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ファジアーノ岡山の2024シーズンを展望する


はじめに

 2024シーズンのJ2リーグも開幕間際じゃないか、ということではありますが、ファジアーノ岡山の2024シーズンを少し簡単に展望してみたい、そんな記事を書いてみたいと思います。
 クラブ全体の目標としては昨季と変わらず「J2の頂」ということですが、チームの長である木山監督は「自動昇格だろうが昇格プレーオフだろうが、何が何でもJ1リーグに昇格すること」を目標にしています。この2段構え的な目標設定は、今季のJ2リーグの流れを考えると特にアリなのかな、と個人的には思っています。

 ちなみに昨季の振り返り記事は下に載せています。昨季の戦い方は今季の戦い方に繋がるところも大いにあると思っています。

2024シーズンの編成について

 まずは2023シーズンオフ~2024シーズンインまでの選手の in out について。具体的には下の記事を参照していただきたいが、今季のメンバーが30人でスタートしたことを踏まえると、13人の選手の in はかなり大きく入れ替えたと言って良いだろう。

 チアゴアウベス・ムーク・坂本、櫻川・永井といった選手たちが退団したFW部門は総入れ替えになってしまったが、その他の部門のポジションにおいては昨季の主力メンバーのほとんどが契約更新やローン移籍→完全移籍移行、ローン移籍延長という形で残留し、その上で補強に成功している。そのため、前述したようにメンバーが大きく入れ替わったといってもガラガラポンという感じではなく、全体的には昨季のベースをほぼ残した上で補強を行うことができた。その結果、全体の選手層を厚くすることができたストーブリーグでの編成だったと言えるだろう。

 他所の昇格候補とされるであろうチームたちの編成を見ると、「何が何でもJ1昇格」という目標を掲げるならばもう一声補強が、特にアタッカーのところ(自ら仕掛けることができるタイプ)での補強があっても良かったかな、という部分はある。一度も昇格をしたことがないクラブなのだから、「何が何でも」というならばシーズン前に「昇格候補の有力チームの一つ」という格が欲しいところではあった。それでもこのクラブの規模を考えたら、「今できることは全てやったに限りなく近い」ストーブリーグであろう。

2024シーズンの戦い方について

 これらの記事から、今季は3-4-3(3-4-2-1)の基本フォーメーションからスタートしていくのだろうなということがまずは分かる。これを見ると一昨季のWGを置いた4-3-3(4-1-2-3)からのスタート、昨季の中盤を菱形にした4-4-2(4-◇-2)からのスタートと比較すると、今季のスタートはずいぶんとベーシック・オーソドックスという気もする。
 ただ、この3-4-3に関して、「1トップ2シャドー」というよりも「3トップ」というのを意識的に強調しているっぽいのを見ると、個人的には木山監督が「相手のボール出しに対する最初のプレッシャーを3枚でかけていきたい」というところから来ているのかなと推測している。それで言えば、一昨季の4-3-3や、昨季の4-◇-2においても相手へのプレッシャーは前線の3枚でスタートするようになっていたので、それは木山監督体制における一つの大きな柱、というよりも「一昨季から地続きになっている理想形」であるのかなと言える。

 ここからは、今季のファジアーノ岡山が3-4-3というフォーメーションをどのようなシステムとして運用していくのか、ひいては2024シーズンにおける戦い方がどうなっていくのかを少し考察していきたいと思う。

ボール保持

 まずは岡山がボールを持った時についての考察から。一昨季→昨季とメンバーを入れ替えながら、自分たちがボールを保持することに対して徐々に免疫を付けてきたということ、特に昨季は「痛みを伴いながらも自分たちのできることを増やしてきた」という試合内容における一定以上の手応えもあると思われるので、それを簡単に手放すことはないだろう。つまり「基本線は後方からのボール保持による前進を継続する」ものと予想する。CFとしての起用が予想されるグレイソン・ルカオ・太田といった選手たちはいずれも身長180cmをオーバーしてはいるが、どの選手も後方からのシンプルな放り込みにおけるターゲットマンというタイプではない。そういった最前線の編成からも、「バックラインからシンプルにロングボールを放り込む→CFが競り合う→シャドーやCHがそのセカンドボールを回収する」という前進手段がメインになるということはないだろう

 そのため、3枚のCBと2枚のCHをメインにハーフライン付近までボールを保持して前進させていく必要が出てくる。昨季は最終的に3-5-2が基本フォーメーションとなっていたので3枚のCBと3枚の中盤、つまり3CB+1アンカー+2IHの6枚がメインとなってボールを運んでいたが、今季はそこから1枚減ることになる。後述する「前線を5枚にして相手陣内を攻略したい」というところからすれば、なるべく3CB+2CHの5枚で組み立ててボールを運んで前進させていきたいのが理想の形であろう。現実としてはWB、つまりワイドの選手がサイドCBが詰まったところでの逃げ場になるだろう(これは昨季も変わらなかった)し、前線から1枚下りてきてヘルプに入るということがあるだろうが。

 ちなみにブローダーセンが加入したことで俄かに言われているGKのビルドアップ能力についてであるが、個人的には岡山でのGKのボール出しについては、昨季においても3CBの形が定型化した段階でGKの役割は近くのCBの選手に渡すだけというのが基本になっていたと思う(⇒当初の志向ではGKがCBの一部としても考えられていたように思う)ので、そこさえ大過なくできれば大丈夫な気がする。

