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魅了する男と世界で一番幸せな男【第1章】

(あらすじ)
葉山斗愛(高校2年)は、クラス変えで同じクラスになったハーフの男の子西薗莉音と仲良くなる。莉音のことを意識はじめるが、その気持ちは友達じゃなくてもっと深い好きで…斗愛は何度もこの気持ちに気づかないふりをするが、それも限界になる。ついに莉音を好きだと認めた。莉音と両思になると今度は莉音への独占欲が現れる。肩書きがない関係について卑屈になっていく。そんな時クラスの皆んなに2人が抱きしめてとったスマホの待ち受けを見られて、異様な目で見られる。莉音は、斗愛を守るため突然姿を消す。大人になっても莉音を忘れられなかい斗愛は、お店の人の起点で莉音と再会し、幸せをかみしめる。性別とか関係なく、人間を愛した話。


俺には今も忘れられない女の子がいる。
その時始めて恋をした。

女の子は俺と同じ5歳くらいで金髪で肌が白くお姫様みたいなスカートをはいていた。
俺がよく遊んでた丘の上にある木のブランコの所に座って泣いている。

俺は泣いている姿に目を奪われ、つい声をかけた。

「何で泣いているの?」

「こんな洋服着たくなかった。みんなが気持ち悪いって……仲間に入れてくれない」

「大丈夫だよ。似合ってるよ。可愛いよ?」

俺は、本当に思ったことを言った。
本当に一目見てお姫様だと思ったから。

女の子はびっくりした顔をして、俺の顔をじっとた。
そして、笑顔になった。
それから俺達は毎日遊ぶようになった。

ある日、女の子は泣きそうな顔をしていつもの場所にきた。訳をきいても何も言ってくれなくて、気になっていたけど、一緒に遊べるのが嬉しくて、いつものように俺は女の子と遊んだ。

夕暮れ時、いつものように「また明日」っていうと、女の子は泣いて「今日でもう終わり」って言った。

女の子が泣きそうな顔を1日していた意味がやっとわかった。俺も一緒に泣いた。

「ずっと好きでいてくれる?」
「ずっと好きだよ」

俺達泣きながら別れた。

後で考えると、俺はこの子の名前も住んでる場所も知らなかった。この子は俺達の街の子じゃなかった。

それから彼女とは会っていない。俺の幼い頃の淡い初恋。

***

また春がきた。高校になって2度目の春。
校庭の桜が少しずつ散り始めていた。

薄い桃色に染った花びらは少しの風で、踊らされるように舞い落ちる。
地面に落ちた花びらは風に吹かれくるくる転がる。

人も同じで出会い一つで、人生は簡単に影響をうけ、思いもよらぬほうに変わりゆく……

葉山斗愛はやまとうあは高校2年生になった。

学年が変わりクラス替えをした。
教室内を見回しす。1年の頃あまり仲良くしていなかった子ばかりだった。

ただ、目を引いたのは金髪の男だった。その男はハーフで西薗莉音にしそのりおんといい、1年の時から女子に人気があった。
だが、彼女を作らない男だった。

雰囲気は緩く、色素も薄い系で柔らかい感じがする男だった。気のせいかもしれないが、1年の時から俺とよく目がよくあう。だが一度も話したことはなかった。

ーーこのクラス外れかも……。

そう思った時だった。席替えのくじをひいて、俺の席の横はその金髪の莉音になる。

窓側の1番後ろの席の隣同士。莉音が窓側で俺がその横。席の移動をした。
とりあえず明るく莉音に挨拶をする。

「隣よろしく〜。俺……斗愛。莉音くんだよね?」

「名前よく知ってるね?嬉しい……。よろしく」

近くで顔を見て話したけど、莉音は本当に綺麗な顔をしていて、肌も白く透明感がある。男なのに俺はドキドキして顔が赤くなった。あの柔らかい話し方と雰囲気に飲み込まれそうだった。

