中学一年生のある日、自転車で走っている最中に同級生の有田君が横断歩道を歩いているのを見つけた。

彼は天然パーマの髪と背が高く、優しい顔立ちが特徴的だった。

ただし、身長と足の長さのバランスが悪く、比率は7対3と足が非常に短いのが残念な点だった。

その容姿は一度見たら忘れられないほど特異だった。

挨拶だけ交わした後、一週間が経って有田君の家に遊びに行くことになった。

玄関前でインターフォンを押すと、「はーい」と声が返ってきて、ガラガラと玄関の扉が開いた。

有田君が「どちらさん」と言って出迎えてくれたが、私は彼が冗談を言っていると思っていたので、「有田ふざけるな」と言ってしまった。また、「お前の家わかりにくいわ」さらに「坂がキツイねん」とも口にしてしまった。しかし、有田君は相変わらず「どちらさん」と返してくるだけで、一向に話が噛み合わなかった。

私は「早く出かける準備をしろと言う」と、有田君が「あぁーマコトの友達やね」と声を発した。

しかし、彼は中学校の体操着のジャージを着ていて、髪型や背丈、足の短さもまったく同じだった。私は驚いた。有田君が玄関の中から「マコトの友達やでぇ〜」と叫ぶと、同じ声で「うん、わかった誰」と応えが返ってきた。

すると家の中からもう一人の有田君が現れた。私は目を疑った。目の前には本当に有田君が二人いたのだ。

髪型や背丈、足の短さ、そして声までそっくりな二人の有田君。私はドッペルゲンガーを見たかのような感覚を味わった。

一人の有田君が玄関で運動靴を履きながら「それじゃーおかん行ってくんでぇ〜」と言った。最初に話しかけてきた有田君は実は彼のお母さんだったのだ。

驚きのあまり、私は会話のやりとりがタメ口だったことに気がついた。有田君の母親もまさに有田君そっくりで、二人を見間違えるほどだった。

有田君と一緒に自転車で商店街に向かい、そこで再び有田君と出くわした。目の前に立つ有田君と、前から歩いてくる有田君。どちらも髪型や足の短さがまったく同じだった。

私は幻を見ているのかと戸惑った。もう一人の有田君が声をかけてきた。「マコトどこ行くねん！」と言う声にも驚いた。この声もまったく同じだった。すれ違った後、私は有田君に尋ねた。「有田君、今のは誰？」すると有田君は「今のはお兄ちゃんやで」と答えた。私は驚きのあまり、すれ違った有田君のお兄ちゃんを目で追った。

商店街を後にし、有田君と一緒に自転車で帰ろうとした時、再び声が聞こえた。

私が振り返ると、そこにはスケールは少し小さいが髪型や足の短さがまったく同じ有田君がいた。有田君が少し小さな有田君に「家に今から帰るんか？」と声をかけた。少し小さな有田君が「うん」とうなずいた。

私は驚きつつも、有田君に尋ねた。「誰？」すると有田君は「弟やで」と答えた。私はますます驚いた。家族そっくりな有田君たちの存在に興味津々だった。

翌日、学校でこの出来事を同級生に話すと、一人の同級生が言った。「有田の親父も似てるで」私は更なる驚きを覚え、有田君のお父さんを見てみたくなった。

そして、父兄参観日に彼のお父さんが学校に来たのだ。私は彼を見て驚愕した。

言われていた通り、有田君と瓜二つだったのだ。私は思わず考えてしまった。

「もしも戦国時代なら、有田家を滅ぼすのは至難の業だろう！」なぜなら影武者だらけなのだから。

このような五人家族全員がまったく同じだった体験は一生で一度もないだろうと思いながらも、神秘的な出来事だったと感じた。

現代科学的にはクローンと表現されるかもしれないが、それでも驚きは隠せない。

いくら歳月が経っても、有田君の足の短さは変わることがなかった。この出来事は私にとって一生忘れられないものとなった。

有田家はまるで神様のいたずらの産物のように思えたのだ。