2023シーズン、ファジアーノ岡山の展望

 早いもので、2023シーズンの明治安田生命J2リーグの開幕まで一週間を切りました。様々な過去最高記録を更新しましたが、J1リーグ昇格には届かなかった2022シーズンのファジアーノ岡山。そんな中、クラブ全体で「J2優勝、J1昇格」を意識する2023シーズンはどうなるのか、簡単にではありますが展望していこうという記事です。

2022年の戦い方を振り返る

 簡単に振り返ってみると、「ボールを前に進めて、高い位置でプレッシャーをかけて回収し、大外ワイドから攻め入る」、そんなことを志向していたのだと思う。カタールW杯でも得点を決めたオーストラリア代表FWのミッチェルデューク(今季は岡山から天空の城に行ってしまった)を主に最前線の起点とし、そこから多くの人数でプレッシャーをかけてなるべく高い位置でボールを回収する形で前進させていくのを主にやっていた。

 そのため木山監督は、多くの人数をプレッシャーに向かわせることができる4-3-3(4-1-2-3)で2022シーズンをスタートしていた。しかし、後方からボールを運ぶ形とプレッシャーをかけ切れなかった時のミドルゾーンでのスペース管理(アンカー周辺のスペース)が安定せず(この2点は密接にリンクしている)、不安定な内容の試合が多く、早い段階で4-2-3-1(4-2-1-3)に変更した。

 アンカー1枚からDHを2枚にしたことで、後方からのボール出しとミドルゾーンの管理に底固さが出てきて安定して勝ち点を獲得できるような試合内容は増えてきたのだが、この4-2-3-1は劣勢の展開や悪い意味で噛み合ってしまって動きの少ない展開から勝ち点3を取り切るには物足りない部分もあった。

 そこで木山監督は、左サイドで使われていた佐野航大と徳元悠平(徳元は青赤の天上界へと栄転)のポジションの高さを使い分けることで最終ラインの枚数を3⇔4⇔5枚に使い分けることができるようにする、3-5-2ベースの可変形式を導入。これによって前線2枚で起点を増やしつつ、3センターの中盤を維持することでミドルゾーンより高い位置でのプレッシャーの枚数と強度を落とさないようにすることができるようになり、最も当初の志向に寄った形で「木山監督の志向と現実と今いる選手のバランス」を見出だしたと言えるだろう。

 そんな中で勝ち点72、2022年のJ2リーグで3位に入ったチームをほぼ維持することに成功し、若手有望株のローン加入を主体にプラスアルファの肉付けを行う形となったオフを経ての2023シーズンはどういう戦い方を志向していくのか、次はそこを展望していきたい。オフシーズンの選手の動きは下の記事を参考されたい。

2023年の戦い方を展望する

 大まかには2022シーズンの志向からの上積みになると予想している。よりボールを前進させてプレッシャーをかける形を作りやすくするために、「後方からのボール出し、地上戦の安定」、この部分がその上積みの要素になるのではないかと思う。バックラインからミドルゾーンの中央部分を経由するような後方からのボール保持を昨季以上に向上させることで、「大外ワイドへの展開をよりスムーズにさせつつ」「相手ボールになった時のプレッシャーをかけるポジションをチーム全体でより無理なく取ることをできるようにする」ことをより志向するのではないか。

 そこで2023シーズン、新たに導入しようとしているとされているのが、中盤をダイヤモンド(ひし形)にした4-4-2(4-◇-2とか、4-1-2-1-2とかとも解釈できる)

 この中盤のダイヤモンドの考え方であるが、個人的には3センターの中盤+トップ下のアタッカーという考え方よりは、2枚のCHの縦関係に内側をスタートポジションにした2枚のSHという考え方に近いと考えている。
木山監督の頭の中を予想すると、
①昨季の佐野と徳元のような左サイドで見せた関係性を、左右どちらのサイドでも、SH-SBのユニットが誰になっても、佐野-徳元の時と同じように出せるようにしたい

②チアゴアウベスの有効活用、ゴール前での圧力を考えても2枚の前線は維持しておきたい、それに加えてミドルゾーンの中央を経由するパスコースを多く形成したい

③中盤でのパスコースを増やす、プレッシャーをかけるなら4-1-2-3(4-3-3)が理想ではあるが、このフォーメーションをするには大外ワイドでのWGの破壊力がどうしても弱い

という点から、2022シーズンの積み上げと変遷を考えてこの形を導入しようとしているのではないかと思う。

 以上が個人的に考えてみた、2023シーズンのファジアーノ岡山の戦い方の展望である。これを踏まえて2023シーズンのポイントはどこにあるのかを考えてみたい。

2023年のポイント

①SH-SBユニットによる内側と大外の使い分けをどう機能させるか

 SHとSBとで、横幅を取る選手と内側に入る選手のポジションのバランスがどうなるのか。大外の高い位置を取ってボールを受けたはいいが、そこで孤立して打開する策を打ち出せない形、逆に低い位置でボールが詰まってしまう形は避けたい。大外でボールを受けた時のインナーラップからの展開、逆に内側でボールを受けた時の大外へのクリーンな展開をSH-SBのユニットで出せる形をどれだけ作ることができるか。