ーーイケメンの破壊力怖い。俺は最高の笑顔で微笑み返したけど、負けた気がする。

そんな事を考えながら新しいクラスの初日を終えた。
帰りには彼女が俺のクラスまで迎えにきた。

「斗愛帰ろう〜。今日部活ないでしょ?あたし
5組だよ。斗愛と同じクラスになりたかった」

俺の彼女は学年1の美女と言われている椿菖蒲つばきあやめ、色白のロングヘアが似合うお嬢系。
半年前に彼女に告白されて付き合い始めた。

入学して女に何人も告白された。みんな断っていたが、特に好きな人はいなかったし、菖蒲が1番タイプだったのもあり、付き合い始めた。

今では、情もあるかもしれないが彼女の明るい性格も好きでそれなりにうまくいっている。皆んなからは学年一の美男美女なんてよく言われていた。

数日たつと俺は、莉音と仲良くなっていた。お互いを下の名前で呼び合い、ゲームの話しやテレビの話しで俺たちは盛り上がった。

授業でペアになる時はいつも莉音と組んだ。莉音は帰宅部だけど、運動神経がいい。俺はバスケ部だが、莉音はバスケもすごく上手くてバスケ部入部をすすめている。

「莉音……運動神経いいからバスケ部はいれよ。お前ならレギュラーとれるよ」

「バスケ部かあ……斗愛と一緒にいれる時間が増えるね……それはいいかもいしれないな〜。気が向いたら考えてみるよ……」

笑顔で莉音にかわされる。柔らかく柔らかく笑うあの笑顔に俺はまたドキリとして、恥ずかしくなった。

ーーイケメンが言う一言一言に恥ずかしくなったり動悸がしたりしてしまう俺やばい……

莉音は斗愛の顔を優しい瞳でじっと見つめる。
莉音に見つめられて斗愛が赤くなっていることも照れていることも莉音にはお見通しだろう。

斗愛は、いつも男らしく堂々としているが、莉音の前だといつものようにはいかず、見つめられるとソワソワしてしまう。

莉音と仲良くなり、前から不思議に思っていたことを聞いてみた。

「莉音彼女なんで作らないの?お前ならみんな彼女になってくれるだろ?」

莉音は俺の真剣な疑問を聞いて笑った。

「彼女は作らないていうか、好きな人しか付き合いたくない」

「お前好きな人いるのか?」

「ふふふ……どうだろ?いるかも?」

「何で疑問系なんだよ!」

莉音は笑ってごまかした。

「斗愛は、彼女のこと好きなの?」

莉音のこの質問に俺は何となくすぐに答えられなかった。

「好きだけど……。絶対秘密にして……。実は忘れられない子がいるんだよ。小さい時に遊んだ子で名前も知らなくて、金髪の可愛い女の子。俺の地元の丘のブランコの所で泣いてたんだ。その子と約束したんだ。ずっと好きでいるって」

