少し見頃は過ぎたが、雨風にも負けず、懸命にその美しさを保っている桜の木たちに、（あと2日、がんばれー）と心の中でエールを送りながら桜吹雪が舞う並木通りを歩く。ひらりんの絵手紙展が行われる会場へ顔を出すと、ひらりんやゆるりん、ヤミーまで忙しく動き回っている。
「あれっ？早いね！」
そう声をかけると、遅ーい！というゆるりんの声と共に雑巾が飛んできて、僕の顔に命中した。
「早くしないと時間になっちゃう！」
そう言って絵手紙や工作物を次々と飾り付けていくゆるりん達。特にひらりんは、自分の個展だけあって、かなり張り切って準備をしている。ひらりんに影響されて、ゆるりんとヤミーも自然と準備に熱が入っていく。
あと何分？大丈夫！私たちならできる！負けない！負けるもんか！そんなスポ根熱血ワードが飛び交う会場のなかでポツンと立ち尽くす僕。そんな僕の様子に気づいた3人が、（あいつ、何しているんだ？）
という顔を向けてきた。
「あのぉ、まさかとは思うけど、明日の絵手紙展を今日と勘違いして準備してたりしないよね？」
僕の発言に３人の動きが固まる。
重苦しい沈黙。
一瞬の後、
「な、な、な、なーに言っているんだ。俺様はリハーサルだって常に完璧を求めるのさ。ドゥユゥアンダスタンドゥ？」
「そうよね、私の大切な初めての絵手紙展だもの。入念にそれでいて大胆にね。」
「はははっ、嫌だなぁ。今日はエイプリルフールだよ。はははっ、嫌だなぁ」
3人は、すごい勢いでモゴモゴしだした。
まったく明後日の方角を眺めたりしている。そして、それとなく飾った絵手紙や工作を片付け出している。
僕は内心
（嘘ばっかり！）
と思いつつ
「なんだ、エイプリルフールかぁ。すっかり騙されたよ」
と優しい嘘をついて片付けに参加した。

～あとがき～
いよいよ、明日4月2日（日）11時～17時の間
僕たちの仲間、ひらりんの絵手紙展が千葉県松戸市のグリーンウィズというデイサービスの一画をお借りして開催されます。障害を持つ僕たちが、企画し実行する初めての個展です。至らないところだらけですが、僕たちが考えて辿り着いた１つの成果を、是非見に来て貰えたら嬉しいです。それでは、会場でお待ちしています。