小野司/菌築家/一級建築士

自然との関係性を深める「菌」を活用した建築設計・デザインを得意とする。現在は屋久島の「…

小野司/菌築家/一級建築士

自然との関係性を深める「菌」を活用した建築設計・デザインを得意とする。現在は屋久島の「Sumu Yakushima」を拠点に世界で活動中。株式会社tono代表取締役。 https://www.to-no.me

最近の記事

Regenerativeリジェネラティブとは何か?

Sustainableの言い換えみたいな感じで次第に認知され始めているRegenerativeリジェネラティブというワード。 今年もっと一般的に認知されてくると思うし、間違った認識で広まるおそれもあるから、ここでどんな意味があるのかを整理しておきたい。 まず、Regenerativeという単語はRe(再び)+Generate(生み出す)+tive(可能な)ということで、「再生可能な」という日本語に訳されている。 なぜ再生可能が大事なのかというと、我々人類の経済活動、生産

    • 薄明(はくめい)の空

      ごくまれに、夕焼けの空がピンク色や紫色に染まることがある。 この時間帯のことをマジックアワーと言ったりするけど、日本語では「薄明(はくめい)」という。 なんとも美しい言葉だと思いませんか? 日没直後のまだ明るい空のときを市民薄明、もう少し暗くなると航海薄明、ほぼ夜だけどまだぼんやり明るいのを天文薄明という。 それぞれ、まだ市民活動ができるくらいの明るい空、空と海の境がわかって航海できる明るさ、星がほぼ見えているくらいの明るさのことをいうので、そんな呼ばれ方をする。

      • この空のどこからが宇宙か?

        屋久島にいて満点の星空や眩しいくらいの月に照らされていると、宇宙の中に浮いてる感覚がする。 考えたことがありますか?この空のどこからが宇宙なのか。 調べてみたけど、地上から100km上空とか80km上空とか、基準はいくつもある。 宇宙開発や軍の都合で便宜的に決めたにすぎなくて、例えばそれは何もない大地に国境を引いてる感覚に近い。 空と宇宙の間に物理的な境界線があるわけではない。 ただ、地上から宇宙へとゆるやかなグラデーションがあるだけだ。 そう考えると捉え方によっ

        • 世界topの建築デザインファームの一つに選ばれました!

          株式会社tonoは世界topの建築デザイン会社の一つとして、A+Listに掲載されました! 華々しいニュースのようですが、、、正直に言うと、私は30歳のときに一度建築家をやめたんです😅 約13年間のブランクの後、また建築家(正確には菌築家ですが😂)を名乗ることになるとは思ってもみませんでした。 世界を変えたい! 世の中の風景を美しく変えたい! みんなの生活を豊かにしたい! 真の健康を実現する家を作りたい!! という想いで建築学科を選び、建築家アトリエで 血を吐くような建

        Regenerativeリジェネラティブとは何か?

          渋谷は人間のエコジャングル。

          久しぶりに渋谷を歩いて、私の自然の先生とも話してハッと気がついたこと。 屋久島の大自然から学んだ最も大切なことは、地球上の全ての生き物は水の循環のお手伝いをしていると知ったことだ。 それは人間も生物であるかぎり同じで、水を飲んで運び、排泄し、呼吸して移動して空気を動かし、循環していることを心地よいと感じるようにできている。 自然は淀み(よどみ)とか滞りを嫌う。 通したり、振動させたりして停滞を解消する方向に働く。 例えば淀んだ水溜りには、ボウフラがわいて水の中でダンス

          渋谷は人間のエコジャングル。

          自然と一体化した建築の最高峰

          Heritance Kandalama バワ(Geoffery Bawa)の設計したこのホテルはSumuをデザインするときにずっとベンチマークというか、憧れの目で見ていた建築。 当時、本当に薄ーいバワの特集本に載ってたほんの数枚の写真を穴があくくらい見た。こんな感じに建築と自然がつながり合う状態をつくりたいなーと考えてた。 今回、初めて来てみて、たくさんの気づきと共に、Sumuの答え合わせみたいな感覚もあった。 人の空間と自然との間に、両者をつなげる余白がきちんとデザイ

          自然と一体化した建築の最高峰

          雨を降らす森

          屋久島は雨の島。 それは高い湿度と、標高が高い山があるからだと思っていた。 その通りなんだけど、正確な理解ではない。 森が雨を降らせているのだ。 雨によって森が育つ、ではなくて、その逆である。 どういうことかというと、森の木々は呼吸しているが、いろんな成分も空気中に放出している。森を歩くと心地よいのは、木々が放出する癒し成分のようなものを感じるからである。 実はこの成分が空中に浮かび、そこに湿度の高い空気が触れたときにその粒子を核にして水玉が生まれる。 霧が発生する瞬

          Sumu Yakushimaが8つの最高賞含む国内外15のアワードを受賞

          サスティナブルの先を行く「リジェネラティブ建築」が世界中で注目を集める 株式会社tono(代表取締役:小野司)が手がけたSumu Yakushima(スム ヤクシマ)が、国内外で合計15のデザインアワードを受賞しました。内8つが最高賞。革新的な建築コンセプト「リジェネラティブ建築」が世界中で非常に高い評価をいただいております。「リジェネラティブ」とは再生可能という意味で、「サスティナブル(持続可能性)」を根本的に問い直す概念です。環境を保全するだけでなく、元の状態よりもさら