莉音は目が点になり、固まる。

「斗愛……」

「そうだよな……やっぱ俺やばいよな?」

俺は、莉音なら俺の本当の気持ちを言っても引かないと思っていたけど、優しい莉音でも引いてしいまうくらい俺はやばいのかと焦った。

「いや……やばくはないと思うけど……」

「俺だって、今だに好きかどうかなんてわからないけど、約束したし……また会いたいんだ。会える確率なんてゼロに近いだろうけど……。会えたら奇跡」

俺は笑って誤魔化した。だが俺の本音だ。
あの子は、本当に眩しいくらい可愛かったし、その子の泣いている顔が忘れられない。

「斗愛……会えるかもしれないよ?」

「以外と莉音ロマンチックだな」

2人とも顔を見合わせ笑った。さっきより莉音も俺の気持ちを理解してくれたのだと感じた。

***

数日後、斗愛は、菖蒲にダブルデートしようと誘われて、莉音に声をかけた。駄目もとで声をかけたのに、莉音は笑って了承してくれた。

菖蒲の友達が莉音と仲良くしたかったらしく、その子を紹介する形で遊園地に行った。

4人で日曜日に遊園地集合する。それぞれみんな、おしゃれな服を着ていたが、莉音の私服姿がかっこよすぎて、俺達3人は莉音に目を奪われた。

莉音は笑顔で、自然に俺を褒める。

「斗愛の私服カッコイイね」

「お前の方がカッコイイよ」

俺の返答に莉音は真っ赤な顔をした。

とりあえず4人でジェットコースター系のアトラクションを片っ端から攻めた。
かなりのアトラクションに乗った。みんな楽しく過ごしていたが、もう帰宅時間も迫っていた。

何回もアトラクションに乗りすぎて、女子は休憩するといいだし、莉音と2人でアトラクション最後にジェットコースターに乗る事にした。

ジェットコースターが段々昇っていく、風で俺の髪が顔にかかる。

すると、莉音が俺の頬を長い指でゆっくり触る。
顔にかかった髪を元に戻してくれた。
莉音は、優しく微笑みかけた。

俺は動悸が莉音に聞こえそうなくらい大きくなる。

この動悸は、ジェットコースターにのっている胸の高鳴りだと言いきかせるが、そう思うとなおさら莉音を意識してしまう。

莉音が俺の頬を触った感触とその笑顔に、俺は真っ赤になってしまった。

それは莉音だって気がついているはずだ。
何だか恥ずかしくなって、莉音が座っている方と反対側を向いて、急に俺は何でもないことをとりあえず思いつくまま話した。

ーー何だ?莉音は男なのに莉音に触られて、この半端ない心音が鳴り、なんだか落ちつかない。莉音は男だ。男だ……。これじゃあ俺は、男が好きみたいじゃないか……。

なんとか2人きりのジェットコースターが終わり、女子の所まで歩いていく。俺は莉音のことを意識している自分を否定したくて、下を向いて莉音と少し距離を開けて歩いていた。

