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176、「こわい」という口癖(久石譲さん 『帰らざる日々』)

悲しい話ですが、さっき読んだ小説が悲しい話だったので、悲しいことを考えてしまいます。
ぼくの母は、「こわい!こわい!」というのが、口癖でした。一体、なにがそんなにこわいのか?老いていくことでしょうか?
記憶が消えていくことでしょうか?それとも、命が尽きることでしょうか?

一緒の部屋にいて、ベッドのうえで、いつも、こわい!こわい!と言うので、ぼくは、なにがこわいのか、いつも考えていました。
少しでも、こわさをわかってあげたかったんです。
でも、ぼくが、なにかこわがらすことをしたのか?ぼくは、一体、なにをしたんだろう?と一生懸命、考えましたが、わかりませんでした。

悲しい...…という気持ちだけが、残りました。母の訪看さんに聞いても、精神科の先生に聞いても、「なにが、こわいんだろうねえ?」としか、言ってくれませんでした。

とにかく、寄り添ってあげようと思い、ぼく自身も、明日への期待を持たないことにしました。

少しだけ、母の気持ちに寄り添うことができました。それだけで、良かったんです。ぼくの人生なんて、あってないようなものだ、とそのころ、考えていました。

音楽を、ラジカセを部屋に持っていって、聴いてもらいました。母は、当然、ぼくの聴くような音楽など、興味をしめしません。ただ、Bluetooth内蔵型だったので、youtubeの久石譲さんの、ジブリのコンサートだけは、聴いてくれました。

母が夜、寝付かないときは、いつも、これを流してました。

いまでも、そのチャンネルを開くと、母との生活を思い出します。

ぼくは、久石譲さんなんて、あまり興味なかったけど、『帰らざる日々』という、曲は、なんか好きでした。

過ぎた日々なんて、思い起こしても、もう帰ってこないよ、なんて、そんなメッセージが込められているように考えてました。

「帰らざる日々」なんですね。あの頃は。
もう、いくら反省しても、帰ってこない。

いまの生活にまで、その曲は、鳴り響いている予感がします。
一日、一日を大切にしようと思います。
もう、帰らざる日々は、いまこの瞬間から、はじまっています。

お母さん。今度は、ぼくが、前を向くね。

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