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ファスティング(断食療法)の宿泊プランについて

すずらん颯ではファスティング(fasting)の宿泊プランがあります。
ファスティングとはいわゆる断食療法のことで、固形物の食事を一定期間摂らないことで体の中を大掃除し、人間本来の生命力を活発化させる療法です。

古来、断食は宗教的な儀式や精神的修行の一形式として行われてきました。
それが近年、病気の治療や健康増進として脚光を浴び、科学的な研究も盛んに行われるようになりました。
2016年、ノーベル生理学・医学賞を単独受賞した大隅良典博士 の「オートファジー(細胞の自食作用)の仕組みの解明」があります。
「オートファジー」は細胞の新陳代謝を高めて、若々しく元気な状態を保つ働きがあり、細胞一つ一つの老廃物や有害物質を除去し、免疫機能も高め、また、新たなタンパク質を合成するのでエネルギーの栄養源にもなる、という研究です。
そしてこの「オートファジー」を促すのがファスティング、断食療法なのです。

私たち現代人は三度の食事と間食によって、内臓は休むことなく働き続けています。
過重労働により内臓は疲弊しているのですが、それに気付く人は意外に少ないと実感します。
疲れた胃腸や肝臓などは働きが鈍くなり、栄養をしっかりと吸収できず、排泄もしっかりとなされないので宿便が溜まりがちになります。
結果的に腸内環境も悪化するため、免疫力が低下して体調不良になったり、病気にかかりやすくなります。
また、イライラや短気の原因にもなるでしょう。

ですので、断食で空腹の時間を作ることで内臓を休ませ、本来の働きを取り戻すのです。
消化吸収に忙しかった胃腸は、断食によって排泄活動に集中します。
体に不必要なものを外に出す、解毒が始まるのです。
栄養が足りなくなると、体内の余分な脂肪を分解し、分解酵素が増えて細胞傷害をもたらす活性酸素を除去していき、老化防止・病気予防や減量、そして血液の浄化や血流の改善が促されます。
更には、オートファジーという仕組み、つまりは細胞内の古くなったタンパク質が除去され、新しいものに作り変えられるという仕組みが発動されるのです。
つまり疲れた内臓に休みを与えることで、病気になり難い若々しい体になるのです。

当館では看護師の資格を持つ、元看護師の女将が主にサポートします。
私たちがファスティングプランを始めたきっかけや当館の事例を話そうと思います。

私たちは信州移住後、整体・エステサロンを開業し、施術者としての経験を積んできました。
整体の施術の中でお客様のお腹に異常(腹痛や手術後など)がない限り、お腹をマッサージします。
身体の中心にある、お腹をほぐすと気血やリンパの流れが促進されます。
もちろん、各人の体調により様々ですが、気の流れ、血流やリンパの流れが良くなると体調改善の効果が現れます。
私は忙しくしていると便秘になりがちで、酷い時は頭痛がします。
そんな時に、お腹のマッサージをしてもらうとお通じが良くなり、体が軽くなり頭もスッキリして体調が改善されるのです。
そして、「お腹を活性化する」ことを考えると、断食して、意識しなくても常日頃働いている内臓、特に腸を休めることに行きついたのです。
女将は美容と腸活促進のため日常的に、野菜や果実をそれに付いている天然の酵母で発酵させた発酵ジュース作っていましたので、少しでも安全に断食療法を行うために発酵ジュースを飲んで栄養を補う手法を取り入れました。
断食には水だけを飲む水断食というもっとも古典的な方法がありますが、酵素断食、つまり生体に必要な酵素を発酵ジュースで補給する断食療法です。
これは、水断食よりずっと効果的と考えます。
こうして女将と共にすずらん颯でファスティングのプログラムを始めたのです。

レモンの発酵ジュース

余談ですが実家では、母が庭木の梅で梅ジュースをよく作ってくれました。
材料は梅と砂糖、そして材料を手で混ぜるだけです。
最初はジュースで甘いのですが、発酵が進むと梅酒っぽくなります。
子供の頃、夏は梅ジュースが楽しみでした。
夏に思いっきり汗かいて遊んだ後の梅ジュースは疲れと喉の渇きが吹っ飛ぶ最高の飲み物でした。
みかんやりんごなどもよく絞って置いておきましたが、いつの間にか果汁の発酵が進んで天然の炭酸ジュースになりました。
発酵の威力は瓶を破裂させる程強いのです。
発酵作用により僅かにアルコールを含んだジュースは、子供の頃はどんなジュースより甘美で夢中になったものです。
また、発酵食品と言えば、私たちに身近な酢、梅干しや味噌があります。
自然発酵の食品は体内に入ると酸性からアルカリ性に変わり、体を整える効果があります。
化学合成酢や人工酸味料などはこの作用がなく、酸性のままなので体を酸性にする、体に良いものではないのです。

前置きが長くなりましたが、9月にファスティンで宿泊された、睡眠障害があり精神安定剤を手放せなかった83歳の男性のお客様の話をします。

このお客様は慢性便秘症で、怒りっぽく家族によくあたってしまうとのことで、ご家族からファスティングを勧められて参加されました。
内臓がほぼ完全に休まるのが一週間の断食との研究結果があり、当館では7泊8日のプログラムを組んでおります。
7泊8日での宿泊の初めと終り、準備食と回復食は農薬不使用米のお粥と味噌汁と簡単な野菜料理を食べていただきます。
断食中は発酵酵素ジュースと当館の自家菜園で摘んだお好みのハーブのハーブティーを飲んで頂き、そして周辺の湖や森林散策、読書、整体の施術を受けたりと、ゆったりとした時間を過ごして頂きました。
希望すれば体調に応じて観光などの外出も可能です。
宿泊中は睡眠剤や精神安定剤は使用せず、脈拍も安定しており表情も明るく落ち着いていました。
「食べないこと」自体が日常ではほとんどない体験なので、ファスティング中の最初の2日目までは食べたいという欲求が出てきますが、3日目あたりから体が慣れてきて食べることへの欲求は少なくなります。
また、ファスティングを始めて2~3日で頭痛が出る場合もあります。
私も初めてのファスティングは、頭痛がありましたが、更に2日程すると自然になくなりました。
頭痛には海塩の白湯や梅干茶を飲んでミネラルを補給すると改善されるケースがよくあります。
お客様は、倦怠感は少しあった様ですが頭痛はなく、比較的安定した健康状態でファスティングを終えました。
回復食前に、昆布だしと梅干で煮た大根を食べて頂きます。
大根の食物繊維と梅干のクエン酸により、腸に、働きを思い出してもらうのです。

ハーブ菜園でハーブを摘むMさん

7泊8日のプログラムを終えたMさんは「スッキリした。身体が軽い。不調を感じたらまた来るね。」と満面の笑顔で見えなくなるまで手を振って帰宅されました。
元気になって帰られる姿に、私たちスタッフも元気を頂きました。
Mさんはリンゴ農園を経営されており、先日採れたてのリンゴとリンゴジュースを頂いたのです。
「ファスティングしてから、お陰様で体調がいいよ。」と満面の笑みが今でも印象に残っています。
頂いたリンゴは甘い香りでとても美味しく、ご宿泊のお客様にも大好評でした。

Mさんのリンゴ農園のお話は、また別の機会です。


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