莉音は、俺の手をひっぱり自分の元に引き寄せる。肩をだき心配そうな顔をして顔を近づけ覗きこんだ。

「斗愛大丈夫?具合悪くなった?」

俺は目の前にある莉音の顔をみて、また胸の高鳴りは忙しくなる。もう俺は莉音の顔に釘付けで見入っていたしまった。

「斗愛……?」

「……。大丈夫」

莉音は俺の言葉を聞いて笑顔になり、再び俺達は歩きだす。俺は莉音に肩を組まれた。
莉音は耳元でさっきのジェットコースターの話しや今日の遊園地の感想を話してくれた。

俺は全く莉音の話しが入ってこない。

莉音に触れられている俺の肩には莉音の温もりと少しの重さがのり、耳元で話す莉音の吐息が話すたびにかけられる。莉音にもっとこのまま触られていたいと思ってしまった。

ーー俺はどうかしてしまった……。

俺がそんなことを考えている間に菖蒲達の所に到着した。

もう帰る時間になり、女子達の希望で最後に観覧車に乗ることになった。莉音と菖蒲の友達は、俺らカップルで乗るように気をつかってくれた。

俺は菖蒲と2人でゴンドラにのり、莉音達は別のゴンドラに乗った。

観覧車はゆっくりゆっくり周り遊園地が見渡せるくらいまで上まであがる。

俺は莉音に対しての名前がつけられないこの気持ちに悩み今日1日疲れていた。
やっと落ちつけると思い無言で窓の外を眺めていた。

菖蒲は、俺に突然キスをしてきた。
俺は予想外で目をぱちくりさせる。

「斗愛……楽しくなかった?ずっと上の空だよ?」

「楽しかったよ。ジェットコースターとか乗り物乗りすぎて疲れたから……」

「斗愛達は、乗りすぎだよ!笑」

2人で顔を見合わせ声を出し笑った。

莉音へのこんな気持ちで押しつぶされそうな自分のことなんて誰にも言えないし、自分自身も否定したいそんな気持ちだった。

ふと莉音達のゴンドラを窓から覗いた。

菖蒲の友達が、莉音にキスをしていた。莉音はキスをされていたが、その時俺と目があった。

俺も莉音も笑顔はなく、見つめあっていた。

莉音のキスを見た俺は、なんだか苦しくなる。そんな権利もないし苦しくなる意味もわからない。

帰りながら、ダブルデートを提案してきたのは俺達なんだから、莉音と菖蒲の友達が上手くいったら喜ばしいはずなのに俺は、心から喜ぶことができなかった。

その日は寝るまで、莉音とあの女のキスを思い出しては、胸が苦しめられ、莉音が俺に触れた胸の高鳴りの意味を考えると、認めたくない気持ちの名前が何度も頭をよぎる。

この日から俺は莉音を意識し始めた……

***

遊園地の後は、学校で特に莉音も俺もあの日のキスのことには触れなかった。
いつものように柔らかい空気が莉音の周りにはあっていつもの笑顔で笑いかけてくれる。

菖蒲に聞いた話しだが、ゴンドラで莉音にキスした女は、莉音に告白したらしい。だがすぐに振られたと言っていた。それを聞いて俺は少しホッとした。

遊園地の後から莉音と距離が少し近くなったように感じる。そして莉音はよく俺に触るようになった気がした。

肩や身体が触れたり、手を引っ張ったり、気のせいだと言われればそうかもしれない。俺が意識しているから敏感になっているかもしれない。

ただ、莉音に触られて嫌な気持ちなどなかった。

そんな時クラスで問題が起きた。

教室にBL の漫画が落ちていて担任に没収された。みんな漫画の内容がBL だったから騒ぎ出した。その落とした持ち主も手を挙げることができなくなるくらいだった。

「BL まぢ?俺はぜってー女がいい」
「え?本物このクラスにいるの?」

いろんな批判をみんなしていた。昔よりは差別はなくなってきているが、やはりまだまだ同性同士の性について社会ではすんなり理解してもらえないのが現状だ。

俺は黙ってみんなの声を聞いていた。俺は莉音に対して意識しはじめたばかりだったから、俺自身を否定されている気がして苦しかった。

ゆっくり莉音の顔を覗きみたら莉音は何も言わず、いつもの雰囲気とは違う。莉音の顔には色がなかった。

結局うちのクラスで、数日たっても、BL の本の持ち主もわからず、BL 批判だけがクラスの認識として残ってしまった。

***

季節は進み暑い夏が来た。
夏休みにはいり、俺は部活に明け暮れていた。
それなりに忙しかったが、なんだか面白くなかった。

夏休み中には莉音と全く会えなかった事が原因だと何となくわかっているが、認めたくないそんな気持ちだった。

段々莉音を意識し始めていたはずの俺は、会えない日が続くたび莉音への名前がつけられない想いが薄れていたので、このまま忘れていけばいいと思った。

菖蒲とデートをしてそのまま菖蒲を何度も抱いた。
その度に莉音を思い出して、俺は女が好きなんだと確認していた。

***
学校が始まり莉音を教室で久しぶりに見た。
俺は、莉音の姿を見ると今まで以上に鼓動が早くなり、授業中も莉音を盗み見るようになった。

ーーどうしても莉音のことが気になってしまう……

莉音はいつも通りの笑顔で俺に話しかけてくれる。夏休み前とは違い俺は、莉音に触れたい衝動にかられた。俺は莉音の肩に手を回し話しかける。

「莉音元気だった?夏休みなにしてたの?」

ーー俺はお前に会いたかった……

こんな想いがあることは深く胸にひそめさせ、莉音を意識しないようにふるまう。

「祖母の家がある海外に行って、家の手伝いさせられてた」

なんだかホッとした。誰のものでもない莉音。もちろん俺のものでもないが、綺麗な莉音のままな気がして嬉しかった。

夏休み明けのクラスは修学旅行について話題が一気に頂点に達していた。2泊3日の京都〜東京の旅。

俺は莉音と同じグループに分けられた。そして、2人部屋で俺と莉音の部屋になった。

俺は莉音と旅行に行けることが嬉しかった。俺の中で、莉音を想う気持ちは少しずつ漏れはじめていた。

もう自分自身も気がつかないうちに……

***

いよいよ楽しみにしていた修学旅行が始まった。

1日目の京都はグループで数カ所のチェックポイントの場所に行き、その後はみんな自由行動になる。
17時に宿舎に帰るという決まりだった。

金閣寺が最終チェックポイントだったが、建築物にもともと興味があった俺は始めてみる年代ものの建築物をみて、奥ゆかしさを感じ、古い良質なものに俺の心は衝撃をうけた。自分の悩みなんてちっぽけに感じるほど心震えた。

