知の学びを創造する者

頭の中を整理する創作の場としてnoteを始めました。 頭に浮かんだこと、短編小説(作…

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頭の中を整理する創作の場としてnoteを始めました。 頭に浮かんだこと、短編小説(作品はフィクションです)などを書きたいと思います。

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【超短編小説】 消しゴム

俺は急いでいた。アカネが転校する。 今日は引っ越しの当日だった。 俺は坂道を走り、家の前に辿り着いた。 引っ越しのトラックが停まっている。 「ハアハア、間に合った」 ダンボール箱を抱えたアカネが玄関から出てきた。 「どうしたん?そんな慌てて」 「お前にさ、渡し、渡し忘れてたから」 俺はポケットから消しゴムを取り出した。 「それ、うちが貸した消しゴムやん。もう無くしたんかと思ってた」 「返そうと思ってて、引き出しに入れたままになってた」 「それを渡しに来た

    • 【ポエム】 静かに消える。

      消えた。 音も立てずに。 そこにあったものは、すぐに消える。 存在したのかさえ分からず。 静かで、 夢のように見えて、 白い紙には10行ぐらいの文字が並ぶ。 消えて、また新しいものが現れる。 理由なんか分からないだろう。 分からない時点で、終焉を迎える。 油性ペンより水性に近い。 一瞬にして、文字は消えた。 そしてまた、ペンは動く。(完)

      • 【超短編小説】 リセット

        俺は横断歩道で車にはねられたはずだったが、 「リセット」という女の声がした。 気が付くと、いつもの交差点にいた。 母さんは5年前に亡くなった。 母子家庭だった俺は、母さんがある日、用事もないのにどこかに出掛けて行くことがあった。 ご飯は用意してあり、「夕方には帰るから」と言ったきり、どこに行くのか何も教えてはくれなかった。 母さんが亡くなって以後、不思議なことが起きた。 それは不慮の事故にあっても無傷で生きていたということだ。 しばらくして、俺は雨の日に雷に打

        • 【ポエム】 海底に沈む世界

          起きている現実 それを取り巻くもの その渦中にいるもの 明日には変わってしまうかもしれない未来を 私たちは見過ごしているのかもしれない 照らされた明かりは、まぶしく その裏側にある影を 分かったふりして頷いた でも、そうじゃない そうじゃなかったのかもしれない 君が教えてくれた もう一度、時間をくれないか 考えてみるから 海底に沈む世界について(了)

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        【超短編小説】 消しゴム

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        • 閉じこもりの日々に別れが来るまで
          5本
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          いつもお読み頂き、ありがとうございます。超短編小説ももうすぐ100作目に近づいて来ました。 100作目に向け、また一つ、日々小説を考えたいと思います。

          いつもお読み頂き、ありがとうございます。超短編小説ももうすぐ100作目に近づいて来ました。 100作目に向け、また一つ、日々小説を考えたいと思います。

          【超短編小説】 エルト

          下降して、横に移動する。 私を乗せた"それ"という物は目的なく、 上下に動いては並行移動した。 到達点は何もない。 誰かの指示で動いているというより、 その日の感覚を頼りにとりあえず動いているという印象である。 乗せられている側からすればひどく迷惑な訳だが、 アルファベットのLの字や片仮名のトに近い形で動いていることだけは分かった。 私はそれを「エルト」と名付けた。 エルトはどこへ行くのか。 そして、この世界から私は抜け出せるのだろうか。 突然、ガチャと

          【超短編小説】 エルト

          【超短編小説】 桜でジャンプ

          「ウチらの記念。桜の前でジャンプしよう!」 桜が舞い散る4月、入学式のあの日。 同じ中学に入ったミナと校門にある桜の木の前で写真を撮った。 写真はひどくブレていたが、そこには笑顔の二人が映っていた。 3年後、卒業式。 私は、桜の木の前にいた。 ミナは生徒会長になり、クラスも2年生まで一緒だったが、なんとなく遠い存在になった。 校門の前で桜を眺めていると、ミナがこっちにやって来た。 私は「ミナ」と声をかける。 「どうしたん、こんなとこで」 「ミナ、覚えてる?

          【超短編小説】 桜でジャンプ

          【超短編小説】 GETS

          特急列車に乗っている人を視認できるほど、私の視力は良くない。 凄まじいスピードで通り過ぎる列車の中から、たった1人の人間を判別するなんてことは到底できるはずもなかった。 しかし、警察組織によって極秘に開発された「カメラ機能付き逃走対象者捜索用眼鏡(Glasses for Escape Target Search with camera function)通称:GETS(ゲッツ)」を用いれば、 どんなに速いスピードで走る乗り物であっても特定の人物を捉えることが出来る。

          【超短編小説】 GETS

          【超短編小説】 またひとつ

          「知りたいんだ、君のことが気になるから」 そう言ったものの、僕は何ら分かってはいなかった。 なぜなら、僕は君にはなれない。 どんなに君のことを分かろうとしても、 僕というフィルターを通してしか理解できないからだ。 それは、”解釈”という言葉で表現されるものと等しかった。 そう考えた時、僕は君のことを本当は理解できていないじゃないかと思った。 知ったかぶりをして本質は見えていないのかもしれない。 もし、そうだったとしたら、僕は君のことをいつまでも分かり合えないの

