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水と風は表裏一体


屋久島にきて最初に学んだ一番大切なこと。


それは
「水の循環の大切さ」

環境論はいろいろあると思いますが、究極、
これ一本に集約できる大原則じゃないかと
すら思ってます!


水が循環しているから生命が
地球で生きていけるのです。

山に降った雨が川になり、栄養分を含んで海へ。水の循環が生命の源。



循環が止まると、よどみ、汚れていく。
生命が生きづらい環境になります。

人間は要らない存在?



人間が作った都市やインフラは、
ほとんどが循環のルールを無視して
作られてしまっていて、
循環を止める働きをしてしまっています。

自分の首をしめてますよね

コンクリートで固めた自然は窒息状態で循環を止めてしまっている



では我々人間が居ない方が
地球は豊かになるのでしょうか?


私はそうは思いません。

いじけても始まらない笑


人間がこれだけ繁栄しているには
意味があるはずです。


これだけの数の人がいて、技術もあるのですから
一気に変えていく力もある!


悪い影響力が目立った近代でしたが、
これからの100年は良い影響力を発揮して


もとの地球より良くできるって考えたら
ワクワクしませんか?
しかも楽しく実現する。



そのためには自然の大原則を
おさえておく必要があるでしょう。


風の下には水の流れあり


風の通り道の下には必ず土中に水脈、
水の流れがあると言われています。


そんなことなんでわかるのか?って
思われるでしょうが、
昔はそれが「当たり前」の感覚だったそうです。



私も聞いたときは半信半疑でしたが、
それが体感できたのが屋久島の川の支流に
行った時のことです。



雨の多い夏には小さな小川だった場所が
秋に行った時に、ただの岩の道になっていました。



でも耳を澄ますとチョロチョロと
岩の下からかすかに
水の音が聞こえてきました。



ところどころに水が湧き出ているポイントが
あったりして、その下にはたしかに生きた水が
流れていることがわかりました。




そして、その道に沿って絶え間なく風が
吹いていたのです!


吹いているというよりも、
空気が大きな固まりとなって、ゆるやかに動いていた
と表現したほうが正しい感覚かもしれません。



その流れの真ん中に立つと、
まるで目に見えない水流のなかにいるように
体をなでながら空気がすり抜けていき、
なんとも気持ちいい。

もちろん、水量の多い川では
もっとわかりやすく風の流れを感じます。


水の流れる上には空気の流れがある


逆に川なのに風が流れていないところは
川もドロドロに汚れてよどんで、うまく流れてません。

川のど真ん中に蜘蛛の巣ができてたり、
水辺の木が枯れています。



人間の体も似ていますね。


血液の循環が健康な体の大前提です。


血液ドロドロでよどみが増えるとバランスを
崩して、病気になったり脳卒中になったり。
良いことはありません。

血液サラサラで軽やかに生きたいですよね!
自然も同じです。

動物たちにも仕事がある


水や風は自然現象として勝手に
流れているものだと思ってましたが、
実は動物や植物も関わり合っているのです。


動物が森の中を歩くと「けもの道」ができます。

動物たちが本能的に選んで歩いたルートが風の道を作る



彼らは本能的に歩きやすいルートを見つけ出し
歩いた場所が風の通り道になります。


けもの道は風の道となり、雑草たちが、
風にそよいで動き出します。


そよいだ体につられて根も動き、土をほぐし
はじめます。

やわからくなった土は水と空気を含むようになり、
土中に新たな循環が生まれて
ヤブ(窒息状態)が解消していくのです。

そして風の道の下にできた水脈は
新たな植物を育む始めるのです。


動物たちは、生きるために歩いているだけなのですが
結果的に森に風を通し、水を導いているのです。

気持ちよいと感じることが正解!

それはすごい!と驚いているだけでは
ダメです。

昔は人間もその一員だったのです。

人間は考え、行動できる動物。

森に入り、道をつくり、バランスよく木を切って
森と会話しながら、風と水の循環を促す役割を
していました。


人間は動物と違い、自然を観察して考えて
バランスをとることができます。

雑草でヤブ化した場所に風を通す作業

この動物たちのけもの道にならって
実際にカマを片手に作業する方法を
自然のプロの大地の再生の先生方に伝授いただき
実践するようになりました。


そしたら、これがなんとも気持ちいいのです。


風が抜ける循環、よどみが解消され
つまっていたものがすっと抜ける感覚。

この「気持ちいい」という感覚は
我々に備わった野生の感覚で、これを
信じていけば、間違いなく良い状態をつくれます。

私たちが、関係ないと思っていた
「自然のこと」にも、実は関与していけることは
たくさんあるのです。



人間でも簡単にできて、かつ
とても重要な一つの役割が、
風を通すことなのだと思ってます。

風と水の流れと共にある建築


屋久島で進めているSumuプロジェクトでは
このルールに則って、設計しました。


高床式の床下。雨が当たらないのに新芽が出てくる。土の中の水脈が生きている証拠。



風の流れを大切にして、
建物を小さな単位に分けた分棟配置とし、

土中の水脈を遮らないように建物をすべて
石場建て、高床式にしました。


普通の建築物はベタ基礎という工法が一般的で
コンクリートで全面を固めるため
貴重な水脈も微生物も全部排除して、
空気の流れさえ堰き止めてしまうため、
建物まわりは空気も水も死んだ状態です。


死んだ場所とは、森の中でいうと
枯れ木が倒れて循環を堰き止めてる
状態に似ています。


そんなよどみができると、湿気が溜まり、
循環が止まるので、早く分解して土に還し、
風を通そうとして、シロアリやカビや腐食菌たちが
繁殖しはじめます。

一般的なベタ基礎は地表の循環を止めてしまう。



彼らは自然界で与えられた役割をまっとうしている
だけで、悪者ではありません。

シロアリも自然界では益虫なのです。


彼らが頑張らなければならない状態を
作ってるのは私たち人間です。


なのに、それを薬剤で頑張って止めようとしてる。


自然の流れを学べばいかにそれが「不自然」
なのかがよくわかります。


風と水の流れと共にある建築。
菌すら味方につける(←菌築家として言いたいだけ笑)

我々はそれを目指しました。


古き良き工法をただマネしたのではなく、
循環を止めないという大原則を
考えていたらこのカタチにたどり着いたのです。

人間も自然の一部。都市も自然の一部



建物の下にも風を通し、建物の下の
水脈を残すことで自然の循環のなかに
建築を参加させたのです。


建ててから半年以上雨が当たっていない建物の
真下から、小さな植物の芽が次々と
出てきてくれたときにはとても嬉しかったです。


風と水は表裏一体で地上と地下で一緒に
流れている。

都会でも同じです。

循環を止めてるのは地表の一部。
その下の大地やその上の大気は
自然の循環のルールのもとに動いています。

都市も広い視野で見れば自然の一部。苦しんでる場所を見つけてみよう。



是非川に行ったとき、森に入ったときに
風を感じてみてください。
水を観察してみてください。

そして循環を感じてみてください。

その大原則がわかれば、人間がいかに行動すれば
良いのかが見えてくると思うのです。

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