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真夜中。
音楽を止め、流す必要の無くなった数枚のCDを整える。松山千春と谷村新司のCD。
静かな病室で、外の強風の音を聞く。
でもその音は、眠るには窓ガラスが鳴る音が耳障りだし、ごうごうと空気を揺らす、なにか大きな気配に耐えられなくなって、イヤホンを耳に付けた。
風の音と気配を出来るだけ遮断する。
世武裕子が歌う「ユリイカ」を流し、ピアノの音と歌詞の波に乗ろうとする。
簡易ベッドに横になって、風の音と音楽を混ぜて。
眠り切れない意識の中、夜が明けるのを待つ。
いつ終わるかな 風が吹く度 生き急ぐ
いつ終わるかな 意味もないのに 生き急ぐ
時が震える
月が消えてく
君が何か言おうとしても
結局眠れずに朝が来て、ほぼほぼ終わっているけど、まとめた荷物の点検。
歯ブラシや洋服にそこにいた人を感じる。
1階のコンビニで朝食とコーヒーを買い、ぼーっとしながらお腹に入れる。
眠っていない自分の、定まらない意識。
ちゃんと家に帰るまで保てるだろうか。
父からの手紙には「あなたは順風満帆に見えたけど、やっぱり人生はそうもいかないようだね」なんて事が書いてあった。
相変わらず娘のことを見てない、勝手なことを書いている父親に呆れてしまう。
波瀾万丈な人生だけど、明らかに昔より笑ってるよ、娘。
この呆れる父への想い。
思い出として思い返したり、苛立ったりするのだろうけど、
現実としては今日限りだ。
荷物と、父と、長くて黒い色の車に乗って家へ帰る。
車内で目を瞑ると、頭の中はとても静かで、
何にも邪魔されないまま眠りについた。
いろいろ打ち合わせをし自分の住んでる街に戻ると、駅は夜空を見上げる人たちで賑わっていた。
そうか、今日は満月で皆既月食。
こんな日に旅立つなんてさ、
なんだかんだ、おいしいとこ持ってくよな。
平凡な日じゃ無いと忘れられないじゃん。
それでも、人の記憶はいつか薄れてしまう。
これは2年前を思い出して書いている、記憶の記録。
忘れてもいいように、時折思い出せるように。
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