チェックポイントはここで終わりだったのでグループ内でもみんな自由行動になり莉音と2人になっていた。

莉音は、俺と歩幅を合わせて建築物をじっと見入っている俺の話しをいつものように聞いてくれていた。

途中で俺は夢中で話していた事がすごく恥ずかしくなった。莉音にやりたいこととか行きたいところがないか聞いた。

「俺……斗愛の話し聞いてて楽しいから特に行きたいところとかそういうのないけど、やりたいことならある……」

俺は莉音の話しを聞いて胸がドキドキしてきた。
冷静を演じて莉音に聞く。

「莉音は何がしたいの?」

「俺は、斗愛と一緒に沢山写真が撮りたい……」

俺は莉音が頬を赤らめて話すかわいいお願いが、たまらなくキュンときた。莉音に腕を回し耳もとで返事をする。

「あたりまえ!俺も沢山とりたい。莉音かわいい……」

無意識に莉音に俺の本音を漏らした。
旅の解放感や知り合いがいない2人きりの世界に俺は油断していた。

俺達は知らない人に写メを撮ってもらう。莉音は恥ずかしそうに遠慮がちに俺の横に並ぶ。俺はシャッターがきられる瞬間、莉音を後ろから抱き締めるように体制を変え笑顔を作った。

とってもらった写真の中の莉音はびっくりした顔をしていたが嬉しそうに微笑んでいた。俺も莉音もなぜだか頬が赤く2人とも嬉しそうだった。


部屋に帰り館内の温泉に入った。

莉音の裸を始めてみた。白い肌と鍛えられた身体に目を奪われる。
俺は、莉音の裸を目の前にだんだん恥ずかしくなった。

莉音は俺の裸をじっと見た。
「斗愛の裸……筋肉すごい。いい身体……なんかエッチだし……」

莉音にまじまじと見られ、身体の感想まで言われて俺は興奮していた。莉音の方がよっぽどえっちなフェロモンがでているように感じたから……。

でも、先に指摘されてしまうと、こちらが意識してしまって、こちらからはもう何も言えなかった。

「莉音のほうがいい身体だよ……」

俺は他の人に自分の赤くなっている顔が見られないように……。みんなに気がつかれないように隠した……。

2人とも温泉から部屋にもどった。
就寝まで自由時間だったが、菖蒲が部屋にきて散歩に行こうと誘われた。莉音は部屋にいるからと俺と菖蒲を送り出してくれた。

俺は菖蒲と一緒に旅館の庭園に向かう。菖蒲は俺にべったり腕を絡ませて、嬉しそうに今日のでき事を話す。
俺は相槌をうちながら、心の中は部屋に早く帰りたくてしょうがない。

