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おいしいね~傑作物語

→『みんなのうた』から続く

<背景・詞>

『みんなのうた』のカップリング曲。

確か1993年~96年位のインタビューで桑田さんは「サザンは産業ロックの担い手としてやっていく」と語っていた記憶がある。

また、この曲の収録されたベストアルバム『HAPPY』の発売時1995年のインタビューで、こう語っている。

桑田佳祐
「(『HAPPY』は)それぞれに、とても攻撃的な曲順だと思うよ。1枚に新旧交えたっていうのは、昔の曲でも、そのまま今の時代にノスタルジーとしてじゃなくて持ってきたかったから。

たとえばディスク1の一発目は『マンピーのG★SPOT」』って決めていたし。そこから『おいしいね~傑作物語」』に続く。

言ってしまえば、この歌に『産業ロックの陽が昇る』って歌詞があるんだけど、結局、これってヤラしい商売してまっせ的な曲だから、こういうベスト盤にふさわしいと思って持ってきた。

本音と建前の裏腹をいったりするのが、すごく好きだったりするんですよ。
ベスト盤ってたくさん売れればうれしいし、でも、売れたらどうでもいいのかっていったらそうじゃないしね。ある程度、音楽的に攻撃的なものがいいかなと、いまの時代、濃いものじゃないとダメだから。

だから(『HAPPY』は)輪郭のハッキリした濃い曲ばかりを集めた。サザンっていうと一般的には湘南の歌ばかりを歌っていると思われているとしたら、それは違うし。男臭い部分とか濃い部分もあるんだってことをできるだけアピールしたかったんだよね。」(1995年)

上記のように、この曲は「ヤラしい商売してまっせ」と、自虐的に自己告発している曲である。

ポイントは歌詞の最後に出てくる
「This Song's About My Actions」
これに尽きると思う。

歌詞全般を通して、色々な暗喩を使いながらも、自分自身の事を歌っている。つまり、『みんなのうた』で復活しようとする状況、その過程を赤裸々に語っているわけで。「♪うつろに目覚めたその後で・・・」とか・・。

だから、この曲はジョンレノンの「HELP」と一緒なんだ、きっと。今、気が付いた!歌詞の細かい部分は、あとは皆さんの好きなようにご自由に感じ取ってください。

『みんなのうた』で「復活しまっせ!売れまっせ!」とやりつつも、カップリングでは、サラッと(でもないか?)裏事情を歌っているのである。見事な対比である。どちらが本音で、どちらが建前かは書くまでもないが・・。

しかし・・・・どんなアーティストでも、「セールス」と「作品のクオリティ」のパラドクスに悩まされている。「売れたい!」と「自分のやりたい事をやりたい!」は必ずしも一致するわけではなく、もちろん桑田佳祐も両者の責めぎあいで苦しんでいる。

桑田佳祐において、特に「サザンオールスターズ」としては、「売れる」ということが、命題になってるんですよ、きっと。

単なるスケベ心で「売れたい!」もあるだろうし、売れていなければ「サザンオールスターズ」としての存在意義はないだろうし、社会的影響力というものも考えてだろうし、(前に「ビクターの社員にもボーナス払わなきゃいけないしなあ」と冗談ぽく言っていたが、あながち、冗談ではないと思う。)

「売れる曲作り」というのも本音なんですよ。桑田さんにとっては。「趣味性に走ったマイナーな曲作り」これも本音なんですよ。この人の場合、表も本音、裏も本音、だから困っちゃう。非常にその辺のバランスは素晴らしいものを持っていますね。まあ、そこが長年に渡って第一線で売れ続けている理由なんでしょうが・・・・・。

最後に

桑田佳祐
「理屈は抜きにして、売れてなきゃイヤなんですよ。評価されなきゃイヤなんです。欲張りなんですよ。

ところが、今の日本では<芸能>をわかってない人間の居場所は絶対にない。哲学ばかりになっちゃうと、メジャーなレコード会社との契約は切られるハメになるんだと俺は思うんです。

はっきり言って、この国で踏ん張っていくんだったら、頑張って売れ続けなきゃ居場所はないんですよ。それはそれでものすごく寂しいことなんですけどね。」(1994年)

<1998.10.10記>


と、ここまでが1998年=25年前に書いた原稿なんですが・・。

しかし、今年になって tuesday breakheartさんが時系列を追って、この辺りの解説をしています。

これは素晴らしい!!もう、この方には敵わない。

他にもサザンを含め音楽関係の文章を執筆していますが、構成力に優れているから分かりやすい上に深い。みんな読め!!

"凄い才能が現れたなあ~"とジジイは畏怖を感じながらも目を細めている状態です。

<2023.08.24 追記>

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