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【子育てと食育】第41話 チャイとお香

前回の続き
急なカカさんからの質問に、思い当たる事がなく焦るオレ。カカさんの質問の意図は?はたして…

「やっぱり覚えてないかぁ」
「ん~?ん~~?え~?なんだっけ?いや、いくつか候補はあるんだけどな。ん~??」
「そんなに気にしないでも笑 覚えてないと思ってたし。」
話を聞くとどうやら、僕たちの初めてのデートの日だったらしい。

忘れていたわけじゃない。いや、正確な日にちは覚えていなかった。けど、これくらいの時期だったよなという事は覚えていたんだけど。急な質問の答えがまさかコレなんてことは思ってもいなかった。

でも、どうしてこんな事を言い出したんだろう。カカさんらしくない。

「なんかあった?あとで話す?」
ココちゃんの前で話すことでもないので、そう言った。
「え?うん。そうやね。そうするわ」

ココちゃんが寝てから話を聞くと、どうやら仕事で結構大きめのミスをして、仲間たちに迷惑をかけてしまったらしい。
もう色んな事を忘れて、どっかに行きたいなってなった時に、初めてのデートで行った海辺を思い出したんだって。

「そうやったんか」
今すぐ海にドライブに連れて行きたいけど、ココちゃん寝てるしなあ。どうしようかな。
「あ、ちょっと待ってて」
あるアイディアを思いついたので、カカさんが少しでも回復するようにサプライズを仕掛ける事にした。
「本でも読んで待っててよ こっち見たらあかんで」

あの最初のデートの日を思い返してみる。元町で食事した後、美味しいチャイが飲めるカフェに行った。
そのカフェではお香も炊いていて、最初のデートの緊張が和らいだ思い出がある。

チャイとお香の香りで、最初のデートを再現しようと考えたわけ。
香りを嗅いで、記憶を呼び起こすことを「プルースト効果」っていうんだっけ。

お香は確か、いくつかあったはず。お、これだ。この金木犀の香のやつにしよう。
よし!チャイを作るよ!

①鍋に水と生姜(すりおろし)とクローブ、カルダモン、シナモン、黒コショウを入れて軽く沸騰させる。
② そこにティーバッグを入れる。
③ミルクと砂糖を加えて
④煮立たせたら出来上がり!

「あれ?なんか良い香りがしてきたわ」
約束通り、こっちを見ないでカカさんが本を読みながら言った。

最初にお香を焚くとバレるので、ここで火をつけた。

「できたよー。こっちおいで」
「うわーチャイやー!うれしー!あの日、チャイ飲んだよね。美味しかったなあ。あ、このチャイも美味しい」
「お香も懐かしくない?」
「癒されるわ。うれしい」

カカさんは涙ぐんでいるように見えた。
今日はよっぽど辛かったんだろう。

仕事も家事も子育ても全力で取り組んで、擦り切れそうになりながらも、支えあって生きていきたい。
時には、逃げ出したくなることもあるだろうに、乗り越えながら親も成長していかないといけないんだろうな。

「今夜はもうちょっとゆっくりしよっか」
カカさんも今のこの時間が気に入ったみたい。

こうして、僕たちの2023年の夏は終わろうとしていた。


カカさんのお話はこちらから。カカさんは少しお休み中です。

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