菖蒲は俺にキスをせがんできたが何となくしたくなくて、外だからという理由にして、ホッペにキスを簡単にした。

菖蒲から夜中に部屋に来るように誘われたが俺は莉音のそばにいたかったから断った。菖蒲はブツブツ言っていたが、俺はとりあわなかった。

部屋に帰る途中、莉音が外に女子といた。かくれて覗いてみると、莉音はその女子に告白されている。

「莉音くん好きです。明日一緒に自由行動まわってくれませんか?」

「ごめんね。回る人決めてるし、俺好きな人いるから」

女子は悲しそうな顔をして去っていった。
俺も一緒に振られた気分になった。昼間、莉音にあんなにも俺は近づけていたと思っていたから。

でも莉音には好きな人がいる。なんだかんだで、俺が莉音に執着しているんだと思った。

莉音にばれないように莉音が帰ってから、俺は部屋に帰った。莉音は告白されたことを俺には言わなかった。

寝る前まで、莉音と俺は今日の出来事や明日の予定のことなどいろいろ話しをした。

莉音と過ごす時間は莉音の不思議な雰囲気に飲み込まれてしまって、俺は莉音を独占したくなる。

そう思うとどうしても今1番聞きたいことを聞いてみた。

「莉音……お前好きな人いるの?」

「いるよ。……」

「誰だよ?俺の知ってるやつ?」

「……。斗愛のこと好きっていったらどうする?」

「え?」

俺は、びっくりして鼓動が早くなり、顔が真っ赤になる。どう返事をしていいのか俺はわからず焦っていた。

莉音は俺の顔を見て俺の気持ちを見透かすようにずっと俺を観察している。

俺は、嬉しい気持ちと俺の決めきれない今の気持ちを莉音に見透かされているようで、何も言えない。

決めきれない。だから答えられない……。そんな困っている表情を見て莉音は笑った。

「大丈夫。みんなと同じ好きだよ。友達としてだから。冗談だから。斗愛、困らないで……。僕は斗愛と一緒にいれて嬉しいし幸せだから。困らせるつもりはないんだ」

莉音は笑っていたけど、少し困った悲しい顔を一瞬したのを俺はみてしまった。

互いのベットに気まずい雰囲気のまま横になる。

俺は真剣に莉音のこと菖蒲のこと、俺の気持ちを考えていた。答えなんてみつからないけど、ただ俺は莉音のことが好きだった。もうそれは隠せなかった。

俺達は旅の疲れもありいつのまにか眠っていた。

真夜中みんなが寝静まり、莉音が目を覚ます。
ゆっくり起きて、寝ている斗愛を見ていた。

「大好きでごめんね」
ゆっくり斗愛の頬にキスをする。
莉音はそのまま眠くなるまで斗愛の寝顔を見ていた。


2日目東京に移動しテーマパークで自由行動だった。昨日の気まずい雰囲気はもう莉音にはなく、普段どうりの柔らかい笑みを俺にする。

自由行動は莉音と菖蒲と菖蒲の友達と4人で一緒に回ることにしていた。出発する時にまた、女達が数人、莉音に一緒に回りたいと誘っていたが、莉音は全て断っていた。

断られる女たちの顔をみて、俺はなんだかちょと優越感になった。

ーー莉音は俺を選んでくれていると……

昨日の莉音は冗談だと言った。でも俺は莉音の昨日の一瞬見せた悲しい顔が忘れられない。

俺達は、水を浴びるアトラクションやかわいいキャラクターの店など沢山遊び回った。途中濡れすぎて寒くなったが、遊びに夢中でそんなことどうでもよかった。

東京のホテルに今日は宿泊予定だった。莉音とここでも2人部屋だった。楽しい旅行も明日帰るかと思うとまだまだ遊びたらない気持ちになっていた。

温泉にはいった後、なんだか身体が熱いのがなかなか弾かないことに気がついた。
莉音が突然俺のおでこに手をあてる。

「なんか……斗愛おかしくない?……!熱い?熱?」

「あ……だから熱いんだ。なんか少しさっきから熱いと思ってた。俺先生の部屋いくから、莉音うつらないように1人でここ使って」

俺は、部屋を出て行こうとして振り返った。すると、莉音に腕を掴まれた。

「駄目。薬持ってるから。ここにいて。俺が斗愛のこと看病するから……。駄目?」

莉音は俺の腕を引っ張り訴えかける。

「いいのか?うつるかもしれないぞ?」

「大丈夫。僕身体、丈夫だし、うつるようなことしないよ?」

俺はなんだか恥ずかしくなった。

ーーーうつるようなことってなんだ?

