映画 借りぐらしのアリエッティ

ジブリですけど宮崎駿監督ではない作品。
心臓に病を抱えている人間の少年と小人の少女が心を通わせるお話。

登場人物の設定がわかりにくいので、主な人物設定をウィキペディアから引っ張っておきます。
【小人】
アリエッティ 主人公14歳
ポッド アリエッティのお父さん61歳
ホミリー アリエッティのお母さん52歳
【人間】
翔 生まれつき心臓を患っている少年12歳
  両親は離婚していて、母は海外赴任中。
貞子 屋敷の主人68歳。翔の祖母の妹(大叔母)
ハル 家政婦65歳

心臓の手術を控え、静養も兼ねて大叔母の家に滞在する翔。屋敷に来た日の昼間、小人のアリエッティを見かける。
その日はアリエッティにとって、初「借り」の日。小人達は人間に気付かれないように、食べ物や日用品を少しずつ「借り」て暮らしている。
夜、お父さんと一緒に出かけた「借り」で、お父さんの目の前で翔に見つかり、話しかけられてしまう。
小人の言い伝えでは人間に見つかったらその家からは引っ越さなければならないと言われているが、、、。
そんなあらすじ。



ここからネタバレしてます。



この作品も設定が凝ってますよね。
アリエッティの両親は随分高齢です。それだけ小人が出産し、無事子供を育てるというのが過酷なんだろうなというのは想像できますが、そんな事は作中で一切語られていません。

そして小人達に比べて、人間側の家族構成がややこしい。本編の台詞だけで翔達の家族関係を把握できた人、います?
人間社会の複雑さが滲み出ています。

翔の曽祖父がオーダーメイドしたドールハウス。
この作品のキーとなるアイテムです。
私が一番好きなシーンが、大叔母さんがミントの入ったミニチュアのティーポットを見つけて「まぁ!ハーブティを飲んだんだわ!」と喜んでいるところ。
この作品、ここが全てじゃない?と思うくらい。

あのドールハウスの豪華さに、曽祖父の想いの強さを感じます。もしかしたら曽祖父は翔のように小人とのふれ合いがあったのかもしれません。
そして小人のことを探さずに待ち続ける大叔母さん。会ってみたい、見てみたい。でも小人達の生活を邪魔したくない。
家の軒先にできたツバメの巣を見守るような、ドールハウスを使ってくれたらいいな。という慎ましい優しさ。父娘揃って素敵ですよね。

翔も大叔母の想いを聞いて、キッチン大改造に踏み切ってしまったのだと思います。

話は逸れますが、我が家には90cm×90cmの小さなメダカのビオトープ池があります。何年か前にその池にホタルらしき虫が飛んできたことがあるんです。ちょっと離れたところにホタルの保護区みたいな所があって、たぶんそこから来たのだと思います。

夜暗くなってから家族四人パジャマ姿で玄関から出て池を覗きに行きました。
自宅の池で蛍が光ってたら嬉しいじゃないですか。でも残念ながら何も光っておらず、翌朝見た時には蛍はいませんでした。

それだけの話なんですが、あの時、ホタルを虫かごに捕まえていれば、もしかしたら光る姿を見られたのかもしれません。
でもナニか違うと思ったんですよね。

ハルさんだったら虫かごに捕まえて夜になるのを待つでしょう。

ハルさんの無邪気さ。私も子供の頃、単なる好奇心で蟻の巣を掘り起こした事があります。蟻からしたらいい迷惑、それどころか全滅の危機を感じた恐ろしい出来事だっただろうと思います。

長々と書きましたが、曽祖父と大叔母さんのスタンスが理想として描がかれていて、その事を理解できないハルさんと、理解はしたけど軽率な行動を取ってしまった翔。

結局、小人は人間に見つからずに暮らしていくしかないというのが現実でした。

軽率といえば、アリエッティの行動も酷かった。家族を危険に晒す行動は見ていられない気持ちになりました。
それでも、少年少女が感じた、きっとわかり合えるという直感も間違ってはいませんでした。
引っ越しはせざるを得なかったけれど、二人の間には確かな絆ができて、それが二人の大きな成長の糧となります。

翔の最後の台詞。「君は心臓の一部だ。」
理解しにくいけど実感の籠もった台詞ですよね。
心臓の病のお陰で出会い、その意志の強さに衝撃を受け、人生で一番行動力を発揮した夏。何かを成し遂げ、彼は生きる為に手術を受ける意志を持つ男の子に生まれ変わりました。

それと対照的だったのが「君達は滅びゆく種族なんだ」発言。随分酷いこと言うなと、誰もが思いました(笑)。
その時は、手術をしたところで自分は助からないと思っていて、仲間を見つけたような気持ちになったのかなと想像してます。
そしたら全然違ってて怒られた。自分よりもずっと強い意思を持つ小人に対して敬意が生まれたのでしょう。

小人を捕まえたハルさんが電話した先が、もしもTV局だったら?と想像してみてください。連日の報道。詰めかけるマスコミ。ゾッとします。
今、学校の授業に「道徳」がないなんて話も聞いたこともあります。

もう小人は滅びるしかないのですかねぇ。

でもアリエッティは諦めていませんでした。

翔のように、私達も変わる事ができるかもしれません。

好みの分かれる作品だと思いますが、私はかなり好きです。


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