相手は私のことなんて覚えてなくて、たとえ覚えていても別にどうでもいい存在になっていて、あってもくれないんじゃないか…ー というほんのちょっとした寂しさが混じってる。

毎朝このポーチをみて、毎度彼女を思い出す、という訳ではないけれど、「ああ、使いやすいなぁ」「やっぱり素敵だわ」としみじみ思うたび、「素敵な人だったなぁ」と思い出す。一つ確かに存在しているものがあるだけで、なぜかまたいつか会えるんじゃないか、いや、またいつか会いに行こう、という期待と意思が持てるから、不思議だ。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!