          Sumu Yakushimaが8つの最高賞含む国内外15のアワードを受賞

          4°Cの水

          水は4℃が特異点である。 私たちは水の惑星に住み、身体の70%以上が水でできている水そのものみたいな生き物なのに、水のことをよく知らない。 学校では水は0℃で固体(氷)になり、100℃で気体(水蒸気)になると習った。 しかし、水が4℃のときに密度やエネルギー含有量が最大になる特異点であることは、誰も教えてくれなかった。 水は液体であるときに水としての性質を示すから、生命にとっても地球環境のなかで循環するためにも、流体の状態での性質を知ることが大事である。 その流体の

          凍らない植物

          屋久島の次は雪国での仕事が始まった。 屋久島から雪国へと、とても大きな変化のように思えるが、雪も水であり、結局は水と向き合うことに変わりはないのだなーと気がついた。 白銀の風景のなかで不思議なのは、樹木や植物たちは凍らないのだろうか?ということ。 実は彼らは、凍りにくいように素晴らしい防御システムを作り上げているのだ。 まず、雪が積もると雪が断熱材の役割をして、土の中は0度を下回らない。地上が氷点下でも、土の中や根は凍らずに済んでいる。 そして、樹木や葉っぱは、秋の

          虫食いの葉っぱは土の写し鏡

          虫食いの野菜は農薬を使っていない証拠、 と小さいころ聞いたけど、実は農薬は使ってなくても虫食いの葉っぱがあるといくことは、土が弱ってる証拠。 そもそも屋久島の原生林に入っていって、虫食いで禿げてる木とか、穴だらけに食われた下草とか見たことがない。 それは森の土が元気だから。 ではなぜ畑では虫が野菜の葉っぱを食うのか? それは肥料が土の微生物の仕事を奪ってしまうから。本来働くはずの微生物たちが、肥料によって弱体化してる。 そんな土から生えた野菜は生きながらにして腐敗に

          虫食いの葉っぱは土の写し鏡

          100年で1cm。土は地球の結晶

          土を守る植物たち。 日本に生まれると土があることはあまりに当たり前に感じてしまうけど、地球の表面のほとんどの面に土はない。 まず7割は海洋が占めていて、残りの陸地のなかでも砂漠や岩だらけの大地がほとんどで、土が存在している豊かな土地って本当にごく一部だ。 その貴重は土をコンクリートで押さえて機能しない状態にしてるのが都会なわけだが、それは大した面積じゃないのでひとまず置いとこう。 自然のことがわかってくると、地球上のすべての自然現象は水を中心に動いているのが見えてきた

          100年で1cm。土は地球の結晶

          住むほどに自然が澄む「生き方」

          過去3回の記事やInstagram でも ちょこちょこと紹介していましたが、 Sumu Yakushima プロジェクトの 全体像についてご紹介したいと思っています。 最初は、DIYで家を建てよう!と めちゃくちゃ小さく始まったのに 次第に壮大なプロジェクトになってきております笑 Sumuとは何なのか? なかなか一言では伝えられず、 「ひとまず現地に来てもらえばわかるから!」 と話すと本当にみんな来てくれちゃってたのでww いままでちゃんと文字にしてかったんで

          住むほどに自然が澄む「生き方」

          水と風は表裏一体

          屋久島にきて最初に学んだ一番大切なこと。 それは 「水の循環の大切さ」 環境論はいろいろあると思いますが、究極、 これ一本に集約できる大原則じゃないかと すら思ってます! 水が循環しているから生命が 地球で生きていけるのです。 循環が止まると、よどみ、汚れていく。 生命が生きづらい環境になります。 人間は要らない存在? 人間が作った都市やインフラは、 ほとんどが循環のルールを無視して 作られてしまっていて、 循環を止める働きをしてしまっています。 自分の首をしめ

          人間は地球に棲む微生物

          光るキノコの森 屋久島では梅雨時期になると光るキノコが 見られます。 若い森には見られず、多様性が進んだ 成熟した森にだけ育つ菌類の仲間です。 そのキノコが生えている森の落ち葉にも 光る菌糸は広がって、またたくように明滅する 光の粒は、暗闇に広がる星空のようにも見えます。 いや、むしろ空から見た人間の街の 灯りにそっくりだなと思いました。 飛行機で空の上から、もしくは山の頂上から 街の夜景を見ると 都市の構造が放射状に広がり、小さく弱い 光の粒がばら撒かれたように見

          人間は地球に棲む微生物

          菌で家を建てる建築家になってみた。

          はじめまして。 建築家改め、菌築家・小野司です笑。 コロナを機に屋久島に移住 コロナで生き方が変わった方は 多いと思いますが、私もその一人。 しかも劇的に変わりました。 2020年春、 コロナの最初の緊急事態宣言のときに 屋久島にいたご縁で、東京に帰るのを やめる決断をしました。 で、どうせ長いこと居るなら家でも作ろうか笑! という軽いノリで、そのとき同居していた 友人と家を建てることになりました。 人間がこの地球に生きている意味とは? ノリは軽かったのですが、進

          菌で家を建てる建築家になってみた。