          【超短編小説】 またひとつ

          【超短編小説】 透明人間

          「もしも透明人間になったら、何をしますか?」という質問に思春期の頃の俺なら、邪な考えがいくつも浮かんでいたはずだ。 男子同士で盛り上がり、周りの女子からは《変態》と白い目で見られていたことだろう。 それがどうだろう。 30代半ばになった俺はそういうものにほとんど興味を示さなくなり、 「透明人間になったら豪華客船に乗って、世界中を旅してみたい」というフリーライダーに成り下がった。 そもそも語れるほどの恋愛経験などない。 合コンやマッチングアプリなどで話せるほどの武勇

          【超短編小説】 透明人間

          【超短編小説】 留守録

          「悲しいこともあるわ、生きていたらね」 母さんはそう言った。 「だってそうでしょ。今日も誰かが誰かを思う。涙が溢れることも。どうすることも出来ないことも、仕方がないことも」 「悔しいことも、不甲斐ないこともあるわ」 「そうやって何かを感じながら、また明日が来るのを待つしかないのよ。すぐには消え去らないことでも、誰もがどうにかやり過ごしているのよ」 「私はね、日常にあるそういう言い表せない何かと揺れ動きながら生きていたいと思っているの」 「誰かのために何かを犠牲にす

          【超短編小説】 留守録

          【超短編小説】 1分45秒後

          君が気付いた頃、僕は君の携帯に電話をかけるだろう。 何度も着信音が鳴り、そして、静かに音が止まるだろう。 そう、あの頃はまだ僕は君のことが好きだった。 僕が君に電話をかけて、君はだいたい1分45秒後にかけ直す。 その繰り返しだったし、それが楽しかった。 若さゆえの幸福と甘酸っぱい想いに満ち溢れていた。 でも、君はもうここにはいない。 随分と理性ばかり働いてしまった僕は君と一緒には居られなくなった。 着信音もだんだん鳴らなくなった。 別れる最後の日。 僕は君

          【超短編小説】 1分45秒後

          【長編小説】 閉じこもりの日々に別れが来る、そして再会の物語

          〈あらすじ〉 1999年12月末。自分の部屋から忽然と姿を消した当時高校2年生の青野優(あおの すぐる)は研究者の父が開発した時間基盤を使い、未来へとタイムスリップした。偉大な研究者であった父だったが研究所の爆発事故に巻き込まれ、2年前に他界。父が残した時間基盤で見える未来は7回までとなっており、時間基盤は2000年4月に記録が途絶えていた。 それから23年後の2023年。青野の担任であった私と弟の悟(30歳)によって海に漂流した時間基盤を発見し、残されていた年月日と海の近

          【長編小説】 閉じこもりの日々に別れが来る、そして再会の物語

          【超短編小説】 沙月さん その4

          「久しぶりね」 「ご無沙汰してます。沙月さん、こんな時間までどうしたんですか?」 「どうしたもないわ。商談がすぐに終わらなくて、気が付いたらこんな時間よ」 「大変でしたね」 「本当、商談を早送りできるリモコンとかないかしら」 「それ、良いですね。俺、部長に毎日使いますよ」 沙月さんはアハハと笑って、机の引き出しから何かを取り出した。 「あと、これ。はい」 沙月さんは僕に紙袋に入った包み紙を渡した。 「ありがとうございます、中身は何ですか?」 「ちょっと早い

          【超短編小説】 沙月さん その4

          【超短編小説】 ある小説家の話

          小生はただの凡人であった。 物書きになろうと志し、早15年が過ぎた頃か。 作品を書こうにも、直ぐには浮かばないもので仕方がない程、頭を使うのである。 同期に言わせれば「そんなものはスルリと書けてしまう」とのことであったが、 どのようにすれば、この難題に向き合えるのか猫の手も借りたい所であった。 難解な問題を解こうにも、思考停止の頭では回るものも回るまい。 考えようにも発想が浮かぶどころか、沼にはまってしまう。 部屋に四六時中居たが、下駄に履き替え、空気でも吸って

          【超短編小説】 ある小説家の話

          【超短編小説】 メロンパン

          私はメロンパンが好き。 それは、幼馴染のお母さんが経営しているパン屋で売っている。 「いらっしゃい、今日も来てくれたのね」とおばさんは温かく出迎えてくれた。 「メロンパン1つ」 私がおばさんとやりとりをしていると、あいつが店の奥から出てきた。 「また、メロンパン、買いに来たのかよ。うちのパンなんか買いに来んなよ」 あいつは私にそう言うと、おばさんはすぐに咎めた。 「コラ、お客さんに失礼でしょ。舞ちゃんはうちの常連さんなのよ」 「うっせーよ。同じ学校の女がパン買

          【超短編小説】 メロンパン