神話・民話はなぜ伝わってきたのか

久しぶりに神話とか物語とかの話です。

今日のテーマは「神話・民話はなぜ伝わってきたのか」です。
「神話とは何か」「神話はなぜ生まれたのか」…というテーマは色々な考え方があるかと思います。

・人がなぜ生まれているのか、この世はなぜそうなっているか、を説明するため
・実際にあった歴史を、反映して伝えているため
・時の為政者(もしくは宗教)が、自らの正当性を主張するため
・人間の原始的な意識が、何らかの形で実現したものである

…などが良く聞かれる説でしょうか。

これらのうちいくつかは実際そうだろうかなと思います。
では、これらの神話や民話はなぜ、現在まで現在まで伝わってきているのでしょうか。僕の考えは比較的単純で、

・「(人に伝えたくなるような)面白い話である」
・「(人に伝えたくなるような)事実や現象の説明になっている」

です。
古い神話や民話を見ると、オチが「現象や、名前の由来」になっているものが多いです。これはギリシア神話などでもそうですし、アフリカの民話や日本の神話などでもそうです。例えば下記のような例ですね。

①アラクネという女性は機織りが得意だった。その自信故にアテーナ―(女神)と機織り対決をするが、アテーナ―はその出来栄えに激怒し、彼女は自縊死を遂げた。女神は彼女を蜘蛛に変えた。だから蜘蛛のことを「アラクネ」という。

②豊穣の神のデールメールの娘ペルセポネは、冥界の神ハデスにより冥界に連れ去られてしまう。母親が連れ戻したものの、冥府の食べ物を食べてしまったため、1年のうち1/3は冥府で過ごさなければならない。この出来事があってから、この世に「冬」ができた。

③神に「石」と「バナナ」のどちらを選ぶか聞かれた人間は、「バナナ」を選んだ。だから人間は死ぬようになった。

④かぐや姫は月に戻ることになり、帝に手紙と不死の薬を渡す。しかし帝はかぐや姫がいなくなることを悲嘆し、せっかくもらった不死の薬を火山で焼いてしまった。「不死(ふし)の薬」を焼いたから、この火山は「ふじさん」と呼ばれるようになり、今でも薬をやいた煙が火山から出ている。

⑤ブッシュマンがある日、精霊と出会う。精霊はもらったものを相手に与える力を持っていた。ブッシュマンは精霊にカモシカの肉を分け与えるが、たまたま精霊を見つけた白人は銃の鉛玉で精霊を打って殺す。だからブッシュマンは仲間同士で食べ物を分け合うが、白人はお互いに戦争で鉛玉を打ち合うのだ。

①②はギリシア神話、③は石バナナ神話と呼ばれるもの、④はかぐや姫の物語のオチ、⑤は諸星大二郎の漫画です(アフリカの民話より、と書いてあった気がするのでそういう民話があるのだろうと思います、違っていたら申し訳ない…)。かぐや姫や諸星大二郎は神話じゃないじゃん、という突っ込みはありつつ、神話や民話というのは結構こういうオチの話が多いです。ギリシア神話でも海の名前の由来や、火山が活動している理由がオチになっていたり、日本神話でも冥府にいったイザナミとイザナギの会話で「あなたの国の人を毎日千人ずつ殺すこととしましょう」「では私はこの国に毎日千五百人の人が産まれるようにしよう」というやりとりが「人間の生死の由来の説明」になっていたりします。

大昔の人は科学はもちろん知りません、しかし普段目にしていることで「なぜそうなっているんだろう」と疑問に思うことはいつの時代でも変わらなかったはずです。「なぜ1年に四季があるのか」「なぜ蜘蛛だけが糸で巣をつくるのか」「なぜ、人には生と死があるのか」…そういった疑問を神話や民話という話はうまく説明してくれています。

だからこそ、「知ってた?四季があるのって、こうだからなんだよ」「人が死ぬことになったのって、こんな理由があるんだよ」…といったように人から人へどんどん伝えられていったのではないでしょうか。世界の神話に似たような話が多いのも、ある程度これで説明できる気がします。(例えば人類の先祖が「『果物』や『花』などのアイテム」を選んだために、永遠の命を捨てて死ぬことになった、という話は上の「石バナナ神話」の他にも、「アダムとイブの楽園追放」「イワナガヒメとコノハヤサクヤヒメ」など無数のバリエーションがあります)

そしてある一定の期間ののち、そういった神話の「エピソード」と「オチ(事象の説明)」という2つの要素のうち、「エピソード」の部分だけが抜き出され、為政者の正当性の保証や、エンターテインメイントとして昇華・追加がされていったのではないかと個人的には思っています。

当たり前のことを長々と書いてしまいました。
今のエンターテインメントも明らかに神話から引き継いでいる要素もありますが、神話や民話の役割が時代によって少しずつ変わっていったのではないか、と想像すると面白いですね。

個人的には、「金」と「神話」というのはその役割の変遷がとても似ていると思っていますが、その話はまた別でできればと思います。








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