 そして岡山がボールを持って相手陣内に入ってからの形としては、「3枚のアタッカー(1CF2シャドー)と2枚のワイド(2WB)による5枚の前線がオンボール・オフボールどちらでも斜めに動き合うことで相手の最終ラインを割っていく形」をメインにしていくのではないかと考察する。昨季は前線の動きで相手の最終ラインを割って、フリーでシュートを打つことができるような形が相手陣内深くまで入っていった回数の割にはあまりにも少なかったので、前線の5枚によって相手のBOX内に侵入する人数と意図的かつ能動的な動きを増やす、そこに自らボールを持って仕掛けていくことをミックスさせていきたいのではないだろうか。もちろんWBが大外からシンプルにクロスを上げる形は基本であると思うし(⇒大外のクロスにグレイソンという形は個人的にかなり期待している)、昨季の大事な積み上げである大外~内側をコンビネーションで崩してサイドを攻略する形を一切合切手放すということはないだろう。

 昨季の攻撃面で特に不足しているように感じられた「前線からの意思表示を持ったアクション」「受け手と出し手の関係性の擦り合わせ」をどう解決させるか。5トップ化させることで横のレーンを埋めやすい3-4-3というフォーメーションは、昨季見受けられた悪い意味での曖昧さを減らすきっかけになるかもしれない(⇔言い換えれば硬直化しやすいということでもあるが、そこは良し悪しである)。

ボール非保持

 次に岡山がボールを持たない時についての考察をしていく。敢えてこう表現するがこれまでのファジアーノ岡山での3-4-2-1(3-6-1)では、ボールを持たない時の形として、「相手に対してまず脅しのように前線3枚を走らせるが、そこでプレッシャーをかけて奪うというよりは5バックと中盤2枚とが帰陣する時間を作る。そこからシャドーも戻って5-4-1のブロックを敷いて守り、自陣でボールを回収する」というのが基本であったと思う。
 ただ今季はおそらくではあるがそれとは異なり、「前線3枚が相手のボール出しに対しての1stプレッシャーとなって、そこからボールサイドのWBを縦スライド、CHを横スライドさせて最終ラインを押し上げる」「高い位置で、できるだけ相手陣内深くでボールを奪う」形をしていきたいものと推測する。

 そう推測するのは、いくつかのキャンプでのTMの映像や選手のコメントからうかがえる、「3枚のCBが広く守る必要がある」というところから。5バックありきというよりはWBを押し出してプレッシャーに行かせて、CBとCHがより前のスペースやパスコースを潰すような守り方をしていきたいのだと思う。このやり方自体は昨季も一昨季もやっていないわけではないが、ここまで強調しているということはもっとその色を濃くしていきたいということなのだろう。

 こういう守り方をしていくならば、2CH+3CBのそれぞれのカバーリングの範囲の広さや相手のスペース・パスコースを潰し切る力あたりが言うまでもなく必要になってくる。加えて後ろから効果的なコーチングの声をどこまで出すことができるかどうかも重要。これ次第で、前線+WBに効果的なプレッシャーをかけさせることができるかどうか、CH-CB間で効果的なスライドができるかどうかがかかってくるように思う。

 もちろんこの3-4-3というフォーメーションの一つの保険でもある、5-4-1によるブロック守備を完全否定する必要はない。勝ち点3を取り切るための手段として手札にきちんと持っておきたい。

まとめ

 ここで書いた、ボール保持における「前線5枚による相手陣内への侵攻」とボール非保持における「前線5枚による相手の保持へのプレッシャー」とを両立することができれば、自然と攻→守、守→攻のトランジションも素早く回すことができるようになると思われる。そうなると上手く行くとしても、一人一人の特にオフボールでの動きの質と量の高いレベルでの両立が求められてくる。そうなると今季の補強の目玉でもあるGX8(ガブリエル・シャビエル)はどうだろうか。攻守両面のオフボールにおいても質はおそらく文句無しだが。

 自分たちが全体を高く押し上げたことによるカウンターを受ける形からの行ったり来たりはある程度許容する必要がありそう。ただ、間延びによる行ったり来たりはなるべく控えたい。やはり重要なのはCHとCBの発信力になってくるだろうか。中盤が後ろと前を繋げることが大事だし、前が後方を放って突っ走りすぎないことも大事。かといって後ろが前の動きにブレーキを掛けすぎないようにすることも大事。結局は全体の協働が大事ということなのでしょう。

開幕の予想スタメン

 いろいろな情報から多分こうなのかなと。これで行くならばポイントとなるのはやはりバックラインとCH。特にバックラインでいうと右CBの阿部のところ。柳(貴)をできるだけ高い位置に押し出すためにも、なるべく田上や藤田とともにボールを持って組み立てて前進させていく形をどこまで作っていけるか。前所属の血が蘇って簡単に前に蹴り出すということばかりになってしまうのは避けたい。組み立てのところでもそうだし、機動力と対人守備の両立というのを考えたら本山を右CBで使うというのも捨てがたいところだが。逆サイドの鈴木はできてもらわないと困る。ブローダーセンを楽にしてあげたいところである。

最後に

 2024シーズンのファジアーノ岡山のスタートは、本文でも書いたように現状ベストに近い立ち回り、編成ができたと思われるストーブリーグに始まり、その後のプレシーズンもある程度順調な準備と積み上げができたようであります。

 個人的にまずはここを達成して欲しい数字としては、「70得点45失点」。失点ペースは昨季を維持しつつ、得点ペースを大幅に増やしていくことになりますが、木山監督体制における「アクティブ」・「アグレッシブ」・「相手コートでプレーする」の集大成として達成したいところであります。勝ち点や順位は相手との兼ね合いがどうしても出てきますが、この数字が達成できれば少なくとも6位以内、「何が何でもJ1昇格」のまずは超えないといけないラインは突破できるのではないでしょうか。

 2024シーズンも色々なことが起こるでしょうが、全てを楽しむことができるようにしていきましょう。

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