 こういった形での展開を増やすことができれば、相手陣内深くにボールを運んだ時に、2トップを活かした大外ワイドからのクロス攻撃、そしてクロスを見せ金にした内側エリア、いわゆるニアゾーンを攻略する形での攻撃を増やすこともできるであろうし、相手陣内深くでのFKやCKを増やすことにも繋がってくるであろう。

 「どんな組み合わせでも」と前述はしたが、それでもより良い組み合わせはあると思うので、そこを早めに見出だして確立しておきたいところである。

②後方からのボール出しをどこまで安定して行うことができるようになるか

 前述したフォーメーションだと、ボールを保持した時に恐らくSBの左右どちらか1枚が2CBの補助CBとなって最終ラインに残留する形がメインになると思われる。ミドルゾーンの中央を経由して展開していく形を増やしたいことを考えると、その時に最終ラインがアンカー1枚と共同していかに相手の第一プレッシャーラインを越えるボール出しを安定して行うことができるかどうかは、極めて重要な要素になってくる。

 大外と内側を使い分けてボールを前進させていくこと、前述したポジションのバランスを考えても、大外ワイドにポジショニングする選手がなるべく下がらないようにしておきたい。そのためにも、最終ライン+アンカーによる安定したボール出しは必須になってくる。GKからの配球もより重要な要素になってくるだろう。

③高い位置からのプレッシャー、ミドルゾーンでのプレッシャーをかける時のポジションはどうなるか

 中盤ダイヤモンドの4-4-2と聞いて、個人的に一番気になったのがこの部分である。相手のボール出しに対して、ダイヤモンドを横に延ばしてダイヤモンドの頂点の選手+SHが前線の第一プレッシャーラインと共同してプレッシャーに行くのか、ダイヤモンドの頂点の選手が前線と共同して第一プレッシャーラインを形成して第二プレッシャーラインを3センター気味の中盤にするのか。

 そして高い位置からプレッシャーをかけたがボールを奪い切ることができなかった場合、中盤のダイヤモンドをどうするのか。ダイヤモンドを維持して3センター気味の4-3ブロック守備にするのか、それともダイヤモンドを潰してフラットな4-4ブロック守備にするのか。はたまた最初のプレッシャーをかける段階からダイヤモンドを潰してフラットな4-4-2の3ラインでプレッシャーをかけるのか。

 どの形も予想できるのだが、昨季を踏まえた上での積み上げを考えると、最初の高い位置からのプレッシャーは中盤のダイヤモンドを維持して前線2枚+ダイヤモンドの頂点がプレッシャーをかける形を取りつつ、ミドルゾーンでの守備はダイヤモンドを潰しての4-4-2のブロック守備を行う形になるのではないかと予想する。

 個人的には昨季見られた大きな課題点として「ミドルゾーンのプレッシャー強度」「最終ラインが押し上げるための中盤のフィルター強度」があると思っているので、どんなやり方にしてもこの部分をどう改善できているかにも注目したいところである。

開幕の予想スタメン

 今季の木山監督の志向、前述した3つのポイントを考えた時に、今のところ一番有力なのはこのスタメンなのかなと予想。この場合は左サイドは鈴木が補助CB気味に内側を取りつつ佐野が大外に、逆に右サイドは河野が大外を取って田中が内側に入る形がメインになると思われる。
 悩ましいのは、右SBに本山遥、アンカーに田部井諒、右SHに木村太哉を入れても良いのかなというところか。
 2022シーズンのチーム内得点王であるチアゴアウベスだが、個人的にはスタメンで使うというよりは、最高のジョーカーとしてベンチから投入する形にしておきたいところ。チアゴアウベスがベンチから出てくるというのは、相手にとっても強い圧力をかけることができそうなので。

最後に

 2023シーズンを戦うにあたって、チームだけでなくファジアーノ岡山というクラブ全体として「J2優勝、J1昇格」というのを目標に設定したというのは、J2リーグでのファジアーノ岡山の現状の立ち位置からして上のステージを目指すことを考えた時にとても重要なことだと思っている。「J1昇格でなくJ1自動昇格、J1自動昇格でなくJ2優勝」、そういった意識でクラブとチームの両輪を回していくことがとても重要なことなのではないか。

 そして2022シーズンに積み上げた20という勝利数、72という勝ち点、2022シーズンのベースの上に肉付けができたオフシーズンの振る舞いは、2023シーズンに「J2優勝」という大目標を掲げるのに十分に値すると思っている。

 「今までになく始まるのが楽しみで、かつ上手く行かなかった時が怖いと感じるような」シーズンインは初めてと言って良い。2023シーズンのファジアーノ岡山がどんな行く末を辿っていくのか、最高のエンドを迎えることができるように後押ししつつ、その道中を楽しんでいきたいところであります。


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