莉音といろんなことをする妄想をしてしまい俺はなんだか、熱さが倍増した。

それを見た莉音はめずらしく大きな声で笑ってた。

俺は早めに莉音に薬をもらって飲んだのがよかったのか高熱まではでなかった。莉音は俺のベットサイドにずっといてくれて、宣言どおり看病をしてくれた。

夜中になり目が覚めても莉音は俺の手を握ったまま、俺のベットによりかかって寝ていた。

俺が起きたら、莉音も起きた。

「大丈夫?辛くない?」

「だいぶん熱下がったと思う。ありがとう。莉音ももうベットで寝て。俺は大丈夫だから」

「だめ。俺は大丈夫だから。斗愛と一緒にいれる夜は今日で最後だし……」

「でもそのままじゃ莉音が風邪ひくから。俺の布団で一緒に寝る?」

冗談半分本気半分で言ってみた。

莉音は、びっくりした顔をして真っ赤な顔をしている。そして俺をじっと見つめて俺の心を読もうとしているみたいだった。

俺は、熱でぼっーとしていたのもあるが、もう自分の気持ちに正直になった。
とりつくろうことが熱のせいでもう面倒だったし、俺は正直になってみたかった。

熱のせいにしてまでも……。

莉音は、決心した様子で俺の目をみていう。

「いいの?斗愛のこと好きだから俺何するかわからないよ?大丈夫?」

俺を莉音は試してきた。

「いいよ。俺も好きだから……」

俺は逃げなかった。熱のせいにしている俺は、いつもの俺と違う。頭がぼーっとしているのもあるが、なんかあったらそれはそれでいいと思った。

莉音は、予想と違う俺の言葉と態度に笑っていた。

「斗愛……俺の負け……。何もしないから。一緒に寝ていい?」

「どうぞ」

自分の布団を斗愛は広げ莉音を招きいれる。
看病をしていた莉音の身体は冷えていた。

「莉音……すごい冷えてる……。冷たくて気持ちいい……」

そう言って俺は、思わず莉音の体を後ろから抱き締める。莉音は、肩を動かしびっくりして振り返る。
俺の顔のすぐ目の前に莉音の顔があって、俺の顔に莉音の匂いと吐息がかかる。

俺は無意識に莉緒の唇に自分の唇を触れさせた。
莉音はびっくりした顔をしたが、すぐに体勢をかえていつのまにか俺が下になり莉音は俺におおいかぶさる。いつもの莉音とは想像できないくらい男の顔だった。

莉音は俺の唇を奪う。

俺の口の中に舌を入れ俺の舌を執拗に撫で回す。俺は莉音に口の中を堪能され、息をするために少し唇を浮かそうとするが莉音は許してくれない。抱きしめる莉音の力も強くなっていく。
こんなキスは初めてだった。

俺は気持ち良すぎて段々意識が薄れていく……。

莉音は、斗愛が意識を離して驚き、斗愛の身体を揺さぶる。
ただ寝てしまっていることがわかって安心した。

寝ている斗愛を愛しい目で見ていた。
ゆっくり斗愛の頭を撫でる。

それから斗愛の横に寝て、両手で抱きしめて目を閉じる。

「ごめんね。嬉しすぎて加減できなかった。熱あったのに……」

莉音はそのまま斗愛の温もりを感じて抱きしめながら眠りについた。斗愛もまた無意識に莉音の温もりを求め身体を擦り寄る。

朝になり俺は、目を覚ますと莉音に抱きしめられていた。
熱も下がって体調は戻っていた。

俺は昨日のことをちゃんと覚えている。これから莉音にどんな顔をしたらいいのか?俺は抱きしめられたまま寝起きの頭を整理していた。

莉音が起きた。
「おはよう。熱下がった?大丈夫?」

莉音はいつものように柔らかい雰囲気で、心配した顔をして俺の顔を覗き込む。そして、抱きしめていた手を緩めて笑顔で俺の顔をみる。

俺は少し赤くなったが俺の心はもう決めていた。

ーーきっと俺がどうするのか莉音は試しているはず。俺の対応で莉音は昨日のことをあったことにするか、なかったことかにするんだろう。

俺は、心を決めた。莉音に笑顔で微笑み不意打ちでキスをして身体を離して起きた。
莉音はびっくりして呆然としていた。

「斗愛……昨日のことなかったことにしなくていいの?ちゃんと覚えてる?」

「覚えてるよ。キスしたこと覚えてていいよ。熱のせじゃないから」

俺は少し照れをかくすように素気ない態度になった。

莉音は、すぐに嬉しそうな顔をして、身体を起こしている俺を引っ張り抱きしめた。俺を抱きしめながら莉音からキスをする。

昨日と違って、俺は胸の高鳴りがうるさくて、すごく恥ずかしくなった。

するとドアが叩かれた。担任だった。俺はらはすぐに離れ、なんでもないようなそぶりをし、ドアを開けた。

「集合時間変更になったから早めに準備しとけよ。」

「「わかりました。」」

俺達は担任が去り顔を見合わせて笑った。

修学旅行も最終日はあっというまに終わった。

家に帰り、まだ旅行の余韻に浸りたくて、スマホに入っている沢山の写真の中の俺と莉音を見る。

写真の中の2人は、照れた顔で笑っている。それをみて俺は微笑む。

男と付き合ったことはないし、莉音と付き合うことにもなったわけでもないが、これから、俺はどうしたらいいのかを考えてみた。

俺がとりあえずやることは一つだけはすぐ浮かんだ。菖蒲とは別れることだ。

莉音にも菖蒲にも誠実に生きようと思った。

俺は、修学旅行でとった莉音を後ろから抱きしめてる写真を待ち受けにした。


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