【超短編小説】 エルト
下降して、横に移動する。
私を乗せた"それ"という物は目的なく、
上下に動いては並行移動した。
到達点は何もない。
誰かの指示で動いているというより、
その日の感覚を頼りにとりあえず動いているという印象である。
乗せられている側からすればひどく迷惑な訳だが、
アルファベットのLの字や片仮名のトに近い形で動いていることだけは分かった。
私はそれを「エルト」と名付けた。
エルトはどこへ行くのか。
そして、この世界から私は抜け出せるのだろうか。
突然、ガチャという何かが嵌った音がした。(完)